第25回腸内細菌学会学術集会 Report「感染症と腸内フローラ・腸管免疫」Part1

2021.10.08腸内細菌

第25回腸内細菌学会学術集会が2021年6月1日(火)と2日(水)の2日間にわたり開催された。本大会は東京都江戸川区の『タワーホール船堀』での会場開催とオンライン配信のハイブリッド開催で予定されていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止の観点から、オンライン配信のみとされた。
本大会のテーマは『人生100年時代と腸内フローラ ―ヒトの一生における腸内フローラと健康の関係―』とされ、大会長は森永乳業株式会社の阿部 文明先生が務めた。
本大会では腸内細菌学会の財団創立40周年記念式典も開催され、大阪大学免疫学フロンティア研究センター 坂口志文先生により、「制御性T細胞による免疫応答制御」と題して記念講演が行われた。そのほか、特別講演や教育講演、一般演題、市民公開講座と多彩なプログラムが組まれたが、ここでは6月2日(水)に開かれたシンポジウム2「感染症と腸内フローラ・腸管免疫」の概要を報告する。

 

株式会社ジェフコーポレーション「栄養NEWS ONLINE」編集部】

 

 

シンポジウム2
感染症と腸内フローラ・腸管免疫

座長:大草敏史(順天堂大学
   大野博司(理化学研究所

腸内代謝物による免疫・バリア修飾作用

長谷耕二(慶應義塾大学 薬学部

 

◆ 腸管粘膜のバリア機能破綻はリーキガット症候群をもたらし全身性疾患を惹起する

腸管粘膜にはタイトジャンクションによる物理的障壁、ムチン分泌によって形成されるムチン層など様々なバリア機能を有する。腸内細菌も生物学的なバリア機能を持つ。また、腸内の上皮細胞は抗菌ペプチドの分泌、サイトカイン・ケモカインの分泌、IgEの輸送など多彩な役割を担う。
腸管粘膜のバリア機能が破綻すると、リーキガット症候群に陥る。リーキガット症候群は腸管から食物や常在微生物に由来する因子が体内に漏れ、浸透する状態である。リーキガット症候群は肥満、腎臓病、炎症性腸疾患、関節リウマチなど自己免疫性疾患、肝疾患、慢性閉塞性肺疾患、中枢性疾患など様々な全身性疾患を誘発する。
リーキガット症候群が誘発するこれらの疾患は腸内細菌に関連する疾患と類似している。このため、腸内細菌のディスバイオーシスが腸管バリア機能の低下をもたらし、リーキガット症候群を発症することで炎症誘導や代謝異常が惹起され、全身性疾患につながると考えられている。

 

◆ AP-1B複合体をノックアウトしリーキガット症候群モデルマウスを作出

しかし、リーキガット症候群から全身性疾患に至る病態メカニズムは十分に明らかになっていない。その原因のひとつにマウスのリーキガット症候群モデルが存在しない点がある。そこで、リーキガット症候群モデルマウスの作出を目指した。
AP-1B複合体は膜たんぱく質の輸送制御因子であり、上皮の細胞極性維持を介して、バリア機能に関与している。AP-1B複合体を腸上皮特異的にノックアウトしたマウスに蛍光デキストランを経口投与したところ、血液への流入が確認できた。この結果は、AP-1B複合体ノックアウトマウスはディスバイオーシスを起こしており、リーキガット症候群モデルマウスであることを示唆する。
AP-1B複合体ノックアウトマウスは腎臓へのIgA沈着、腎機能マーカーの上昇が確認され、IgA腎症様症状を発症していた。さらにAP-1B複合体ノックアウトマウスの約20%は運動機能障害を示した。現在、このリーキガット症候群モデルマウスを用いて、リーキガット症候群から全身性疾患への病態メカニズム解明を進めている。

 

◆ 腸管粘膜バリア増強は腸内細菌定着により増強する

腸管粘膜バリア機能は無菌状態で低下することが知られている。無菌マウスにBacteroidesthetaiotaomicronを定着させたところ、一部のバリア関連分子が増加したと報告されている。つまり、腸管粘膜バリア機能は腸内細菌定着により増強すると考えられる。
ただし、腸内細菌が腸管粘膜バリア機能に関与するメカニズムは完全に解明されていない。そこで、腸管上皮のターンオーバーに着目し、腸管粘膜バリア機能における腸内細菌の役割を検討した。

大腸上皮細胞の増殖にプトレッシンが関与している
無菌マウスに特定微生物除去(SPF)マウス由来の腸内細菌を移植し、無菌マウス、SPFマウスと大腸上皮増殖を比較した。無菌マウスでは大腸上皮増殖がSPFマウスに比べ少なかった。しかし、無菌マウスにSPFマウスの腸内細菌を移植したところ、大腸上皮増殖が認められ、とくに腸内細菌移植3日目で大幅に増殖していた。
管腔内および腸上皮のメタボローム解析を行い大腸上皮増殖と相関する代謝物を同定した結果、プトレッシンが腸管腔内、腸管上皮内ともに増加していた。プトレッシンはポリアミンの一種で、宿主の体内で産生されるほか、腸内細菌による産生もあり、細胞増殖の制御作用があるといわれている。
無菌マウスとSPFマウスで腸管腔内のポリアミン濃度を比較したところ、無菌マウスはSPFマウスより濃度が低かった。これは腸内細菌によるポリアミン産生を示唆する。

 

◆ 大腸上皮はプトレッシンを取り込み代謝することで増殖する

次に、ポリアミンが免疫やバリア修飾に及ぼす作用について検討した。SK930はプトレッシン産生酵素がノックアウトされている大腸菌株である。無菌マウスに大腸菌野生株もしくはSK930を定着させ、それぞれの子に母子伝達させた。大腸菌野生株定着マウスの子では便中プトレッシン濃度が高くなっていたが、SK930定着マウスの子では便中プトレッシン濃度上昇が確認できなかった。大腸菌野生株定着マウスの子では腸管上皮内のプトレッシン濃度の上昇はわずかだが、スペルミジン、スペルミンの濃度が上昇していた。SK930定着マウスの子ではこのような変化は認められなかった。腸管上皮は大腸菌野生株定着マウスの子で増殖を認めたが、SK930定着マウスの子では認められなかった。
腸内細菌由来のプトレッシンはスペルミジンに代謝され、さらにスペルミンに代謝される。プトレッシンは腸内で取り込まれ、短時間でスペルミジンやスペルミンに代謝されると考えられる。
さらに、大腸上皮のオルガノイドを作成し、プトレッシンを加える実験を行った。その結果、大腸上皮の約50%にプトレッシンが取り込まれ、オルガノイドが増殖していることが確認できた。この系でプトレッシンからスペルミジンへの代謝を抑制するMCHAを加えた結果、オルガノイドの増殖も抑制された。さらにスペルミジンを添加したところ、再びオルガノイドの増殖が認められた。
先行研究ではスペルミジンは翻訳伸長因子eiF5Aに結合し、eiF5Aのハイプシン化を介して、細胞増殖を促進すると報告されている。大腸上皮オルガノイドでGC7という化合物でeiF5Aのハイプシン化を抑制したところ、大腸上皮の増殖も抑制された。野生型大腸菌定着マウスの子ではeiF5Aのハイプシン化が進んでいたが、SK930定着マウスの子では認められなかった。
 これらの結果から、大腸上皮は積極的に外来性プトレッシンを取り込んで代謝し、増殖していると考えられる。

 

◆ プトレッシン産生ノックアウト大腸菌定着マウスに比べ野生型大腸菌マウスでは大腸炎の症状が緩和される

内因性のポリアミンは抗炎症性のM2マクロファージを誘導すると報告されている。ポリアミン産生がM1/M2マクロファージのバランスを決定している。実際にプトレッシン産生酵素ノックアウトマウスではIL-1、IL-6、IL-12、TNF-αといったM1型のサイトカイン上昇が確認されている。そこで、外来性プトレッシンのマクロファージに対する効果を検討した。
野生型大腸菌定着マウスの子ではM2マクロファージが上昇するが、SK930定着マウスの子では認めなかった。腸管にはCX3CR1highという抗炎症性のマクロファージが存在する。CX3CR1highも野生型大腸菌定着マウスでは増加するが、SK930定着マウスでは増加しなかった。
野生型大腸菌定着マウスの子およびSK930定着マウスの子にデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与し、大腸炎を誘導したところ、野生型大腸菌定着マウスの子はSK930定着マウスに比べ、大腸炎の症状が緩和され、体重減少や死亡率も低下していた。

 

◆ 母体の腸内細菌叢の乱れが子の成育後の疾患リスクを高める

妊娠初期から後期にかけて腸内細菌の構成が大きく変化すること、妊娠期における抗菌剤投与は母体腸内細菌叢のかく乱につながり子の生育後の疾患リスクを高めることが報告されている。しかし、母体腸内細菌叢が胎児へ影響する理由と機序はわかっていない。
母体腸内細菌叢の胎児への影響を検討するため、SPFマウスの子および無菌マウスの子を同一環境で育て、高脂肪食を付加したところ、無菌マウスの子は重篤な肥満症状や耐糖能異常を示した。SPFマウスに低食物繊維食もしくは低食物繊維食およびプロピオン酸を付加し、それぞれの子を同一環境で育て、高脂肪食を付加したところ、低食物繊維のみ付加したマウスの子は血糖値、中性脂肪が増加したが、低食物繊維食およびプロピオン酸を付加したマウスの子では増加しなかった。プロピオン酸は母体の大腸から胎児に20~40分で移行していることが確認された。
胎生期、乳幼児期の環境が成人期における健康状態を左右するという学説はDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)と呼ばれている。これらの結果は、母親の腸内代謝物は胎児の代謝プログラミングを促し、DOHaDに寄与していることを証明している。

 

◆ おわりに

今までは腸内細菌の代謝物は短鎖脂肪酸のように直接宿主に働きかけると考えられていた。プトレッシンは宿主の体内でスペルミジンに代謝されて、スペルミジンが宿主に対する効果を発揮する。このように腸内細菌と宿主が共同で代謝し、生理活性を発揮する経路も明らかになった。これをシンバイオティックメタボリズムと名付け、研究を進めている。
マウスによる実験で母親の腸内代謝物が胎児の代謝プログラミングに関与していることが証明された。現在、ヒト妊婦における腸内代謝物の胎児移行の検討、妊娠期の腸内環境がヒト胎児の発達や胎盤形成に与える影響についても研究を進めている。

 

 

自己免疫疾患と腸内細菌叢

大野博司(理化学研究所生命医科学研究センター

◆ 腸内細菌のディスバオーシスや多様性の喪失が多くの疾患に関係する

ヒトの成人の細胞は23~30兆個だが、ヒトの腸内の常在菌は40兆個存在するといわれている。これらの細菌は腸の疾患だけでなく、免疫疾患、代謝性疾患、神経系疾患にも関与していることが分かってきた。こうした疾患は腸内細菌のディスバイオーシスや多様性の喪失が関係しているとされている。
 現代では寄生虫の感染が減ったが、アレルギー疾患や自己免疫疾患が増えてきた。この現象は衛生仮説として提唱されており、1型糖尿病と寄生虫感染の関連についても研究が進んでいる。

 

◆ CD8陽性Tregが血糖値上昇、血中インスリン低下をもたらす

抗菌剤のストレプトゾトシンを全身投与したマウスは血糖値上昇、血中インスリン低下をきたし、糖尿病を発症した。マウスの腸管寄生虫であるHeligmosomoides polygyrusを投与してからストレプトゾトシンを全身投与したマウスでは血糖値上昇、血中インスリン低下は認めなかった。
このメカニズムに関連する因子を検討したところ、CD4陽性制御性T細胞(Treg)に関連は認められなかった。そこで、移植片対宿主病GVHD)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、自己免疫疾患との関連が報告されているCD8陽性Tregに着目した。
Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスは感染していないマウスに比べ、CD8陽性Tregが約2倍に増えていることが確認された。しかし、Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスをCD122抗体で処理したところ、CD8陽性Tregの増加は認められなくなり、血糖値が上昇した。
CD122陽性細胞のCD8陽性Treg以外の細胞への関与を否定するため、CD122陽性CD8細胞とCD122陰性CD8細胞のストレプトゾトシンによる血糖値上昇を比較したところ、CD122陽性CD8細胞では上昇が確認できなかったが、CD122陰性CD8細胞では上昇した。これらの結果から、CD122陽性CD8細胞つまりCD8陽性Tregは血糖値上昇に何らかの役割を担っていると考えられる。

 

◆ 血糖値上昇抑制にはトレハロース産生が関与している

Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスの腸液をメタボローム解析したところ、トレハロースが多く存在していた。トレハロースを付加したマウス、マルトースを付加したマウス、Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスそれぞれにストレプトゾトシンを投与した結果、トレハロース付加群、Heligmosomoidespolygyrus 感染群ではCD8陽性Tregが増え、血糖値上昇が抑制されたが、マルトース付加群ではこのような変化は認めなかった。この結果から、Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスではトレハロースの産生により、血糖値上昇を抑制していると考えられる。

 

◆ アンピシリン感受性の腸内細菌がトレハロースに反応し血糖値上昇を抑制する

血糖値上昇抑制における腸内細菌の関与を検討するため、アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メトロニダゾールの抗生物質ミクスチャーで腸内細菌を滅菌したマウスをHeligmosomoides polygyrusに感染させた。その結果、血中インスリンが低下した。 それぞれの抗生物質を単独で投与したところ、アンピシリンを投与したマウスではHeligmosomoides polygyrusに感染させても血中インスリンが低下していた。この結果は、アンピシリン感受性の腸内細菌がトレハロースに反応し、血糖値上昇を抑制していることを示唆する。

 

Ruminococcus gnavusの相同体であるOTU718がトレハロース付加で増加する

Heligmosomoides polygyrus 感染およびトレハロース付加による変化が大きい腸内細菌を探索した結果、Ruminococcus 属はeligmosomoides polygyrus 感染およびトレハロース付加で増加していたが、マルトース付加では増加しなかった。さらにRuminococcus 属でHeligmosomoides polygyrus感染およびトレハロース付加で増加した腸内細菌を探索したところ、Ruminococcus gnavusの相同体であるOTU718のトレハロース付加による増加が確認できた。
Ruminococcus gnavusまたはFaecalibacterium  prausnitziiをマウスに投与した後に、ストレプトゾトシンを投与したところ、Ruminococcus gnavusではCD8陽性Tregが増加し血糖値上昇が抑制されたが、Faecalibacterium prausnitziiではこれらの変化は確認できなかった。この結果から、Ruminococcus gnavus がトレハロースに反応し、CD8陽性Tregを増やしていると考えられる。

 

◆ 1型糖尿病患者ではCD8陽性Tregが少なく、便中のRuminococcus 属も少ない

小児科通院中の1型糖尿病患者と健常者でCD8陽性Tregを比較した。その結果、健常者に比べ1型糖尿病患者で有意に減少していたが、CD4陽性Tregは両群で有意差を認めなかった。便中のRuminococcus 属は1型糖尿病患者で健常者に比べ有意に少なく、便中のRuminococcus 属とCD8陽性Tregには正の相関を認めた。
以上の結果から、Heligmosomoides polygyrusがトレハロース産生を介してCD8陽性Tregを増加させ、ストレプトゾトシンによる糖尿病を予防していると考えられる。

 

◆ 多発性硬化症患者では腸内細菌のディスバイオーシスが起きている

多発性硬化症は慢性の自己免疫疾患で中枢性の脱髄が起きることによって神経伝達が阻害され、全身に様々な症状をもたらす。多発性硬化症患者は日本だけでなく世界各国で増加しており、環境因子の関与が想定されている。
多発性硬化症は末梢で自己免疫性の炎症性T細胞が増加して血液脳関門から浸潤し、脱髄を起こすと考えらえている。無菌にした実験的自己免疫性脳脊髄炎マウス(EAE)で症状が抑制されることから、多発性硬化症には腸内細菌の関与が考えられている。実際、多発性硬化症患者は腸内細菌のディスバイオーシスが確認されている。

 

アンピシリン経口投与で炎症性細胞の増加が抑制される

そこで、多発性硬化症に関与している腸内細菌を検討するため、生理食塩水、アンピシリン、バンコマイシン、ネオマイシン、メコバラミンのいずれかをEAEマウスに経口投与したところ、アンピシリン経口投与で症状が抑制された。アンピシリンの全身投与では症状抑制は確認できなかった。
EAEマウスの小腸、大腸、腸間膜リンパ節、パイエル板でIFN-γやIL-17といった炎症性サイトカインの発現を検証したところ、小腸で炎症性サイトカインが誘導されていたが、アンピシリン投与により抑制された。
CD4陽性Tregはアンピシリン投与による増加が確認できなかったため、アンピシリンは炎症性細胞の増加を抑制すると考えられる。EAEマウスでは末梢で予備刺激されたCD4陽性Tregが腸に移行した際にアンピシリン感受性の腸内細菌が関与し、増殖した細胞が浸潤していると考えられる。

 

Erysipelotrichaceae Allobaculum に関連する細菌OTU0002がアンピシリンで抑制される

アンピシリンで抑制される腸内細菌の探索では、Erysipelotrichaceae Allobaculumに関連する細菌OTU0002が同定された。この細菌を単離培養し、ノトバイオートを作出したところ、小腸でのみバイオフィルム様に付着していた。
無菌マウスにOTU0002もしくはLactobacillus 属の細菌OTU0001を移植したところ、OTU0001移植群ではEAE発症は認めなかったが、OTU0002移植群ではEAE発症がみられ、IL-17も誘導されていた。OTU0002は何らかの形でTh-2細胞を誘導すると考えられる。

 

◆ OTU0002とLactobacillus 属の細菌OTU0001の同時移植で症状が増悪する

無菌マウスにOTU0001とOTU0002を同時に移植すると、EAE発症が増えた。この結果は、OTU0002に対するOTU0001の関与を示唆する。
OTU0001はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のミミクリーペプチドを産生する。そこで無菌マウスにMOGのミミクリーペプチドを投与したところ、CD4陽性細胞が増加した。さらに、MOGのミミクリーペプチド産生を抑制したところ、CD4陽性細胞の増加、EAE発症も抑制された。
末梢から腸へ移行した際にOTU0002は血清アミロイドA蛋白やIL-23などTh-17の分化を誘導する物質を産生する。その結果、自己反応性のT細胞が自己炎症性のTh17になり、中枢に移行して脱髄を起こす。その時OTU0001が存在するとミミクリーペプチドでMOG特異的T細胞が増殖する。MOG特異的T細胞はTh-17増殖をさらに促進し、より多くのTh-17が中枢に流入し、多発性硬化症の症状を増悪させると考えられる。

 

◆おわりに

腸内細菌叢は1型糖尿病や多発性硬化症の病態形成に関与していることが明らかになってきた。とくに多発性硬化症では複数の腸内細菌が相乗的に自己免疫応答の発症や増悪に関与していた。今後、腸内細菌の機能解明が進めば、これらの疾患の病態形成が明らかになり、新たな治療ターゲットとなる可能性がある。

 

Part 2へつづく…

タグ : ディスバイオーシス リーキガット症候群 乳酸菌 免疫 糖尿病 腸内細菌叢