第23回日本抗加齢医学会総会|シンポジウム1 機能性食品:メンズヘルスへの挑戦 地方・地域・企業の特色を生かして

2024.01.11栄養素

シンポジウム1
機能性食品:メンズヘルスへの挑戦 地方・地域・企業の特色を生かして

司会:井手久満順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科 デジタルセラピューティックス講座
   松本成史旭川医科大学 研究推進本部

 

株式会社山田養蜂場 本社 R&D本部の伊藤隆志先生はミツバチの蜂の子摂取で男性更年期障害の症状のうち、疲労感減少など身体的症状改善、勃起機能など性機能症状の改善、うつ症状など精神的症状改善効果が認められ、これらはいずれもアンドロゲンの増減を介さないものであることを示した。

第一工業製薬株式会社齋藤志穂先生はカイコハナサナギタケ冬虫夏草に含まれるナトリードが認知機能改善や睡眠改善効果があることを説明した。さらに、カイコハナサナギタケ冬虫夏草の摂取より唾液中遊離テストステロン濃度上昇効果も認められたため、男性更年期症状を緩和する可能性があるとした。

丸善製薬株式会社 総合研究所の大戸信明先生は下部尿路閉塞モデルマウスに黄杞エキスを投与したところ膀胱機能が維持された結果を示し、ヒト試験でも小規模ながら黄杞エキス摂取でIPSSスコアが改善されたことを紹介した。

北上中央病院 泌尿器科 / (株)サザンナイトラボラトリー菅谷公男先生はシークヮーサーに含まれるノビレチン100g摂取で排尿障害が軽減されるとし、ノビレチン50gとグリシンの混合物摂取でも夜間頻尿など排尿障害軽減効果が得られたことを解説した。

 

メンズヘルスに対する酵素分解蜂の子のパワー(岡山から)

伊藤隆志 株式会社山田養蜂場 本社 R&D本部

◆ 多彩な機能を持つミツバチ産品

株式会社山田養蜂場は岡山県の北部、鏡野町で養蜂業を営み、通信販売を中心にミツバチ産品を取り扱ってきた。ミツバチ産品は古くからヨーロッパをはじめエジプトや中国など世界各地で普及し、自然療法に活用されてきた。当社は養蜂文化を背景として元に人々の心身の健康に役立つよう、「ひとりの人の健康のために」という企業理念のもと研究を進めてきた。ミツバチ産品で最も有名なものがハチミツであり、他にもローヤルゼリーやプロポリス、蜜蝋などがよく知られている。また、ミツバチが花から集めた花粉を密などで固めた花粉荷や、蜂の子などがある。
当社ではそれぞれのミツバチ産品の機能性の研究も進めており、ハチミツでは抗菌、抗ウイルス、鎮咳、整腸、抗歯周病、ローヤルゼリーでは美肌、血圧調整、冷え防止、更年期症状の軽減、プロポリスでは認知機能維持、抗炎症、抗菌、抗肥満など、蜂の子では加齢による聞こえや耳鳴りの軽減改善、滋養強壮などの効果が研究されている。

◆ 古くから食用されてきた蜂の子

「蜂の子」は蜂の幼虫やサナギで、世界各地で貴重なたんぱく源として伝統的に食べられてきた。日本でも長野県山間部を中心に食用されており、世界最古の薬学書と言われる中国の『神農本草経』にも記載されている。蜂の子はスズメバチ、クマバチなど様々な蜂の幼虫や蛹を総称したものである。当社では養蜂業を背景としているため、ミツバチの蜂の子を取り扱っている。
ミツバチは数万匹で1つのコロニーを形成するが、1匹の女王蜂だけが産卵し、集団を維持する。残りの9割はメスの働き蜂である。働き蜂は巣の清掃や温度の調整、育児、餌の収集などを行う。メス蜂はハチミツやローヤルゼリーなどのミツバチ産品の生産にも関わり、養蜂という観点から重要な役割をもつ。一方、オス蜂の機能は女王蜂との交尾のみであることから、成虫になると巣から追い出される。そこで、蛹の状態まで育てた蜂の子を養蜂家はたんぱく源として採取していた。そのような理由から、現在当社でもオス蜂を蜂の子として利用している。
ミツバチは22日目でサナギになるが、当社ではその1日前の21日付近で採集し、凍結乾燥によって粉末化する。この時期はタンパク質が多いが、アレルゲンとなるトロポミオシンも含まれているため、当社では吸収や安全性の観点から、蜂の子を酵素分解したものを原料として使用している。

◆ 蜂の子摂取で男性更年期障害症状を軽減

蜂の子の滋養強壮作用は伝統的に知られてきた。高齢社会の現在、中高年の男性のQOL低下要因として男性更年期障害が注目されている。男性更年期障害とは加齢、ストレス、男性ホルモンの低下などを原因として様々な症状が表われる状態である。
男性更年期障害の症状は精神症状、身体症状、性機能症状の3つに大別される。精神症状ではうつ、集中力や記憶力の低下、身体症状では筋肉痛、頭痛、発汗、火照りなど、性機能症状では性欲の低下や勃起障害などの症状が現れる。勃起障害の治療としてはホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害剤が主流となっているが、日常的に利用しやすい食品素材にも注目が集まっている。
そこで当社は、蜂の子の性機能症状改善機能の有無とその機序を明らかにする目的で試験を行った。まず蜂の子の性機能症状改善機能の有無について探索的な臨床研究を行った。35歳以上60歳以下で活力や性欲に悩みを持つ男性11名を対象に、蜂の子を12週間摂取してもらい、摂取開始前、4週目、12週目にテストステロン値の測定と男性更年期症状、勃起、疲労、抑うつに関する自己評価アンケートを行った。対象の選択基準は男性更年期症状質問票(AMSスコア)による評価が軽症、遊離テストステロン値が治療介入基準値以下、既婚者または異性のパートナーがいる人とした。
AMSスコアは身体的因子、精神的因子、性機能因子の3つの因子の評価で構成されている。AMSスコア全体では4週目、12週目で有意な改善を認めた。因子別に見ると身体的因子で12週目、性機能因子で4週目および12週目に有意な改善を認めた。
性機能の評価については勃起障害(ED)のスクリーニングや治療の効果判定で使われる指標の国際勃起機能スコア(SHIM)を用いた。勃起機能の指標としては一般的に用いられる、夜間の勃起を評価する早朝勃起回数を記録してもらった。SHIMは4週目および12週目で有意な改善を認めた。早朝勃起回数も12週目に有意な改善を認めた。
疲労感はビジュアルアナログスケール(VAS)、慢性疲労症候群(CFS)で評価した。うつ症状はうつ性自己評価尺度(SDS)を用いて評価した。SDSは憂うつ感や疲れやすさ、入眠障害など抑うつ性の程度を見るための検査として知られる。その結果、疲労感についてはVASで12週目、CFSで4週目に改善を認めた。うつ症状は12週目に改善を認めた。
男性更年期障害の症状はテストステロンの低下によって様々に表われると考えられる。テストステロン値は遊離テストステロン値、総テストステロン値ともに蜂の子の摂取による変動は認めなかった。しかし蜂の子の摂取によって疲労感などの身体的症状の改善、勃起機能などの性機能症状改善、抑うつ作用などの精神的症状改善が認められた。したがって、蜂の子はテストステロンへの影響を介することなく、男性更年期障害の症状を改善している可能性がある。

◆ ラットでも蜂の子の性機能改善効果を確認

蜂の子は性機能改善効果を持つ可能性が高いと考え、臨床試験では評価が難しい性機能改善の機序について検討することとし、ラットによる交尾行動試験で評価した。
オスラットは特徴的な交尾行動を示すことが知られている。まず異性への興味やモチベーションを示すマウント行動を行い、次に外性器の挿入を伴わない寄りかかり行動を行う。何度かマウントを繰り返した後に、外性器の挿入を伴うマウントであるイントロミッションを行う。この時、マウント直後に飛び跳ねるようにしてメスから離れる行動が見られるため、イントロミッションは勃起の指標となる。何度かマウントとイントロミッションを繰り返した後に、最終的に射精に至る。射精後には両足を広げる格好で後ずさりをしてゆっくりとメスから離れる。この一連の行動指標を1時間で区切って評価することで、蜂の子がどのパラメーターに作用しているかを調べた。
まず、性機能が低下している65週齢のラットと若齢ラットの行動を比較すると、65週齢のラットでは若齢ラットに比べ、イントロミッション、交尾効率において有意な低下が認められ、マウントは増加が認められた。マウント増加に対してイントロミッションと交尾効率減少の要因は、勃起、挿入が不全なためと考えられる。血中ホルモンを比較したところ、若齢ラットに比べ65週齢のラットでは、代表的なアンドロゲンであるテストステロンやジヒドロテストステロン、コルチコステロンの有意な低下を認めた。この結果から65週齢のラットでは加齢によって性機能が低下していると判断できた。
65週齢のラットに蜂の子1.8g/kg/日を自由摂食にて4週間投与した。血中テストステロン値は遊離テストステロン、総テストステロンいずれにおいても蜂の子投与による増減は認めなかった。行動指標は蜂の子の投与でイントロミッション時間が短縮していた。イントロミッションは勃起の指標であり、蜂の子が勃起機能を改善する可能性を動物実験においても確認することができた。
勃起機能は血流との関係が強いことが知られ、血管の拡張はNO産生による。そこでin vitroで血管内皮細胞に蜂の子を24時間添加し、NO産生の変化を評価したところ、コントロール群と比較して濃度依存的にNO産生の促進効果が認められた。

◆ 蜂の子の男性更年期障害改善機能メカニズムはさらなる検討が必要

臨床試験の結果から蜂の子は、男性更年期障害の疲労感減少など身体的症状改善、勃起機能など性機能症状の改善、うつ症状など精神的症状改善が認められ、これらはいずれもテストステロンの増減を介さないものであると考えられた。男性性機能症状改善のメカニズムについて検討したところ、蜂の子には勃起機能の改善効果があることを認めた。in vitroでは蜂の子添加による血管内皮細胞のNO産生促進が確認された。これらの結果から蜂の子による男性性機能症状改善の可能性が示唆された。しかしながら、蜂の子の疲労感やうつ症状の改善効果はさらなる検討が必要である。これまでの研究から蜂の子には耳鳴りや難聴の改善効果が認められているが、これらの報告ではストレス因子の改善も認められている。今後はうつ症状やストレスなどの精神的症状や身体的症状について、性機能症状も含めた細かいメカニズムの解明に向けて研究を進めていきたい。
蜂の子は性機能を改善する可能性が明らかになった。また、蜂の子の男性性機能改善効果を検討する評価系を構築できた。ただし、蜂の子の男性性機能改善効果の機序については、基礎研究を進める必要がある。また、蜂の子は天然物であり成分にばらつきがあるため、機能性関与成分は明らかになっていない。季節や地域差も含めた機能性関与成分の特定に向けて研究が必要である。これらの研究を進めることで、最終的には、プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験を実施し、蜂の子の男性性機能改善効果を明らかにしたいと考えている。

【質疑応答】

松本 ● 蜂の子の成分は産地や蜂の種類で異なるのか。

伊藤 ● 一般的に蜂の子が健康によいことは世界各国で知られており、例えばスズメバチの蜂の子はエナジードリンクにも含まれている。しかし、蜂の子に含まれるどの成分が機能性を持つのかは分かっていない。蜂の子の種類によって成分が異なるのかについても、今後の研究が必要である。

松本 ● 蜂の子がNOを亢進する機序としては血管内部に直接影響をもたらしていると考えてよいのか。

伊藤 ● 今後の研究課題ではあるが、血管内皮に関与していると考えるのがシンプルではある。ただし、蜂の子に含まれる成分のうち、1種類だけが関与しているとは考えづらい。血管内皮に直接効果を発揮している場合、そうでない場合も含めて検討していきたい。

フロア ● うつの評価は健常者を対象として行ったのか。うつ症状を持っている人も対象に含まれているのか。

伊藤 ● 男性更年期症状としてうつ症状など精神的症状も含まれるが、あくまでも健康な人、男性更年期症状として軽症の人を対象として検討した。

フロア ● 性機能改善効果の客観的な指標として、ラットの陰茎内圧測定などの測定はしているのか。

伊藤 ● 今回は蜂の子がイントロミッションに効果を発揮するか事前に分かっていなかったこともあり、今のところ評価をしていない。今後は陰茎内圧やサイクリックGMPなどセカンドメッセンジャーの評価を検討している。

フロア ● テストステロンを介さない作用としてどのようなルートが考えられるか。

伊藤 ● 今のところ分かっていない。男性更年期症状に悩む中高年男性では前立腺肥大もQOL低下の一因とされている。テストステロンを介さない機序を明らかにすることで広く中高年男性の健康に貢献できると考えている。

日本国産「カイコ冬虫夏草」摂取による唾液中の遊離テストステロン増加作用について(京都から)

齋藤志穂 第一工業製薬株式会社

◆ 界面活性剤を中心に生活分野や社会インフラ分野に製品を供給

第一工業製薬株式会社は京都に本社がある114年の歴史を持つ老舗の化学品のメーカーである。創業当時の主力製品は繭から絹を生産する際に使われる界面活性剤であった。界面活性剤を始めとする各種工業用薬剤や、健康食品などのライフサイエンス関連製品の製造・販売が主な事業内容である。
今も当社の事業は界面活性剤がコアで、洗浄剤や乳化剤の製造を行っている。さらにアメニティ材料として食品添加物、飼料添加物、化粧品の原料など、ウレタン材料としてトンネル掘削時の崩壊を防ぐ岩盤固結剤、機能材料として光硬化樹脂や難燃剤、電子デバイス材料として太陽電池用の導電性ペーストやリチウムイオン電池用材料などを製造しており、生活分野や社会インフラ分野で多くの製品が使われている。ライフサイエンス分野では食品の機能性をはじめとした研究開発や製造、販売を行っている。

◆ 数多くの種類があり、機能も多彩な冬虫夏草

当社は冬虫夏草の一種であるカイコハナサナギタケの機能性についても研究を行っている。冬虫夏草は昆虫を栄養分として生えるキノコの総称である。冬の間は虫で、夏になるとキノコになると信じられていたことからこの名前が付いたという。冬虫夏草は古くから中国で不老長寿や滋養強壮を目的に珍重され、楊貴妃が美貌を保つために食べていたとの逸話も残っている。現在でも中国では医薬品として冬虫夏草が用いられており、コウモリガという蛾の幼虫に麦角菌が生えたキノコは、チベットの山奥でしか採れない希少なもので、1kgあたり数百万円で取引されていると聞く。日本では江戸時代に中国から渡ってきたと言われている。
冬虫夏草は虫の種類や菌の種類の組み合わせにより日本でも400種類以上あり、性状も千差万別である。当社では「カイコハナサナギタケ冬虫夏草」(以下 カイコ冬虫夏草と略)を製造している。シルクを採った後のカイコのサナギにハナサナギタケ菌を植えて培養する。培養はHACCP認証の自社工場で行い、原料や製品として販売している。
当社グループに属する岩手大学発のベンチャー企業、バイオコクーン研究所はカイコ冬虫夏草の研究を20年以上続けている。同研究所ではカイコ冬虫夏草に脳内のグリア細胞や神経細胞に働きかけて認知機能を改善する効果が期待される環状ペプチドを発見し、ナトリードと命名した。ナトリードはミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞や神経細胞に作用することが細胞実験で確認され、動物実験でも空間記憶力の改善が確認されている。当社ではカイコ冬虫夏草を用いた臨床試験を実施し、ヒトでの認知機能の維持を確認、カイコ冬虫夏草を使用した製品『快脳冬虫夏草』で機能性表示食品の届出を行った。

◆ カイコ冬虫夏草のPDE5の阻害活性を確認

カイコ冬虫夏草は健康食品として2001年から販売されており、20年以上の販売実績がある。購入者からは「活力や元気が出てくる」、「身体が温まる」、「男性機能が高まる」などの声が多い。また、「体調が良い」、「睡眠が良い」、「目覚めが良い」など睡眠に関する感想も多い。これを受け、カイコ冬虫夏草には認知機能以外にも機能性があるのではないかと研究を始めた。
カイコ冬虫夏草の男性性機能改善作用についてはホスホジエステラーゼ(PDE)5の阻害活性を酵素活性で評価した。PDE5は肺の平滑筋や前立腺、膀胱の括約筋などに存在するホスホジエステラーゼ酵素の1つである。PDE5を阻害することで、サイクリックGMPの分解を抑え、結果として血流が増大する。PDE5阻害薬は肺高血圧症治療薬、前立腺肥大に伴う排尿障害の症状の緩和薬、勃起障害(ED)治療薬として用いられている。この試験ではカイコ冬虫夏草の抽出物に濃度依存的にPDE5阻害活性があることが確認された。

◆ カイコ冬虫夏草摂取で唾液中遊離テストステロン濃度が上昇

この結果を受け、30〜70代の当社社員の有志男女20名を対象に、ヒトによるカイコ冬虫夏草摂取時の男性ホルモンであるテストステロンの変化を検証した。男性ホルモンは女性でも重要なホルモンであり、女性も含めて観察研究を行った。カイコ冬虫夏草を含むサプリメントを1か月摂取してもらい、摂取開始前、2週間後、4週間後に唾液を摂取し、遊離テストステロンの濃度を測定した。また同時に男性更年期障害質問票(AMSスコア)を用いた評価も行った。(対象に女性も含むため、男性特有の質問項目は除いた。)
男性ではカイコ冬虫夏草の摂取により2週後および4週後で唾液中遊離テストステロンの濃度が有意に増加した。女性でも男性よりも濃度が低いものの、遊離テストステロンの濃度が2週後および4週後で有意に上昇した。
AMSスコアについては総得点および2項目の質問で改善傾向が見られた。改善傾向が見られた質問項目は「怒りっぽくイライラする、小さなことですぐにカッとなる、不機嫌になる」「神経過敏である、緊張感がある、常にそわそわして落ち着かない」である。AMSスコアの総得点は男性の50代では大きな変化はなかったが、30代、40代、70代や女性の各年代の総得点は改善傾向が見られた。
つまり、カイコ冬虫夏草の摂取によって、性別、年齢に問わず、唾液中遊離テストステロン濃度が有意に増加することが分かった。また、唾液中遊離テストステロン濃度増加によると思われるAMSスコアの改善傾向も確認された。これによりカイコ冬虫夏草摂取による性ホルモンへの影響が示唆される。

◆ カイコ冬虫夏草摂取で男性更年期症状緩和

次にプラセボ対照のランダム化二重盲検並行群間試験を行った。この臨床試験の対象者はAMSスコアが27〜49点の軽度から中等度の男性更年期障害の可能性のある男性とした。現在、この臨床試験の結果を解析中であり、近い将来、公表を予定している。
近年、男性更年期障害の認知が広がっている。男性更年期障害ではテストステロン低下により、男性性機能低下だけではなく、うつ症状、睡眠障害、排尿障害などの症状が起こると言われている。また認知症や心血管疾患などの重篤な病気が引き起こされることも報告されている。現在のストレス社会においては、テストステロンを高めることは重要と考えられる。カイコ冬虫夏草は男性更年期症状の緩和に役に立つと考えられる。

◆ カイコ冬虫夏草は認知機能や睡眠の質も改善

カイコ冬虫夏草は男性更年期症状緩和以外の機能もある。認知機能改善についてはプラセボ対象二重盲検ランダム化試験を実施しており、視覚的記憶力と認知機能速度で有意に改善した。この結果からカイコ冬虫夏草成分を含む『快脳冬虫夏草』は、中高年の認知機能速度や記憶力の維持に役立つとして、機能性表示食品の届出を行った。冬虫夏草のサプリメントは数多く存在しているが、『快脳冬虫夏草』は冬虫夏草由来の関与成分を含む初の機能性表示食品である。同製品は2023年8月に発売開始した。
カイコ冬虫夏草については睡眠の質の改善についても効果を認める多くの声がある。そこでプラセボ対照のクロスオーバー比較試験を実施し、OSA質問票を用いて評価したところ、カイコ冬虫夏草摂取により、起床時眠気に改善傾向が見られた。また入眠のし易さと睡眠の維持について、プラセボに対して有意差が確認されている。この臨床試験の結果は、アンチ・エイジング医学10月号に掲載された。近年、認知症と睡眠の関連が数多く報告されており、50代、60代の短い睡眠時間が認知症のリスクを30%上げるとの報告もある。カイコ冬虫夏草は認知機能の改善と睡眠の質の改善の両方からアプローチできると考えられる。

◆ カイコハナサナギタケ冬虫夏草は高齢化社会の健康課題解決に有用

カイコ冬虫夏草は、男性更年期症状の緩和、認知機能や睡眠の質の改善といった現代のストレス社会、高齢化社会の重要な健康課題にアプローチする機能性を持つ食品と考えている。今後も明確なエビデンスをもとにQOLの向上や健康寿命延伸への貢献を目指していきたい。

【質疑応答】

松本 ● 認知機能改善効果があるナトリードが男性性機能改善にも関与しているのか。

齋藤 ● 認知機能の改善効果については、ナトリードが関与成分であることが確認されている。テストステロン増加やPDE5阻害活性の関与成分については現在、探索中である。

松本 ● ナトリードの認知機能改善という機能から男性更年期に注目したのはどのようなきっかけがあったのか。

齋藤 ● 認知機能の改善は本人の実感が得られにくい。当社の製品を使用している認知症患者を介護されている方からは「表情が変わった」「会話ができるようになった」などの声はあるが、本人の実感はほぼ得られない。それに対して、睡眠や男性性機能については多くのユーザーの声が直接聞かれる。そこで、これらの改善効果について研究を深めたいと考えた。また、冬虫夏草に多くの種類がある中で、ナトリードはカイコ冬虫夏草に特有の成分である。男性性機能や睡眠に関してもこの成分の関与があるのではないかと考え、研究を進めてきた。

松本 ● 社員有志の試験では30代の若年者も対象とされていた。カイコ冬虫夏草は若年者に対しても効果はあるのか。

齋藤 ● AMSスコアをベースにした質問票で男性更年期症状に似た症状を持つ人を対象に選定したところ、30代も加わったという経緯がある。睡眠改善に関しては年齢に関わらず効果を感じている人がいた。男性性機能改善に関しては比較的高齢で効果を感じていた。

フロア ● 認知機能改善効果については脳波の検討はしているのか。

齋藤 ● 認知機能改善効果に関しては、脳波の検討は行っていない。睡眠改善効果では一部で脳波のデータがある。

松本 ● カイコ冬虫夏草摂取で女性のテストステロンが上昇する機序は、卵巣に働きかけて、テストステロンを増やしているという理解でよいのか。その場合は、女性更年期もターゲットになると思われるが、エストロゲンも増える可能性はあるのか。

齋藤 ● 当社社員有志対象の試験では、女性でもテストステロンの上昇を確認できた。今後はメカニズムを解明したい。エストロゲンの上昇はまだ確認していないが、可能性はあると考えている。

 

メンズヘルスに対する黄杞のパワー(尾道から)

大戸信明 丸善製薬株式会社 総合研究所

広島県尾道市にある丸善製薬株式会社の本社は、尾道水道を挟んで尾道市市街地の向かい側、向島に位置する。85年前の創業当時は漢方でもよく用いられる甘草から食品の調味料用にエキスを抽出し製造していた。これにより培った技術を生かし、現在では約1,600品目以上の植物をはじめとした天然物由来のエキスを医薬品、医薬部外品、化粧品、食品の原料として世界中のメーカーに提供している。
原料に関してはSDGsやトレーサビリティへの配慮はもちろん、一部を自社農場で栽培するなど、確かなエビデンスを持ったエキス、素材の提供に努めている。機能性表示食品に対応した素材も展開している他、お茶や清涼飲料水など一部末端商品も取り扱っている。このように天然物由来の原料供給を通じて、世の中に貢献していきたいと考えている。

◆ 多くの生理活性が確認されている黄杞エキス

黄杞エキスは黄杞の葉から抽出される植物エキスである。黄杞の葉は甘味を有することから、古くからお茶として飲用されていた。通常植物に含まれるフラボノイドは苦みや渋みがあるが、黄杞の葉に含有されるフラボノイドはジヒドロフラボノール配糖体が高濃度で含まれており、そのような植物は珍しい。黄杞エキスは非常に強い抗酸化作用、抗炎症、抗アレルギー、抗肥満の効能を有し、近年は腸管のバリア機能向上、長期記憶の促進など生理活性が報告されている。
黄杞エキスには膀胱機能の改善作用もある。膀胱機能障害のうち下部尿路症状には尿を出したくても出ない排尿障害のほか、頻尿や過活動膀胱のように尿を我慢したくても出てしまう蓄尿障害がある。下路尿路障害は男女問わず、年齢と共に増加する。とくに男性の場合は前立腺肥大による下部尿路障害がQOLを大きく低下させる。前立腺肥大症の半分以上が過活動膀胱を併発しているとも言われ、2019年の国民生活基礎調査では排尿障害、蓄尿障害に繋がる自覚症状が40代、50代から急激に増えていることも明らかになった。高齢化社会を迎えた中で、フレイルの高齢者、認知機能低下の高齢者の下部尿路症状も大きな社会問題となっている。
前立腺肥大に起因する膀胱機能不全は膀胱肥大がもたらす尿道狭窄による組織へのダメージが主である。筋肉、膀胱への虚血再灌流に伴うフリーラジカル(活性酸素)発生はミトコンドリアなど細胞膜にダメージを与え、膀胱の排尿筋の収縮低下をもたらす。最終的には膀胱の機能低下に繋がると考えられている。

◆ 下部尿路閉塞モデルウサギで黄杞エキス投与により膀胱機能低下を抑制

そこで、当社では膀胱機能の低下に対する黄杞エキスの有効性評価を3つのモデルで検討した。黄杞は非常に強い抗酸化作用を有し、尿道狭窄や虚血再灌流による障害で誘導される活性酸素のダメージを最小限にし、機能低下を抑制する可能性がある。排尿筋の収縮は、筋小胞体からのカルシウムの放出で調整されている。電気刺激や各種薬剤に対する反応性、カルシウムポンプの活性やミトコンドリアの機能を評価して、黄杞のエキスの有効性を検討した。
まず下部尿路閉塞モデルウサギを作出し、検討した。このウサギに蒸留水または黄杞エキスを4週間投与した後に、尿道狭窄処置を行い、さらに4週間、蒸留水または黄杞エキスを投与し、膀胱機能の測定と排尿筋の収縮力評価を行った。
蒸留水群の膀胱重量は尿道狭窄処置により増加していた。黄杞エキス群でも膀胱重量は同様に増加していた。蒸留水群の膀胱内圧は尿道狭窄処置により高くなるが、黄杞エキス群では膀胱内圧の上昇が抑制されていた。排尿時圧力は尿道狭窄による有意差は認めなかった。しかし、黄杞エキス群では有意に排尿時圧力が高くなっていた。排尿反射後の膀胱の体積を比較したところ、黄杞エキス群で体積の増加が有意に抑制された。
それぞれのウサギから摘出した膀胱組織の電気刺激への反応、各種薬剤への反応についても評価した。蒸留水群では電気刺激への反応が尿道狭窄によって低下していたが、黄杞エキス群では低下が抑制されていた。薬剤への反応も黄杞エキス群では高いレベルを維持していた。
組織の評価では黄杞エキス群で筋小胞体のカルシウムポンプに対する活性が維持されていた。ミトコンドリアの障害の指標であるクエン酸シンターゼの活性についても、黄杞エキス群では特に粘膜の部位において維持されていた。これらの結果から黄杞エキスを摂取することで、下部尿路閉塞による膀胱機能低下を抑制することが示唆された。

◆ 虚血再灌流モデルによる膀胱収縮力低下も黄杞エキス投与により抑制

前立腺肥大などによって組織への圧迫が続くと膀胱動脈虚血再灌流が引き起こされ、組織がダメージを受ける。そこで3週間、蒸留水もしくは黄杞エキスを事前投与した後に膀胱動脈をクリップし1時間あるいは3時間の虚血を行い、その後、再灌流させて膀胱の収縮を測定した。
蒸留水群では収縮力が大きく低下したが、黄杞エキス群では収縮力の低下が抑制され、高い収縮力を維持していた。再灌流1週後についても黄杞エキス群では蒸留水群に比べ電気刺激に対する反応が維持されていた。薬剤への反応についても3時間虚血、再灌流1週後で黄杞エキス群は蒸留水群に比べ有意に収縮力の低下を抑え、高い収縮力を維持していた。

in vitro虚血再灌流モデルによる膀胱機能低下も黄杞エキス投与により抑制

最後にウサギに蒸留水もしくは黄杞エキスを3週間投与した後に摘出した膀胱組織を収縮力測定装置に入れ、窒素通気して虚血状態にした後、酸素通気に戻す操作を行った。虚血状態時にはグルコースなし、酸素通気時にはグルコースありの条件とした。虚血状態時の場合、黄杞エキス群では電気刺激による反復刺激で収縮力の低下は見られなかったが、蒸留水群では反復刺激によって収縮力が大きく低下した。薬剤反応性についても同様に、黄杞エキス群では薬剤による反復刺激で収縮力の低下はみられなかったが、蒸留水群では反復刺激によって収縮力が低下した。
組織の脂質過酸化度をマロンジアルデヒド(MDA)を指標に評価したところ、蒸留水群では虚血状態によりMDAが増えていたが、黄杞エキス群ではMDA増加が有意に抑制されていた。黄杞エキスが虚血状態やその時に起こる活性酸素によるダメージを軽減すると考えられる。これらの結果から黄杞エキスは下部尿路閉塞、虚血再灌流によって引き起こされる膀胱、排尿筋の障害を保護して、膀胱の機能低下を抑制することが示唆された。

◆ ヒト試験でも黄杞エキス摂取でIPSSスコアが改善

そこで、排尿トラブルがある男女10名を対象に黄杞エキスを摂取してもらう小規模な予備試験を行った。黄杞エキス100mg配合のタブレットを1日3回各4錠ずつ摂取してもらい、2週後および3週後に問診による国際前立腺症状スコア(IPSS)の評価、尿流計測定、膀胱内残尿量測定、エコーでの測定を行った。問診では7項目中残尿感、我慢の辛さ、尿の勢い、いきみの4項目について黄杞エキス摂取後は摂取前に比べ有意な差を認めた。合計スコアも10.2から4.9に低下した。ただし、オープン試験であるためプラセボ効果の可能性もある。また、尿流計、膀胱内残尿量、エコーでの測定では有意差を認めなかったが、膀胱内の残尿量が経時的に減る傾向があった。これはIPSSスコアの残尿感の項目との関連が考えられる。
少人数での検討であるが、排尿トラブルに対して黄杞エキスは症状改善の可能性が確認された。今後、被験者の数や対象を吟味して、さらなる検討が必要である。

◆ 黄杞エキスは排尿トラブル軽減に有用

黄杞エキスは前立腺肥大によって引き起こされる下部尿路閉塞、その後に起こる虚血再灌流によって引き起こされる膀胱の排尿筋の細胞への障害を保護して、膀胱の機能低下を抑制する。黄杞エキスは排尿トラブルに対して有効な機能性食品素材であることが確認された。

【質疑応答】

井手 ● 黄杞エキスによる排尿トラブル改善の機序としては、酸化ストレスをブロックして収縮力を保つためという理解でよいのか。

大戸 ● 今回は強い抗酸化力に着目して検討したところ、排尿状態改善効果が確認できた。

井手 ● 黄杞エキスには抗コリン作用は少ないのか。

大戸 ● 抗コリン作用やメカニズムについては検討していない。抗酸化作用に注目して試験を行い、効果が確認された段階である。

松本 ● 黄杞エキスの抗酸化作用は緑茶など他のお茶とどの程度の差があるのか。

大戸 ● 他のお茶と比較はしていないため何とも言えない。黄杞エキスにはジヒドロフラボノール配糖体という緑茶など他のお茶にはない成分が含まれている。さらに黄杞エキスはカフェインを含んでいない。したがって、カフェインが含まれていることによる利尿作用の心配が少ない。その点に注目して開発を進めた。

井手 ● お茶というよりも漢方のようなイメージになるのか。

大戸 ● メカニズムとしては抗酸化作用が大きなウェイトを占めるが、日常的に飲用できるものである。副反応は確認されておらず、気にせず飲用できる。タブレットなどで摂取できる点もメリットと考えている。

松本 ● お茶の場合、1日にどれくらい飲用すれば排尿トラブル改善効果を得られるのか。今回はあくまで濃縮されたエキスであり、抽出したお茶ではそこまでの効果は得られないのか。

大戸 ● 1日コップ5杯程度を持続的に飲用すれば効果が出ると考えている。しかし、お茶で大量に飲用すると、逆に排尿回数が増えることも考えられる。その点で抽出したエキスをタブレットなどで摂取してもらう方がよいと考える。

 

 

ノビレチン高純度粉末とグリシンの混合物ノビレチンアミノプラス®/シーサーレモン®は蓄尿障害に有用

菅谷公男 北上中央病院 泌尿器科 / (株)サザンナイトラボラトリー

◆ シークヮーサーに含まれるノビレチン、タンゲレチンは多様な健康効果をもたらす

株式会社サザンナイトラボラトリーは検査会社で、排尿と勃起関係を中心に動物実験やサプリメントのヒト試験を行っている。柑橘系植物はポリメトキシフラボノイドを含む。シークヮーサーは和名を平実檸檬と言い、未完熟の青い果皮の中にポリメトキシフラボノイドを大量に含んでいる。沖縄の言葉でシーは酸っぱい、クヮーサーは食べる、食べさせるという意味で、シークヮーサーは酸っぱい食べ物となる。シークヮーサーは他の柑橘系に比べ、多くのポリメトキシフラボノイドを含んでいる。
ポリメトキシフラボノイドのうち、ノビレチン、タンゲレチンは発がん抑制、脂質代謝改善、抗動脈硬化、血圧上昇抑制、血糖値上昇抑制、抗炎症作用、認知症予防、美白など健康、美容への効果が多く報告されている。シークヮーサー生産農家は他地域に比べて排尿トラブルが少ないことから、ノビレチンを抽出している会社からシークヮーサーの排尿トラブルに対する機能を検証する依頼を受けた。

◆ 頻尿モデルラットへのノビレチン投与で排尿反射間隔が延長

ノビレチンの動物実験として、頻尿モデルラットを使った実験を行った。ヒトの骨盤うっ血症候群という疾患は、漢方では瘀血と呼ばれており、頻尿、尿意切迫感、下腹部不快感、腹痛などの症状がある。これをラットで再現したところ、動物実験でも同様の症状がみられた。
うっ血していないシャム群(偽手術群)のラットの膀胱へ連続的に生理食塩水を注入すると、一定間隔で排尿反射が出る。このラットに対してノビレチンを投与したところ、排尿反射間隔が延長した。頻尿モデルラットにノビレチンを投与したところ、同様に排尿反射間隔が延長した。膀胱収縮間隔はシャム群でも骨盤うっ血群でもノビレチン用量依存性に延長する。排尿時の最大膀胱収縮圧は逆に低下した。これは頻尿治療薬の抗コリン薬と同様の効果である。
通常、頻尿治療薬として用いられる抗コリン薬は、M2受容体とM3受容体の遮断作用がある。しかし、ノビレチンはM2受容体およびM3受容体の遮断作用はなく、M1受容体の遮断作用があり、これによって神経細胞からのアセチルコリンの分泌を抑制する。結果的に抗コリン作用を表すと考えられている。さらにサイクリックAMPを増やして筋弛緩を誘導することも頻尿症状改善の機序と言われている。頻尿モデルラットにおいてノビレチンは膀胱収縮間隔を延長し、最大膀胱収縮圧を低下させることが確認できた。
骨盤うっ血状態になると下腹部痛や下腹部不快感が出現する。このため動物である頻尿モデルラットでも自発運動量が低下する。頻尿モデルラットにノビレチンを投与したところ、自発運動量が回復した。ノビレチンには抗コリン薬と同等の効果が期待されると考えられる。

◆ ヒト試験でノビレチン100mg投与による排尿障害軽減を確認

そこでヒト試験を行った。対象は蓄尿障害、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁など排尿トラブルが2か月以上あるが治療を受けていない成人40例、平均年齢48歳である。プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験とし、ノビレチン60mgおよびタンゲレチン30mg含有100mgカプセルを投与する試験品もしくはプラセボを投与した。この試験に先立ち50mgカプセルで試験を実施したが、有意な効果を認めなかったため、本試験では用量を100mgに設定した。
排尿関係の問診ではプラセボ群では有意な変化を認めず、プラセボ効果は全くなかった。試験品群ではプラセボ群に比べ夜間排尿回数、問診票の合計点数、QOL、被験者印象改善度で有意な改善が見られた。採血による生化学検査では両群ともに異常はなく有害事象もなかった。したがって、ノビレチン100mg投与は安全であり、排尿トラブルを軽減するサプリメントとして有用と考えられた。

◆ ノビレチンと他の成分の混合では排尿トラブル軽減効果を認めず

しかし、ノビレチン100mgを含むカプセルは高額となる問題があり、他の成分と混合するなど工夫を行ったが、効果には結びつかなかった。
そのうち沖縄産シークヮーサーから抽出したノビレチンが排尿障害に有効とテレビ番組で放送された。地元企業ではノビレチン製品の販売を開始し、病院などに宣伝ポスターを貼った。地元新聞社ではノビレチンは排尿障害に効果があるとする講演会を開催した。健康雑誌でもノビレチンが何度も取り上げられた。
この頃、当社でもノビレチンと他の健康食品を混合したサプリメントのヒト試験を行っていた。しかし、すでに沖縄県民にはシークヮーサーの蓄尿障害への効果が知れ渡り、プラセボ効果が非常に高くなったため、プラセボ群、試験品群ともに有意に改善を認め、両群間で有意差が認められない結果に終わった。

◆ グリシン投与は排尿トラブル、睡眠の質や膀胱痛を改善

当社では以前からアミノ酸系ニューロンと排尿反射の関係を調べていた。興奮性グルタミン酸ニューロンと抑制性グリシンGABAニューロンがそれぞれ興奮、抑制の関係にあり、排尿反射の求心路、遠心路に関与している。とくに求心路に対するグリシンの効果は強い。頻尿モデルラットに対してグリシン3%を投与したところ排尿間隔が延長することが分かった。さらにグリシン1%投与でも延長した。
グリシンはコラーゲンやエラスチンの主構成物質で、脊髄や脳幹の抑制性神経伝達物質の主体である。グリシンの甘みはブトウ糖と区別がつかないため、使用制限のない甘味料として広く使われている。
ヒト試験で排尿トラブルに対するグリシンの効果を検討した。未治療の過活動膀胱、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎、夜間頻尿のいずれかを有する排尿障害患者または治療を8週間以上行っても排尿障害が残存する患者54例を対象とし、クロスオーバー二重盲検ランダム化比較試験を行った。グリシン先行群は1日2回1回3gグリシンを8週間投与し、その後プラセボのブドウ糖を1日2回1回3g 8週間投与した。ブドウ糖先行群はプラセボを8週間投与し、その後、グリシンを8週間投与した。
問診票で検討したところ、尿意切迫感はプラセボ先行群では有意な変化はないものの、グリシン投与に変更後改善がみられた。グリシン先行群ではグリシン投与により改善が見られ、プラセボ投与に変更後も効果が持続した。この結果から、グリシンの効果は持続することが分かった。夜間排尿回数などでも同様の傾向がみられた。夜間排尿回数、尿意切迫感、切迫性尿失禁、過活動膀胱、QOL、国際前立腺症状スコア(IPSS)についてはグリシン投与によりプラセボに比べ有意に改善していた。有害事象として1例に試験品摂取後に軽微な不快感があり2日で中止した例があった。以上の結果から、グリシン1日2回3gの投与は排尿トラブル、睡眠の質や膀胱痛の改善に有効と考えられる。

◆ ノビレチンとグリシンの混合物は排尿トラブルを軽減

この結果を受け、ノビレチン高純度粉末50mgとグリシン3gを混合した試験品の検討を行った。対象を40歳以上の蓄尿に関する悩みが2か月以上継続している未治療の健常者とし、二重盲検ランダム化比較試験を行った。試験品群もしくはプラセボのブドウ糖3gを1日1回、朝に8週間投与した。
試験品群の夜間排尿回数はプラセボ群に比べて1回減り、有意に改善した。過活動膀胱の患者に対する過活動膀胱治療剤の抗コリン薬、前立腺肥大症に対するα1遮断薬では夜間排尿が平均0.5回減少している。これらの薬剤は夜間頻尿を主訴とする患者に対しては、夜間排尿を平均1回減少する。試験品群ではこれら薬剤と同等の効果を示した。また被験者印象改善度は、4週後および8週後で試験品群がプラセボ群に比べ有意な改善を示した。

◆ ノビレチンによる男性性機能改善は確認できず

また、ノビレチンを摂取している人では男性性機能の回復が見られるとの声があったため、ラットにノビレチンまたはホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬を2日間投与し、陰茎背神経を電気刺激して、陰茎内圧の上昇を検討した。
PDE5阻害薬では有意に陰茎内圧の上昇が得られるが、ノビレチンには陰茎内圧の上昇は見られなかった。しかし、2週間など長期に投与で上がる可能性は考えられた。

◆ ノビレチン高純度粉末とグリシンの混合物は排尿トラブルに対して有効

ノビレチン高純度粉末とグリシンの混合物は排尿トラブルに対する有効性と安全性が確認できた。ノビレチン高純度粉末とグリシンの混合物は『ノビレチンアミノプラス® / シーサーレモン®』として発売されている。

【質疑応答】

井手 ● ノビレチンは夜間頻尿に効果があるというお話だった。ノビレチンは睡眠にも効果があるというお話もあった。睡眠が深くなって夜間頻尿が減ったという機序も考えられるのか。

菅谷 ● ノビレチンだけでも夜間頻尿が改善しており、グリシンでも改善している。どちらも睡眠にもよい効果を与えている可能性がある。しかし、機序までは分からない。

フロア ● 抗コリン薬は基本的に重症の人が飲む。ノビレチンのような機能性表示食品はまだ薬剤が必要ない軽症の人が対象となると思われる。ノビレチンは重症度の違いで作用には差があるのか。

菅谷 ● 重症、軽症で分けて検討したが、どちらも同程度の改善度だった。

フロア ● ノビレチンは抗コリン薬と同等の効果があると考えてよいのか。

菅谷 ● その通りだ。

フロア ● 薬剤と機能性表示食品の併用はどのように考えればよいのか。

菅谷 ● 作用機序が若干違うため、併用してもよいと考える。

フロア ● ランダム化比較試験でプラセボとしてブドウ糖を使っていた。3gと少量ではあるが、血糖値が上がることによって浸透圧利尿がかかっている可能性はないのか。

菅谷 ● 以前行った別の試験の採血データでは、ほとんど影響はなかった。

フロア ● プラセボとして問題ないと考えてよいのか。

菅谷 ● その通りだ。

 

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