
栄養 Vol.39 No.1
2024 MAR.
Special topics 特集:悪液質と栄養
【総説】 悪液質のメカニズムと栄養ケア -がん悪液質を中心に-
森 直治
愛知医科大学医学部大学院医学研究科 緩和・支持医療学、愛知医科大学病院 緩和ケアセンター/ 栄養治療支援センター
悪液質(カヘキシア)は、がんや慢性心不全、慢性腎不全、自己免疫疾患などの慢性疾患を背景に持ち、慢性的な炎症を伴う低栄養状態である。基礎疾患が悪化し、代謝異常が高度になると、栄養療法に対する抵抗性も高くなるため、栄養状態が悪化する前の段階での栄養サポートが重要である。しかし、日常診療では頻繁に悪液質に遭遇するにもかかわらず、医療従事者の認識は依然として低く、悪液質との診断がなされずに栄養状態が悪化し、身体機能や生活の質の低下を招く症例が多い。21世紀に入り、悪液質の定義が明確化され、悪液質が医療のアウトカムや生活の質に与える影響の理解が深まっている。進行した悪液質患者で栄養状態が一度悪化し骨格筋量が低下すると、それを根本的に改善する薬剤や対策はまだ存在しない。早期栄養介入や集学的なケアが基本戦略であり、必要栄養量の充足と同化抵抗性の要因を最小限に抑えることが重要である。
KEY WORDS ▶︎ カヘキシア、不可逆的悪液質、前悪液質、マルチモーダルケア、食の苦悩、サルコペニア、慢性疾患