第25回腸内細菌学会学術集会「感染症と腸内フローラ・腸管免疫」Part2

2021.10.18腸内細菌

ワクチン効果を制御する腸内環境の理解と応用

國澤 純(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所

◆ 腸内細菌は免疫のバランスと整える
腸管IgA抗体は抗生物質で処理したマウスや無菌マウスで低くなると報告されており、古くから腸内環境は免疫制御に関与すると考えられている。 腸内細菌は免疫機能向上、維持に重要な役割を果たす。 同時に免疫機能を過度な亢進を抑制する働きもあり、免疫バランスを調整している。
免疫制御に関わる因子として菌体成分や栄養素、食事成分を由来に代謝されるポストバイオティクスがある。 これらは、腸管局所の免疫応答だけでなく体内のほかの部位の免疫機能にも影響を与えており、ワクチンをはじめとする感染生体防御でも重要である。
例えば、乳製品に含まれる乳酸菌のb240、サケイ株はパイエル板を介して、IgA産生を増強していることが分かった。 サケイ株については乳酸菌そのものだけでなく、乳酸菌が放出する膜小胞でもIgA産生を促進することが確認された。 このように、腸内細菌や乳酸菌は宿主の免疫機能を高めることが分かってきている。

◆ パイエル板内に共生するAlcaligenes はワクチンのアジュバントとしての開発が進む
腸内細菌の中でもAlcaligenesはパイエル板内に共生する菌として知られ、組織内共生という概念が提唱されている。 Alcaligenesはパイエル板内の樹状細胞に取りこまれ、樹状細胞内でも生存する。 細胞内での共生メカニズムとしてAlcaligenesは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を抑制し、一酸化窒素産生を減弱するため、排除されずに樹状細胞内で生存できることが分かった。
この機能は菌体成分のひとつリポポリサッカライド(LPS)の活性中心であるリピドAがもたらしている。 AlcaligenesのリピドAは大腸菌のリピドAに比べ、アシル基の長さや官能基が異なり、アゴニスト活性が弱い。
この特徴はワクチンアジュバントとして有用である。 マウスに肺炎球菌の抗原である肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)による経鼻抗原提示において、AlcaligenesのリピドAをアジュバントに用いたところ、鼻腔内のPspA特異的なIgA抗体が有意に増加した。 さらに、このマウスに肺炎球菌を呼吸器感染させたところ、感染から防御された。
現在、ワクチンメーカーとともにAlcaligenesを用いたアジュバントの開発を進めている。 また、試薬メーカーからはAlcaligenes が試薬として発売される予定になっている。

ビタミンB1欠乏は胸腺を退縮させ、T細胞や抗体産生を阻害する
腸内細菌の維持には必須栄養素も重要である。 ビタミンB1はエネルギー代謝に必要な必須栄養素といわれている。 ビタミンB1は解糖系とクエン酸回路において2種の脱水素酵素の補酵素として働く。 クエン酸回路の代謝物の一つであるクエン酸を腸管でイメージングしたところ、ビタミンB1欠乏マウスではクエン酸産生が減少しており、ビタミンB1欠乏は腸管でのエネルギー代謝不全をもたらすことが確認できた。 ビタミンB1欠乏における免疫機能を解析した結果、パイエル板、脾臓やリンパ節が大幅に縮小していた。 これらの組織はワクチンに対する免疫誘導を担っており、ビタミンB1欠乏状態ではワクチンに対する抗体産生が減弱していた。
免疫機能ではT細胞も重要である。 T細胞は胸腺で作られるが、胸腺は思春期をピークに急速に委縮し、70歳までにほぼ退縮が完了する。 また、胸腺はストレスによっても退縮する。 ビタミンB1も胸腺の退縮に関連しており、ビタミンB1欠乏状態のマウスでは胸腺が小さくなっていた。 ビタミンB1欠乏状態ではT細胞形成の最初の過程であるダブルネガティブからダブルポジティブに移行する段階から抑制されていることも分かった。
ビタミンB1欠乏状態ではT細胞、抗体産生ともに阻害される。 効果が高いワクチンを接種してもビタミンB1欠乏状態では抗体が産生されない。 ワクチンの十分な効果を得るためにはビタミンB1欠乏状態を回避する必要がある。

◆ ビタミンB1の利用効率を高めるアリチアミンやビタミンB1分解酵素の摂取も重要
ワクチンの効果を高めるためには、ビタミンB1摂取の推奨が考えられる。 しかし、ビタミンB1は水溶性のビタミンであり、ある程度の摂取で飽和し、それ以上は吸収されない。 ビタミンB1の利用効率は食べ合わせや宿主の腸内細菌の構成によっても変わり、免疫機能に影響を及ぼす。
ニンニク、たまねぎ、ニラなどに含まれるアリシンはビタミンB1と結合しアリチアミンとなる。 アリチアミンは腸管での吸収がよく、血中滞留性も高いため、ビタミンB1の利用効率が増強する。 アサリなど二枚貝、フナなどの淡水魚、ワラビやゼンマイ、腸内細菌の一部はチアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素を持っている。 腸内細菌にはビタミンを産生する種類もある。
免疫機能を増強するためには、単純にビタミンB1を摂取するだけでなく、食べ合わせや腸内細菌の構成も考える必要がある。

◆ ω-3脂肪酸は抗アレルギー、抗炎症活性を持ち、ω-6脂肪酸は炎症促進作用を持つ
食用油の脂肪酸組成も免疫機能に関係する。 多くの種類の食用油が販売されているが、それぞれ脂肪酸の構成が異なっている。 なかでもω-3脂肪酸とω-6脂肪酸は体内で合成できず、食事から摂取する必要があるため、必須脂肪酸と呼ばれている。
ω-3脂肪酸は抗アレルギー、抗炎症活性を有する。 一方、ω-6脂肪酸は炎症促進作用があり、現代人はω-6脂肪酸が多い食事を摂取しているため、ω-3脂肪酸の摂取が推奨されている。

◆ 脂肪酸の一つであるロイコトリエンB4はIgA抗体産生に関与
ω-6脂肪酸の一つであるロイコトリエンB4とその受容体であるBLT1を介した経路は腸管でのIgA抗体産生に関与しており、生体防御という観点ではω-6脂肪酸も重要である。
野生型マウスにコレラワクチンを接種するとコレラワクチン特異的IgAが産生され、その後コレラ毒素を投与しても下痢症状が抑制される。 しかし、BLT1欠損マウスにコレラワクチンを接種してもコレラワクチン特異的IgAは産生されず、コレラ毒素投与により激しい下痢症状をきたす。
腸管のパイエル板や粘膜固有層においてIgA産生細胞が誘導される過程で、B細胞ではMyD88の発現が上昇するが、BLT1欠損マウスではMyD88発現が減弱していた。 ナイーブB細胞が腸管で教育を受けIgA陽性B細胞になるとBLT1を発現する。 この時、リノール酸やアラキドン酸から作られるロイコトリエンB4がBLT1を刺激し、MyD88の発現が促進される。 腸内細菌はB細胞を刺激して増殖させ、IgA抗体産生を促進すると考えられている。
腸内細菌と食事成分はそれぞれ免疫の制御や成熟に重要であることが分かっていたが、別の経路で働くと考えられていた。 しかし、このメカニズムは食事と腸内細菌が協調的に働き、腸管の免疫増強に寄与している。

◆ ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸をバランスよく摂取する必要がある
この結果から、ワクチンの効果を高めるためにω-6脂肪酸の摂取を考えがちだが、過剰なω-6脂肪酸の摂取はサイトカインストームのリスクを高める。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でも見られる急性呼吸窮迫症候群はサイトカインストームつまり免疫の暴走による炎症が原因であると考えられている。
したがって、抗炎症作用を持つω-3脂肪酸を摂取し、免疫の暴走を抑制することも重要であり、ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸をバランスよく摂取する必要がある。

◆ 発酵食品の代謝物の研究も進める
食用の一つである亜麻仁油はみそ汁、ヨーグルト、納豆などにかけて食べられている。こうした発酵食品には微生物が含まれており、脂肪酸と組み合わせることで有用な代謝物が産生されている可能性もある。そこで、日本各地の発酵食品を収集し、代謝物の解析や脂肪酸との相互作用について研究を進めている。
例えば、納豆に含まれる枯草菌はアレルギーを抑制する代謝物である17,18EpETEを産生する酵素を持っている。17,18EpETEを産生するメカニズムの解明により、この化合物が抗アレルギー活性を持つことを見出した。さらに、納豆を使った機能性食品の開発や納豆が産生する化合物を用いた創薬展開も目指している。

◆ おわりに
ヒトは様々な脂肪酸組成と持つ食用油を摂取し、体内で代謝して多様な代謝物へ変換し、免疫をはじめとする生体機能に影響を及ぼしている。こうした代謝は腸内細菌や発酵食品に含まれる微生物も関わる。このように微生物によって代謝される代謝物をポストバイオティクスと呼び、生体機能への影響が注目されている。
同じ食物を摂取しても、人によって効果が異なる現象がみられる。これは腸内細菌や代謝が影響している可能性がある。そこで、生体の腸内細菌の代謝活性を指標とした個別化、層別化の栄養指導の開発を進めている。
また、日本人の食事内容や腸内細菌、免疫応答を解析する研究も開始している。現在までに5000名以上のデータを収集し、マイクロバイオームデータベースを構築した。このデータベースにはワクチン抗体に関するデータもあり、インフルエンザウイルスワクチンだけでなく、今後接種が進む新型コロナウイルスワクチンに対する免疫応答と腸内環境の関連についても解明が期待される。

 

(パラ)イムノバイオティクスの抗ウイルス食品・飼料免疫学的利用性

北澤春樹(東北大学大学院農学研究科

◆ 新興・再興感染症が繰り返し発生し、複合感染も増加
ヒト、動物を問わず、新興・再興感染症は繰り返し発生している。2013年にはα属のコロナウイルスである豚流行性下痢(PED)が7年ぶりに発生した。ヒトに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をもたらすSARS-Cov-2はβ属のコロナウイルスである。ブタでは豚熱(CSF)が2018年に24年ぶりに発生したほか、アフリカ豚熱(ASF)の流行も中国や韓国、フィリピンなどアジア各国に拡大している。とくにASFは発熱や全身性の出血性病変を特徴とし、致死率が高いため日本の水際対策が急がれている。
このようにヒトだけでなく動物でも病原微生物による疾患が増えており、複数の病原微生物に感染する複合感染も多くなっている。こうした感染症に対応するための抗菌剤使用は、薬剤耐性菌という新たな問題を生み出した。2050年には薬剤耐性菌による死者が年間1000万人になると推定されており、抗菌剤に頼らない健康生活の向上が求められている。これにはプロバイオティクスが有用とされており、とくにヒト用のプロバイオティクス市場は成長を続けている。

◆ 免疫機能に関連したプロバイオティクスであるイムノバイオティクスが注目されている
腸内細菌とヒトの健康との関係は110年以上前に提唱された。近年はプロバイオティクスだけでなく、プロバイオティクスのえさとなるプレバイオティクス、プロバイオティクスとプレバイオティクスと組み合わせたシンバイオティクス、プレバイオティクスの死菌やその代謝物であるポストバイオティクスも注目されてきた。また、免疫機能に関連したプロバイオティクス、シンバイオティクスをイムノバイオティクス、イムノシンバイオティクスと呼ぶこともある。
ポストバイオティクスは腸内フローラ調節、腸管バリア増強、腸管局所免疫調節を介した全身免疫調節、代謝調節、神経系調節の5つの活性機能が推定されている。イムノバイオティクスは腸管バリア増強、腸管局所免疫調節を介した全身免疫調節に関連する。

◆ 抗炎症性イムノバイオティクスでは細胞内調節因子A20が亢進
生体ではパターン認識受容体にパターン分子が認識され、一連の免疫応答が働く。消化管でも胃、小腸、大腸など器官によって粘膜の厚み、分泌物の量や分布が異なっている。腸管は炎症制御において重要な働きを担っており、腸内細菌と腸管上皮細胞の相互作用を考えるうえで腸管のバリア機能も考慮する必要がある。そこで、ヒトに応用できるモデルとしてブタに着目し、腸管上皮細胞との相互作用が密になると思われる小腸を中心に研究を進めてきた。
まず、ブタ腸管上皮細胞を樹立し、抗炎症性イムノバイオティクスで共通して発現が亢進する細胞内調節因子A20を見出した。in vivoでブタにA20を投与したところ、免疫機能が向上するだけでなく、産肉性も高まることが分かった。

◆ 抗ウイルス性イムノバイオティクスの酵母菌事前投与でロタウイルス感染が減少
ロタウイルスはノンエンベロープRNAウイルスであり、感染性下痢症を引き起こす。おもに幼若期のヒトや家畜に感染し、深刻な下痢症をもたらす。多数の死者を出し、家畜では殺処分による経済損失が世界的に問題となっている。したがって、免疫を高め、ロタウイルスに強い家畜の開発が必要とされている。
ロタウイルスは腸管上皮細胞の微絨毛のレセプターに付着し、微絨毛を発達させることで感染する。微絨毛が発達した状態でウイルスが存在すると、感染が成立する。
ブタに抗ウイルス性イムノバイオティクスの酵母菌を投与した後に、ロタウイルスに暴露させると、感染が約半数に減少した。ロタウイルスに感染すると、非構造たんぱく質により1型インターフェロン(IFN)が抑制される。しかし、抗ウイルス性イムノバイオティクスの酵母菌を投与したブタでは1型IFN活性が高まり、抗ウイルス活性も高まっていた。

◆ リポテイコ酸ノックアウトでウイルス活性が弱まる
大腸菌ウイルス共感染系では、大腸菌の存在によりウイルスの感染性がさらに高まる。共感染対策にもイムノバイオティクスは有用と考えられる。大腸菌のみに感染、ロタウイルスのみに感染、共感染のそれぞれの系で腸管の解析が行われ、イムノバイオティクスに関与している因子が報告されるようになってきた。
ただし、イムノバイオティクスに関与する因子はピュアな因子の採取、解析が困難である。このため、遺伝子操作でこれらの因子をノックアウトする手法が主流となっている。それでもノックアウトが困難あるいは不可能な因子もある。そこで、比較ゲノムからターゲットとなる因子を絞り込む研究を進めている。
近年の研究により、リポテイコ酸がイムノバイオティクスに重要な因子であることが分かってきた。そこで、リポテイコ酸をノックアウトした結果、ウイルス活性が弱まった。さらに、多糖産生の乳酸菌のひとつ、Steptococcus thermophilus St538由来の多糖のノックアウトでもウイルス活性が弱まることが明らかになった。

◆ COVID-19対策へイムノバイオティクス応用も期待される
COVID-19対策にもイムノバイオティクスは応用できると考えている。マウスによる実験でLactobacillus plantarumの株は1型IFNの発現増強作用を有しており、インフルエンザウイルス感染抑制や生存率向上に対する効果があると報告されている。コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じ1本鎖RNAウイルスであり、COVID-19予防への応用が期待できる。
ただし、イムノバイオティクスの菌体がそのまま肺に到達することは考えられない。COVID-19対策では、腸管と肺に存在するマイクロフローラの軸、イムノバイオティクスのリガンドや代謝産物、T細胞、樹状細胞の役割も考慮しなくてはならない。腸管上皮やマイクロバイオームにおけるイムノバイオティクスの研究が進歩すれば、代謝産物や免疫細胞を介して発揮する腸管、肺、粘膜の相互作用がCOVID-19対策に応用できる可能性がある。

◆ おわりに
現在もイムノバイオティクス研究と、その結果を応用した家畜の抗病性育種開発を進めている。今後はヒトへ応用し、さらにイムノバイオティクス食品、イムノバイオティクス肥料、イムノバイオティクス飼料の開発、普及を通じ、イムノバイオティクス健康生活戦略の実現を目指している。

 

ウイルス感染防御を司るプラズマサイトイド樹状細胞を活性化する乳酸菌

藤原大介(キリンホールディングス株式会社

◆ プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化させる乳酸菌を探索
グローバルな人とモノの移動の増加に伴い、ウイルス感染リスクが増大している。ワクチンや抗ウイルス薬は効果が高いものの、適用対象が狭く、開発期間が長い。そこで、様々なウイルスに対応できる自然免疫を簡便に高める手段の開発を目指し、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化させる乳酸菌の研究に取り組んできた。
pDCは各種のウイルスが侵入した際に、B細胞、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、NK細胞など免疫機能を担う細胞に指示、命令し、活性化させる役割を担う。pDCはイミキモドやCpG配列を含むDNAで活性化することが知られており、これらは薬品として応用されている。
しかし、安全な食事素材として広く用いられている乳酸菌など、医療インフラに異存せずpDCを活性化できる物質が存在すればなおよい。乳酸菌には自然免疫のリガントが多数存在する。pDCに認識さえされれば、効果が期待できる。そこで、pDCを活性化させる乳酸菌の探索を開始した。

◆L actococcus lactis subsp.lactis JCM 5805がpDCを活性化
先行研究では乳酸菌はpDCを活性化できないと報告されていたが、骨髄細胞からpDCを誘導し、公共バンク乳酸菌125株を添加したところ、3株がpDCを活性化させることが分かった。この3株はいずれもLactococcus lactisに属していた。この3株についてin vivo試験でpDC活性化を検討したところ、Lactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805のみがpDCを活性化することが分かった。
Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805を添加した培養上清では、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-λなどウイルス感染によって増加するサイトカインが一般的な乳酸菌を添加した場合に比べ増加していた。しかし、TLR9とMyd88ノックアウトマウスでLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805によるこれらのサイトカインの増加は見られなかった。Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805はTLR9やMyd88を介して、サイトカイン増加を亢進していると考えられる。

◆L actococcus lactis subsp.Lactis JCM 5805はpDCに貪食され、pDCを活性化させる
Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805および一般の乳酸菌をpDCに添加し、染色した。その結果、一般の乳酸菌はpDCの外側に付着するが、Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805はpDC内に取り込まれ、Toll様受容体(TLR)9が細胞内に発現することが確認された。Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805はpDCに貪食、消化されて発生したDNAがTLR9やMyD88を刺激し、pDC活性化、IFN産生を促進すると考えられる。

◆ マウスへのLactococcus lactis subsp.Lactis JCM 5805投与でパラインフルエンザ感染による死亡率、肺炎症状が抑制
マウスをLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805投与群と非投与群に分け、致死量のパラインフルエンザに感染させたところ、非投与群では10日目までに生存率は0%になったが、投与群では15日目に70%が生存していた。投与群では非投与群に比べ、パラインフルエンザ感染による肺炎症状も大幅に軽減されていた。肺組織の抗ウイルス遺伝子発現を検討したところ、投与群では非投与群に比べ、Isg15、Oasl2、ViperinといったIFNの支配下にある抗ウイルス因子が有意に増加していた。
顕微鏡での観察ではLactococcus lactis subsp.Lactis JCM 5805は口から小腸に到達し、パイエル板のM細胞から取り込まれることが分かった。活性化したpDCは腸間膜リンパ節に移動していることも確認できた。その後の経路は確認できていないが、おそらく腸管局所で活性化したpDCが全身に移行するか、パイエル板で発現が亢進したIFN-αが血流により全身に移行すると考えられる。

◆ マウスではロタウイルス感染による下痢、体重減少を抑制
マウスに生理食塩水のみもしくは生理食塩水およびLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805を投与し、ロタウイルスに感染させたところ、Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805投与群ではロタウイルス感染によって発症した下痢による体重減少が抑制され、順調に体重が増加していた。糞中のロタウイルス量もLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805群では有意に少なかった。

◆ ヒトでもpDCが活性化し、インフルエンザ感染を抑制
ヒトでの検証も行った。pDC活性が低下する夏季に30~50代の健常者にLactococcus lactis subsp.Lactis JCM 5805含有飲料もしくは疑似飲料を4週間摂取してもらい、血中pDC活性を評価した。その結果、疑似飲料群では血中pDC活性が有意に低下したが、Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805含有飲料群では血中pDC活性が維持され、両群間に有意差を認めた。
冬季に30~50代の健常者を対象に、Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805含有飲料もしくは疑似飲料を摂取してもらい、インフルエンザ・風邪罹患者数、インフルエンザ様自覚症状を比較した。Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805含有飲料群では疑似飲料群に比べインフルエンザ・風邪罹患者数が少ない傾向にあり、インフルエンザ様自覚症状は有意に少なかった。
冬季に岩手県内の小・中学校の児童・生徒にLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805を含むヨーグルト製品を配布し、インフルエンザ欠席率を検討した。Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805含有製品を配布した地域では同様の流行パターンを示した隣接地域に比べて、インフルエンザ欠席率が有意に低かった。

◆ 機能性食品の届け出も行う
Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805は「健康な人の免疫機能の維持をサポートする。」として、消費者庁に機能性表示食品の届け出を行っている。感染症流行が拡大している状況でLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805は健常者の健康維持だけでなく、医療従事者など感染リスクの高い職業に従事する人の健康維持に貢献できると考えている。

◆ おわりに
ウイルス感染防御の免疫の司令塔であるpDCを活性化する乳酸菌Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805を発見した。Lactococcus lactis subsp.Lactis JCM 5805を動物モデルへの予防投与したところ、ウイルス感染による症状の改善を認めた。
Lactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805はヒト試験により、インフルエンザ・風邪様症状の改善および発症率低下の可能性が示唆された。作用機序からLactococcus lactis subsp. Lactis JCM 5805はウイルス全般に対する広い防御効果が期待される。腸管免疫を介した免疫調節作用の研究をさらに進めていきたい。

 

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