第57回糖尿病学の進歩 Report:シンポジウム3 糖尿病患者の個別化食事療法の実現に向けて Part2
2023.07.24フレイル・サルコペニア , 栄養素座長
福井道明( 京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学)
矢部大介( 岐阜大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学)
【発表の要点】
名古屋大学大学院医学系研究科の梅垣宏行先生は、若年糖尿病患者に対する肥満の是正、厳格な血糖コントロール実施の一方、フレイルやサルコペニア合併患者が増えている高齢糖尿病患者では、ライフステージに応じた健康的に体重を維持する方法の必要性を指摘した。
東京大学医学部附属病院の関根里恵先生は、日本の糖尿病治療で用いられてきた食品交換表が、外食や中食の増加などの食事パターンの変化で利用が難しくなっている現状を示し、食品交換表への資材や調理食品の追加など、求められる対応を提示した。
なお、シンポジウムの最後にウェブ参加者も含めた活発な質疑応答が行われたので、併せて載録する。
【株式会社ジェフコーポレーション「栄養NEWS ONLINE」編集部 講演】
糖尿病患者の個別化食事療法の実現に向けて Part2
高齢者への食事療法の最適化
梅垣宏行(名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学)
高齢糖尿病患者ではサルコペニア、フレイル合併が増加
近年、糖尿病の患者の高齢化が進んできた。糖尿病に限らず、高齢患者は個人差が大きい特徴がある。 80 歳以上の糖尿病患者の病歴をみても、比較的最近発症の患者もいれば、病歴が長い患者もいる。それぞれの高齢糖尿病患者には合併症や身体機能などに大きな差がある。
また、糖尿病は酸化ストレス、慢性炎症、インスリン抵抗性、ミトコンドリアの機能低下などを介して、サルコペニアやフレイルのリスクが高くなることも知られており、その予防も考慮しなくてはならない。
従来の糖尿病の食事療法は、 BMI 22 を基準とした標準体重を元に総エネルギー量を設定していたが、近年、基準を目標体重に変更するパラダイムシフトがあった。目標体重は、総死亡率が最も低い BMI を元に算出される。日本人の 2 型糖尿病患者を対象に BMI と死亡の関係を検討した報告では、 75 歳以上の場合、 BMI 25 を超えても死亡リスクは上がらず、 BMI 低値でむしろ死亡率が高くなることが示された。同様の傾向は、シンガポールの疫学研究でも報告されており、全体的には BMI 23 ~ 25 で死亡率が低い傾向にあるが、高齢患者では、 BMI 上昇で死亡率は必ずしも上昇しないことが示された。そこで、現在の目標体重は、 65 歳以上の場合、 BMI 22 と固定するのではなく、 22 ~ 25 と幅を持たせている。さらに、一律に設定せず、患者のフレイルのリスクなども考慮して段階的に再設定することとされている。
若年の糖尿病患者は一般的に肥満が多い。日本の大規模データベース J- DREAM のデータでも、 65 歳未満の糖尿病患者の平均 BMI は 27.6 であった。しかし、 65 歳以上の糖尿病患者の平均 BMI は 24.6 と低い。より高齢になると、平均 BMI はさらに低くなると思われる。糖尿病患者には肥満が多いとの先入観があるが、高齢糖尿病患者には必ずしも当てはまらない点に留意が必要である。
また、高齢者の BMI を計算する際に、身長の短縮を考慮に入れなければならない。骨粗鬆症による圧迫骨折、軟骨の圧縮の影響などで、高齢期には数 cm 身長が低くなる。若年期に比べ、身長が 5 cm 短縮する例も稀ではない。 30 歳時に体重 60 kg で身長 165 cm であった場合、BMI は 22 になるが、 50 年後の身長が 5 cm 短縮と仮定すると、同じ体重であっても BMI は 23.4 となる。高齢糖尿病患者の BMI を検討する際には、こうした点も忘れてはならない。
糖尿病の食事指導では目標体重を設定し、エネルギー係数を乗じて総エネルギー量を算定する。日本の高齢糖尿病患者を対象とした J- EDIT 研究で、目標体重 1 kg あたりのエネルギー摂取量と死亡リスクの関係を検討した報告では、目標体重 1 kg あたり 30 ~ 35 kcal / 日を摂取している群が最も死亡リスクが低くかった。そこで、現在の『糖尿病診療ガイドライン』や『糖尿病治療ガイド』では、身体活動レベルと病態に関して、軽い労作で目標体重 1 kg あたり 25 ~ 30 kcal / 日、普通の労作で目標体重 1 kg あたり 30 ~ 35 kcal / 日、重い労作で目標体重 1 kg あたり 35 kcal / 日以上というエネルギー係数が設定されている。ただし、高齢糖尿病患者では、身体活動レベルだけで係数を決定するのではなく、体重なども考慮し、フレイル予防が重要である場合には、より大きいエネルギー係数を設定することになっている。
高齢糖尿病患者では、サルコペニア、フレイルが問題になる。糖尿病患者を対象にしたメタアナリシスでは、糖尿病患者におけるサルコペニアの有症率は 18 % と報告されている。シンガポールの糖尿病外来患者を対象にした報告では、 58 % がサルコペニアもしくはプレサルコペニアとされている。実臨床では高齢糖尿病患者の多くがサルコペニアを合併していると考えられる。フレイルはサルコペニアと非常に密接な関係にある。フレイルの有症率についてのメタアナリシスでは半数以上の糖尿病患者がフレイルであると報告されている。
高齢糖尿病患者でサルコペニア、フレイルが多い理由のひとつに、加齢によるたんぱく質同化抵抗性が考えらえている。必須アミノ酸のひとつであるフェニルアラニン内服後の下肢筋肉への取り込み量を若年者と高齢者で比較した報告では、高齢者では若年者に比べ必須アミノ酸の取り込み量が 60 % 減少したことが分かった。必須アミノ酸の取り込み量が減れば、たんぱく質からの筋肉合成能も低下する。高齢者では、たんぱく質合成能低下に身体活動量低下が加わりサルコペニアが増加する。糖尿病患者では、インスリン抵抗性やミトコンドリア機能低下も加わり、さらにサルコペニアのリスクが高まる。
糖尿病患者におけるサルコペニアの合併は、特に低 BMI で、血糖コントロールの不良と関係するという報告もある。また、 BMI が 22.3 未満の糖尿病患者で、 HbA1c 8 % 以上の場合、サルコペニアの合併が多いという報告もある。サルコペニアと血糖コントロール悪化は双方向性の関係と考えられる。
実臨床では高齢で、比較的痩せており、血糖コントロールが悪い患者にサルコペニアが多いことに留意すべきである。また、糖尿病患者のサルコペニア合併は脳卒中をはじめ、腎症など糖尿病に関連する合併症のリスクを上げると報告されている。これにより死亡率も上昇する。
サルコペニア、フレイル予防のため十分なたんぱく質摂取が必要
サルコペニア、フレイルの予防では、たんぱく質摂取量が重要になる。平均年齢 73 歳の地域在住高齢者を対象にたんぱく質摂取量とフレイルの関連を検討した観察研究では、男性女性ともに体重 1 kg あたり 1 g / 日以上のたんぱく質摂取でフレイルのリスクが低いことが示された。たんぱく質のエネルギー比が 13 % 以上になるとフレイルのリスクが低下した。このような結果から、現在の『糖尿病診療ガイドライン』でも高齢糖尿病患者ではたんぱく質摂取不足によるサルコペニア、フレイルに注意することと記載されている。たんぱく質摂取量については、健康な高齢者で目標体重 1 kg あたり 1 ~ 1.2 g / 日、低栄養もしくは低栄養リスクのある場合は目標体重 1 kg あたり 1.2 ~ 1.5 g / 日が推奨されている。
以前から糖尿病患者では腎症予防に対してたんぱく質の摂取制限が有効とされてきた。現在も、臨床的エビデンスはある程度限定されているが、たんぱく質制限は腎症の発症予防に有効な可能性があるとされている。しかし、たんぱく質の過度な制限は、栄養障害やサルコペニア、フレイルのリスクを高める。したがって、実臨床では、生命予後を含めた患者の状況から個別に腎症予防とサルコペニア、フレイル予防のどちらを優先するか判断しなくてはならない。高齢糖尿病患者ではすでに腎機能が低下しているか腎機能低下のリスクが高い場合にたんぱく質制限が必要になる。ただし、たんぱく質制限実施の場合でも 75 歳以上の高齢者では、目標体重 1 kg あたり 0.8 g / 日のたんぱく質摂取が推奨されている。
高齢者ではたんぱく質摂取量だけでなく、総エネルギー摂取量の低下も筋量減少に関連することが示されている。例えば、 65 歳以上の高齢者では体重 1 kg あたり 30 kcal / 日以上のエネルギー摂取は 6 か月後の筋量減少リスク低下と関連することが報告されている。したがって、体重 1 kg あたり 30 kcal / 日以上のエネルギー摂取量を確保することで筋量減少を予防できる可能性がある。さらに、エネルギー摂取量とフレイルの関係を検討し、男女ともに体重 1 kg あたり 35 kcal / 日以上のエネルギー摂取をしている高齢者ではフレイルのリスクが低いとする報告もある。
フレイル予防には食品多様性も重要である。高齢者を糖尿病の有無、食品多様性の高低で 4 群に分類し、フレイルのリスクを比較した報告では、非糖尿病で食品多様性が高い群に対し、非糖尿病で食品多様性が低い群はフレイルのリスクが高かった。糖尿病で食品多様性が高い群は非糖尿病で食品多様性が高い群とフレイルのリスクに有意な差は認めなかったが、糖尿病で食品多様性が低い群は非糖尿病で食品多様性が高い群に対しフレイルのリスクが高かった。日本でも高齢者を対象に食事を野菜、魚中心の健康群、菓子、芋類中心のスナック群、肉、脂肪中心の脂群に分け、生命予後を比較した報告がある。 65 ~ 74 歳では食事内容による生命予後の有意な差はないが、 75 歳以上では食事法によって生命予後に有意な差を認め、健康群で最も生命予後がよいことが明らかになった。野菜摂取量や魚摂取量と生命予後の関連でも 75 歳以上で食事内容が生命予後に有意な影響を及ぼすことが分かっている。 75 歳以上の高齢者では、食事内容が生命予後に及ぼす影響がより大きい可能性がある。
高齢糖尿病患者の低栄養で死亡リスク上昇
食事療法実施の際には、サルコペニア指標、腎機能指標、栄養学的指標をモニタリングする。サルコペニア指標には筋力や歩行速度がある。腎関連指標については e GFR 、シスタチン C 、尿たんぱく質、血清カリウム、血清リン、血中重炭酸イオンなどがある。栄養学的指標では、体重が最も分かりやすいが、体脂肪率、栄養アセスメント、血清アルブミン、血清コレステロールも使われる。栄養アセスメントでは簡易栄養状態評価表( MNA – SF )や主観的包括的栄養評価( SGA )がよく使われている。ただし、これらはリスク評価やスクリーニングを目的としており、低栄養の診断基準ではない。近年、低栄養の新たな診断基準として GLIM ( Global Leadership Initiative on Malnutrition )基準が提唱された。 GLIM 基準はMNA – SF 、 SGA といった妥当性のあるスクリーニングツールで低栄養のリスクありと評価され、意図しない体重減少、 BMI 低値、筋量減少のいずれかに該当する場合、もしくは食事摂取量低下または同化障害、疾患または炎症を有する場合を低栄養と診断する。
スペインで平均 78 歳の高齢 2 型糖尿病入院患者に対して GLIM 基準により低栄養診断を行った報告がある。対象患者の平均 BMI は 28 、 MNA – SF で低栄養のリスクありと評価された患者は約 70 %であった。 GLIM 基準を用いた診断では 50 % 以上の患者が低栄養と診断された。また、 GLIM 基準による低栄養の重症度によって生命予後に有意な差が認められた。この結果は糖尿病患者では栄養状態が重要であることを示唆する。
ライフステージに合わせた糖尿病治療が必要
高齢化が進み、糖尿病罹患歴が長い患者が増えてきた。患者のライフステージに応じた糖尿病治療を行う必要がある。若年者には肥満の是正、厳格な血糖コントロールで糖尿病合併症や心血管病のイベントの抑制が求められる。しかし、高齢でフレイル、サルコペニアを合併している、もしくはそのリスクが高くなってきた場合には、健康的な体重を維持していかなければならない。患者のライフステージに応じて、医師は治療の考え方を変えていく必要がある。
食品交換表の位置づけと個別化に向けての取り組み
関根里恵(東京大学医学部附属病院 病態栄養治療部)
初期の食品交換表はエネルギー摂取量を重視
食品交換表は 1965 年に『糖尿病治療のための食品交換表』として発刊された。当時の日本は高度経済成長期で、生活環境が大きく変わりつつあった。しかし、糖尿病の食事療法実施にあたり、統一した指導法や資材がなかったため、日本糖尿病学会に食品交換表作成委員会が設置され、内容が検討されてきた。
当時は日本人の栄養状態が低下していたため、食品交換表は最低限のエネルギー摂取量を確保しつつ食事療法の自由度を上げるというコンセプトで作成された。食品交換表の食品の成分や分類は、『日本食品標準成分表』に基づいていた。 1965 年の日本人の 1 日のエネルギー摂取量は現在と差はない。しかし、炭水化物摂取量が多く、脂肪摂取量は現在の約 50 % であった。 1960 年の代表的な食事は、どんぶり飯に小さな煮物、漬物といった内容で、たんぱく質が少なく、塩味でご飯を食べる質素なものであった。
1969 年に食品交換表の第 2 版が発刊された。第 2 版には「糖尿病の食事療法として、最も厳格に指示されるものは1日の総エネルギー摂取量である」と記載されている。第 2 版では栄養不足に対応するため、基礎食と付加食という考え方が導入された。基礎食は最低限のエネルギー摂取量として 1,200 kcal / 日を確保するもので、基礎食に嗜好や食習慣に合わせて、表 1 ~ 6 に示された食品の中から自由に選択して付加する。付加食には食事を楽しむ目的もあった。
食事品交換表第5版にて大改訂。患者対象に切り替え、合併症予防、炭水化物摂取割合を重視
1993 年に発刊された第 5 版は、名称が『糖尿病治療のための食品交換表』から『糖尿病食事療法のための食品交換表』に改められ、読者対象も医療スタッフから患者に切り替えられた。版型が B5 サイズになり、イラストややさしい表現が多用されている。日本人で脂肪のエネルギー比が増えてきたことを背景に、第 5 版では基礎食、付加食の考え方が廃止された。表 1 ~表 6 の食品から厳格に選択するよう改め、 1 日 1,400 ~ 1,800 kcal の食事で脂肪のエネルギー比が 20 ~ 25 % になるよう調整された。
また、糖尿病の治療として血管合併症予防が重要視されるようになった。第 5 版では合併症予防の項目が追加され、食塩、コレステロール、飽和脂肪酸の制限、食物繊維の摂取量確保などエネルギー摂取量以外の記載が追加された。 1990 年代の食事は 1960 年代に比べるとご飯が減り、品数が増え、おかずが大きくなった。この頃から食事が欧米化し、脂肪の摂取量が増えている。
2013 年に発刊された最新の第7版では、地中海食、糖質制限食が体重減少に有効であることが報告され、これらの食事療法に対する注目が集まった。第7版では炭水化物のエネルギー比について 60 % 、 55 % 、 50 % と選択を増やしている。
食生活の変化に合わせた食品交換表の改訂が課題
日本糖尿病学会の学術評議員や栄養士を対象に、実臨床での食品交換表の日常診療での使用状況についてアンケート調査を行ったところ、食品交換表を「必ず使用する」「よく使用する」という回答は合わせて 50 %を超えていた。食品交換表の項目別の使用状況について質問したところ、最も多い回答は「表 1 ~表 6 」、次いで「食品交換表について」であった。「食品交換表について」では 1 単位 80 kcal が食べる量のものさしになるとの記載がある。つまり、実臨床では 1 単位 80 kcal の基準と表 1 ~表 6 のグループ分けが広く浸透し、患者にも優先的に指導されていると考えられる。
このアンケートでは食事療法における課題についての質問もあり、「中食、外食、コンビニエンスストアの利用者が増えている」「調理する習慣がない、調理しない、できない」などの回答が多かった。自炊しない患者の増加からも日本人の食事パターンの変化が分かる。総務省による 1989 年と 2018 年の家計調査を比較すると、調理食品への支出が1.7倍に増加し、内食は低下していた。この結果からも調理食品の利用増加がうかがえる。
栄養指導を行う際にも調理食品利用者の増加を実感する。とくにコンビニエンスストアの利用が増えている。食事調査では市販の調理食品を申告されても、管理栄養士はすぐにエネルギー摂取量を把握できない。その場でインターネットを介して調理食品の栄養量を検索しながら摂取量を推定しているというのが現状である。
食品交換表のメリットは、複雑な栄養素の調整を考えなくても食品交換表に従って食事をすることで、治療に適したエネルギーや栄養素を無理なく自然に摂取できることにあり、食品交換表は自炊中心で食材から調理するような患者には使いやすい。しかし、調理食品や外食が中心となる患者では食品交換表を活用した食事療法の実践が困難となっている。さらに、医療従事者からも調理食品や外食に対応した新しい資材を求める声がある。
現在は調理食品や外食が中心の患者へは市販のカロリーガイドブックを使って、栄養指導を行うことが多い。しかし、コンビニエンスストアでは新商品の入れ替わりが激しく、印刷された資材はすぐに古くなってしまう。その点では栄養管理アプリは最新のメニューがリアルタイムに確認できるというメリットがある。
栄養管理アプリでは料理を入力すると、栄養量をリアルタイムに算出できる。また、身長や体重を入力すると目標量が設定され、それぞれの栄養量の充足率を目視で確認できる。さらに、摂取した食事について AI によるアドバイスを受けられる。このように栄養管理アプリは利便性が高いが、実際に使用しているのは若年者が中心である。高齢者の活用は、 IT リテラシーが低くまだまだ困難と思われる。
活用されている栄養管理アプリの多くは健常者を対象に作られている。そのため、糖尿病の食事療法として活用するには時期尚早かもしれない。栄養管理アプリはコンビニエンスストアで販売されているような栄養量が表示されている食事では摂取エネルギーを正確に把握できるが、病院食のような調理をした食事では使用食材の把握が難しく精度が低いことが報告されている。栄養管理アプリの活用にはいくつかの課題がある。
食品交換表活用のニーズは今なお高い。患者の目線に合わせた使いやすさが求められる
前述のアンケート調査によると栄養指導を受ける糖尿病患者の 7 割が 60 歳以上である。 2021 年(令和 3 年)総務省の家計調査をみると、素材となる食料への支出が男女ともに 60 歳以上がもっとも高く、女性では 35 ~ 59 歳も高率であった。この結果から栄養指導を受ける患者で食品交換表活用の対象者は、現在も多く存在していると考えられる。
実臨床では「食品交換表は難しい」と患者から言われることも多い。よりわかりやすい資材を検討することも一案かもしれない。米国では 1 枚のイラストで食品の組み合わせやボリュームが一目でわかる「マイプレート」を活用している。日本向けに「マイプレート」を開発し、食品交換表使用の前に食品の組み合わせやボリュームを習得していただいてから段階的に食品交換表を取り入れる方法も有用ではないか。
初版のコンセプトである「食事療法の自由度を上げる」ことが現在でも受け継がれている。最新の『糖尿病治療ガイド』では、炭水化物のエネルギー比は 40 ~ 60 % と明記されている。食品交換表の配分例で 60 % 、 55 % 、 50 % に加え 40 % を追加すると表 1 や表 3 の選択単位数の幅が広がる。一方で炭水化物のエネルギー比を 40 % に下げると、脂質のエネルギー比は 25 % を超える。このようなエネルギー比では、脂肪酸組成に配慮した食品選択の指導が必要となる。
食事パターンの変化に応じた食事指導の検討が必要
日本人の食事パターンは変化してきた。中食、外食が増え、特にコンビニエンスストアの利用が増加した。料理をしない患者も増えた。このような食事パターンの変化に対応する食事指導が必要である。
糖尿病の食事指導で使われる食品交換表は食材から調理する患者には活用しやすい。現在も食品交換表の利用対象者は一定数存在しており、調理食品や外食に対応した資材の追加、食品交換表をさらに使いやすくするための工夫などが求められる。
食事療法の個別化については、すでに炭水化物のエネルギー比を変えることである程度の食品選択の自由度が得られ対応が可能である。しかし、炭水化物のエネルギー比を下げた場合にたんぱく質や脂肪の摂取をどこまで許容するか、脂肪の質をどのように調整するか個別に考える必要がある。
【質疑応答】
矢部● 脂肪の注入で運動が抑制されるのはどのようなメカニズムか。また、魚油など脂肪の種類によって効果が異なるのか。
中里● 1日のうちで運動時間を一定にした環境でマウスを飼育すると、運動時間になる前からマウスが活性化する。マウスが活性化した状態で消化管に脂肪を注入すると、活性化が抑制される。すなわち運動の動機付けは、末梢の満腹シグナルにより抑制されている可能性がある。脂肪酸の種類については重要な課題であるが、まだそこまで検証していない。
矢部● 肥満でマイクログリアが活性化されるメカニズムはどこまで分かっているのか。
中里● TLR 4 など自然免疫的な炎症のシグナルが脳に伝わり、マイクログリアが活性化されることは明らかになっている。また、慢性的に炎症が続くと、視床下部における新たな血管新生が起き、その周辺に炎症系のグリア細胞が増殖することも分かっている。
矢部● これは脳内に脂肪が蓄積されることがトリガーになる可能性はあるのか。
中里● 末梢からの脂肪によるシグナルが関与していることは分かっているが、実際に脳内で脂肪が増えているかはわからない。
福井● 肥満の原因にストレスや睡眠もあるというお話があった。実臨床では夜勤、深夜勤務、交代勤務の患者の肥満対策で悩んでいる。このような場合の食欲のメカニズムは、どのようになっているのか。
中里● シフトワーカーでも夜勤だけをする場合は、 Bmal 1 などを介して遺伝子が生活リズムに適合するようになる。しかし、 2 、 3 日おきに生活リズムが変わる状態では、ホルモンの遺伝子発現のサイクルも乱れる。これにより、摂食バランスが崩れることが分かっている。
福井● 腸内細菌と食欲の関連については、どの程度分かっているのか。
中里● 腸内細菌が摂食や運動と関連していることが数多く報告されている。私たちも最近、腸内細菌の一部が脂肪吸収を増加させるペプチドを産生していることを明らかにした。
福井● 食餌を制限すると、運動が増加するというお話があった。これはエネルギー摂取量と関係あるのか。
中里● マウスの食餌を 60 % に制限し、 1 日分をまとめて与えると、与えた食餌すべてをまとめて摂る行動が減る。この結果から、 1 日の総エネルギー摂取量が行動に影響すると考えられる。また、ヒトを対象にした報告では 1 日 10 時間以内に食事を行う時間制限食の効果が示されている。さらに、食事のリズムを守ることも重要である。エネルギー摂取量と摂取する時間が行動と関連していると考えている。
矢部● 食事指導の個別化で用いた栄養素の設定は、診療ガイドラインを参考にしているのか。
佐々木● 現在の日本の『糖尿病診療ガイドライン』をはじめ、諸外国の糖尿病の治療ガイドライン、独自に行ったメタアナリシスの収集結果をもとに、日本人の現在の食事方法の平均値や分布を加味して設定した。
矢部●この数値は随時変更されるのか。
佐々木● 新たな診療ガイドラインが作成され次第、プログラムを書き替えている。
矢部● 現在、日本人のたんぱく質のエネルギー比は約 20 % で落ち着いている。諸外国でもたんぱく質のエネルギー比はおおむね 16 % になっている。これはヒトのたんぱく質のエネルギー比はこのレベルが妥当と考えてよいのか。たんぱく質摂取量が減ると、たんぱく質のエネルギー比も減ってくることはあるか。
佐々木● 世界各国でたんぱく質エネルギー比はほぼ 15 ~ 16 % になっている。しかし、たんぱく質を多く摂取するように指導すると、たんぱく質のエネルギー比が 20 % くらいまで上がる。日本人でもたんぱく質のエネルギー比が 16 ~ 17 % になっている場合が多い。最終的には日本人でもたんぱく質のエネルギー比が 15 ~ 18 % で落ち着予測している。高齢者でエネルギー摂取量が下がってきた際に、主食が減らない場合は、たんぱく質の摂取量を維持できる。高齢者には主食を減らさない食事に慣れてもらうことが重要である。また、徐々に主食を十分に確保した食事に変えるような指導も必要と考える。
Web● 患者が実施可能な食事療法の内容と、その達成率を解析した研究はあるのか。
佐々木●今のところない。私たちのデータを使って、この点を解析したいと考えている。そのためには、食事療法で達成するゴールを定めることと、介入前後のデータが必要になる。もしそのようなデータをお持ちの先生がいたら、急ぎ解析して報告していただきたい。
Web●糖尿病の食事療法の個別化では、患者の食習慣に合わせた糖尿病治療にフォーカスし、生活習慣、仕事に合わせた個々の食事指導が必要と考えてよいか。
佐々木● 個々に合わせた食事療法が求められる。東京大学医学部附属病院では至適な栄養素の摂取量を設定し、過不足がある栄養素の摂取を改善するよう指導している。約 3 か月後にその指導が実施できているかチェックし、患者から難しい、合わないと言われた場合は修正する。食事療法開始前に行ったアセスメントのデータで、 2 番目、 3 番目に改善が必要であった栄養素の摂取に重
点を移すなどの調整を行う。このように患者の食習慣に合致し、かつ効果的な方法を選択するよう心掛けている。
Web● 食事療法では達成不可能な目標を提示しても拒絶されてしまい、指導が意味を成さないことも多い。患者自身に目標設定してもらい、その目標の達成度を検討した研究はあるか。
佐々木● 患者にゴールを設定してもらい、実際の食事摂取量の変化を検討した報告は数多くある。
福井● 患者が実際に摂取しているエネルギーや栄養素の量を把握することが重要というお話があった。その際にスマートフォンのアプリの活用についてはどのように考えるか。
佐々木● スマートフォンのアプリは有用な補助道具になる。しかし、記録できるのはその日、その瞬間のデータに限られ、長期間の習慣は把握できない。したがって、スマートフォンのアプリで食習慣を把握することは難しい。また、スマートフォンのアプリの有用性を検討したメタアナリシスでは、相当な過少申告が起きていると報告されている。その理由は食事の写真を撮る前に食べてしまうためと、記録したくない食事は撮影しないためとされている。その一方で、スマートフォンのアプリは患者がビジュアルとして見られるため、教育効果が大きい。したがって、評価と指導を作るためには佐々木式食習慣アセスメント( BDHQ )や食物摂取頻度調査( FFQ )を用い、患者には家庭血圧計によるモニタリングのようにスマートフォンアプリを使ってもらう方法がよいと考える。
福井● 低炭水化物食、低脂肪食、地中海食には HbA1c 低下効果に有意差はないというお話があった。しかし、糖尿病治療は血糖を下げるだけではなく、合併症予防や生存率向上も重要である。食事療法のこのようなアウトカムに対する効果について明らかになっているか。
佐々木● 合併症予防や生存率向上についての明確なエビデンスはない。しかし、高齢糖尿病患者が増え、肥満よりも痩せで死亡率が高くなるという報告が数多く報告されている。腎症、虚血性心疾患など合併症もモニタリングしなくてはいけない。このため、糖尿病食事療法はエネルギー摂取量重視型から栄養素全体を重視する方法にシフトする必要がある。
福井● 日本人の食事療法についてのデータが少ないのは、食の多様性が高いためか。
佐々木● ブラジルは世界中から移民が来ており、多様な食生活があるにもかかわらず、食事療法の研究が行われている。日本人でできないのはおかしいと言われたことがある。食事療法の研究に真剣に取り組む必要がある。そのためには、リサーチャーを育て、ハイレベルの試験を行う必要がある。
矢部● 試験終了後の食事療法の継続率についての報告はあるか。
窪田● 食事療法の報告は継続できた患者のみが対象とされ、試験終了後の継続率を検討したものはおそらくない。
矢部● 『糖尿病診療ガイドライン』のエネルギー指示量が変わったことを知らない管理栄養士も多い。患者が高齢になってもギアチェンジが必要と考えない要因に医療従事者の意識の問題はあるのか。
窪田● 若年者では血糖コントロールを目指したほうがよい。ただし、高齢者では HbA1c の目標値も高くなってくる。食事療法で HbA1c が下がると、患者も HbA1c 低下を目指すようになり、医療従事者もそれをゴールにしてしまう。しかし、高齢糖尿病患者では、 HbA1c 低下以外の要素も重要になる。そのような目標の変化を意識しないと、いつまでも HbA1c 改善のための食事療法を続けてしまうことになる。
フロア● 時間制限食については、絶食時間が重要という報告が増えてきた。そのメカニズムはどのように考えられているのか。
窪田● メカニズムはおそらく多岐にわたると考えられる。絶食時間が長くなると血中インスリンレベルが下がり、相対的にホルモンの感受性が上がる可能性がある。逆に絶食時間が短いと常にインスリンシグナルが入っている状態になり、 G タンパク質共役型受容体などで有名だが、 desensitization されている可能性もある。また細胞内のインスリンシグナル伝達タンパク質であるインスリン受容体基質( IRS )のうち、特に IRS – 2 はインスリンよってダウンレギュレーションされることが知られており、受容体・受容体基質、 2 つの段階でインスリン感受性が変化している可能性が考えられる。
福井● BMI が高くてもフレイルのリスクが上がるというお話があった。これはサルコペニアではなく、認知症などが関連しているのか。
勝川● 未発表の成績なので詳しくお話ししなかったが、医療費レセプトの ICD – 10 コードで易疲労感、認知機能、身体的障害などの組み合わせからフレイルを評価する報告が増えている。こうした方法で評価したフレイル指標は、日本人の高齢者集団で死亡や介護施設利用と関連するので、ある程度、妥当性がある指標と言える。
現在,多人数の集団でこうした評価を行っており、本日は、肥満糖尿病患者で減量がフレイルリスクを低下させることを述べた。定義が明確でないが、サルコペニア肥満という概念があり、肥満とフレイルの関連はこうした文脈でとらえるべきかもしれない。
福井● エネルギー消費量を規定するファクターに体重、年齢、フレイルの有無があるというお話があった。 HbA1c 、性別、糖尿病の薬剤も考慮してエネルギー指示量を決めた方がよいのか。
勝川● 合併症も含め、糖尿病の病態によるエネルギー必要量については、データがまとまるのは、もう少し先になるのではないか。
矢部● HbA1c の目標を決めてから、体重の目標を決める方法で注意する点は何かあるか。
勝川● 食食事療法の効果はエネルギー摂取量だけで決まるものではなく、食品の選択も重要である。例えば、飽和脂肪酸を多く含む食品、食物繊維が少ない食品、単純糖質を多く含む食品などはエネルギー摂取量が問題がなくても食事療法として好ましいものとは言えないだろう。
Web● HbA1c の目標を設定して、体重の目標を決める際には、薬物治療の効果はどの程度考慮するのか。
勝川● 体重 1 % で、 HbA1c 0.1 % 低下というデータは、食事療法や肥満治療薬の介入研究の減量効果だけで評価されている。血糖コントロールが悪い患者では、目標とする HbA1c に対する減量目標の達成、維持が難しくなる。開始時の HbA1c で、食事療法だけでいいか、薬物療法が必要なのか、ある程度判断できるのではないか。
矢部● 若年時には BMI 18 で、脂質の値は正常であったが、現在は BMI 22 で、総コレステロールが 280 mg / dl という高コレステロール血症の患者がいたとする。このような患者の場合、栄養学的にバランスがとれた時期をゴールとする指導も必要と考えるが、ご意見を伺いたい。
勝川● LDL コレステロールは若年男性では BMI との関連が強い。しかし、加齢に伴い BMI が低い者でも LDL コレステロールが上昇するので、中高年男性では LDL コレステロールと肥満は関連しなくなる。また、女性では、元々肥満との関連がなく、閉経前後で LDL コレステロールが上昇しやすい。さらに、ベースラインの BMI 別に体重変化と LDL コレステロールの関連を検討すると、 BMI が低い方が体重変化による LDL コレステロールの変化が大きい。 LDL コレステロールの食事指導では、中性脂肪ほどは体重コントロールを強調しないが、強いて言えば低 BMI で体重コントロールはより有効かもしれない。
矢部● 若年で低 BMI の男性で LDL コレステロールが上昇する理由は分かっているのか。
勝川● 疫学研究の成績で、メカニズムは不明である。
福井● 糖尿病患者に適切なエネルギーの指導をする際には、エネルギーの消費量をできるだけ正確に把握することが重要になる。エネルギー消費量を規定するファクターは数多く存在する。これらのファクターを入力すれば、エネルギー消費量が推定できるアルゴリズムが構築されればよいと考える。このようなアルゴリズムが開発される予定はあるのか。
勝川● 健常者に関して、今後検討を進めていきたい。糖尿病患者に関しても考えていきたい。
福井● 食品の多様性が高いことがサルコペニアのリスクを下げるというお話があった。具体的にどのような食品がサルコペニアのリスクを下げるのか。
梅垣● フレイルやサルコペニアの予防と栄養の関係についてのデータは蓄積されてきた。フレイル予防に繋がる食品や栄養素は多岐に渡る。まだ、エビデンスが完全に確立したわけではないが、ビタミン D を中心としたビタミン、抗酸化物質など多くの栄養素や食品にサルコペニア、フレイルの予防効果がある可能性が指摘されている。ただし、エネルギー量やたんぱく質の摂取だけなく、多様な食品を摂取することも重要と考えられる。
福井● たんぱく質の摂取量は実体重 1 kg あたりで設定するべきか、目標体重 1 kg あたりで設定するべきかという議論がある。どのように考えるか。
梅垣● 肥満、痩せともにフレイルのリスクになるというお話があった。日本では欧米と異なり、痩せが問題になることが多い。このような場合には目標体重 1 kg あたりのたんぱく質摂取量設定が望ましいと思われる。しかし、目標体重 1 kg あたりのたんぱく質摂取量の実現が難しい場合は、まずは実体重 1 kg あたりのたんぱく質摂取量を指導し、徐々に増やして目標体重 1 kg あたりのたんぱく質摂取量を目指す方法がよいと考える。
Web● BMI が上昇した高齢患者で、その要因が身長が減ったためと明確で、体重増加を伴わない場合は、 BMI の上昇は問題としなくてもよいか。
梅垣● 計算上の BMI が高めになった場合、その要因が身長短縮と明確であれば、体重減少の指導は慎重にしたほうがよいと考える。
Web● 現在は、大豆由来のたんぱく質飲料、牛乳由来のたんぱく質飲料も手軽に入手できるようになった。高齢者が摂取するたんぱく質は動物性と植物性どちらがよいのか。
梅垣● 筋肉合成能は動物性のたんぱく質で高くなるというデータが数多く出ている。しかし、近年、必ずしもそうではないというデータも増えてきた。動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質のどちらが望ましいかという点は難しい問題である。特に現在の日本の高齢者では動物性のたんぱく質の摂取のみを推奨することは困難な部分がある。名古屋大学医学部附属病院では、動物
性のたんぱく質にこだわらず、大豆類など植物性も含めたんぱく質摂取増加を目指している。また、アミノ酸なども含むサプリメントは、高齢者や場合によっては要介護者でも運動療法などとの組み合わせで筋肉量を増やせるというエビデンスも出てきた。アミノ酸のサプリメントも必要に応じて有効に活用していくとよい。
福井● 食品交換表は表 1 ~表 6 の概念を中食でも外食に取り入れることが重要と考える。ただし、今の若年者では素材から食事を作ることが少ない。若年者に対し、食品交換表をどのように活用していけばよいのか。食品交換表で変える必要がある部分はあるか。
関根● 若年者はスマートフォンを常時持ち歩いているので、書籍という形態そのものが対象者を狭めてしまう可能性がある。まずは、媒体の形を考えていく必要がある。また、料理をしたことのない方が増えてきた。食品交換表でも弁当や総菜類に含まれる摂取エネルギーや栄養バランスを確認できる形になれば、活用が増えると考える。
福井● 『日本食品標準成分表』が八訂になって、成分が変わった。これをどのように食品交換表に反映していくのか。
関根● その点は今まさに検討しているところである。七訂と八訂ではエネルギーの考え方が変わり、そのまま比較することができない。次の改定にどこまで盛り込むのか現時点では詰められていない。
福井● この件に関しては、 2023 年 5 月の日本糖尿病学会年次学術集会のシンポジウムでも議論されると聞いている。
矢部● 食品交換表は実臨床で使われるより、医学部の学生や管理栄養士を目指す学生の教科書として使われることが多い。実際の患者が使う率は極めて低いのではないか。歴史的に食品交換表を活用して、厳格に食事療法を行っている患者は血糖管理状況がよいとわかっている。しかし、時代が変わり、活用が難しくなっている。糖尿病協会が出しているリーフレットのような、簡単な新しい資材が必要ではないか。また、アプリも個別化という点では一助になると考える。ただし、そもそも食に関して全く関心のない層が一定数存在する。このような患者に対して、どのようなアプローチをすればよいのか。
関根● 食に興味がない方は、自分自身にもあまり興味がない可能性がある。いきなり食事療法を指導するより、治療による身体や血糖値の変化を患者と共有し、患者が変化に興味を持ち始めた段階で、食事の話をしていく形がよいと考える。