
栄養 Vol.41 No.2
2026 July
Special topics 特集:IBDと栄養
【総説】 IBDと栄養療法
能丸遼平, 芦塚伸也, 平井郁仁
福岡大学医学部消化器内科学講座
炎症性腸疾患(IBD)における栄養療法は, 単なる低栄養の補正やエネルギー補給ではなく, 食事性抗原の低減や腸内細菌叢の攪乱(ディスバイオーシス)の改善などの機序で主にクローン病(CD)の治療として本邦で広く行われてきた. 各種の生物学的製剤や分子標的薬の登場で栄養療法の意義が疑問視されていたが, 近年では欧米でも腸内細菌叢, 粘膜免疫, 腸管バリア機能に対して栄養療法が好影響を及ぼすことが明らかとなり, 成分栄養(EN), 完全経腸栄養(EEN), 部分経腸栄養(PEN), Crohn’s Disease Exclusion Diet(CDED)などの栄養介入が見直されている. また, 超加工食品(UPF)や食品添加物の腸管機能への関与が示唆され, そのリスクについて注意喚起がなされている. また, Fermentable(発酵性), Oligosaccharides(オリゴ糖), Disaccharides(二糖類), Monosaccharides(単糖類), およびPolyols(ポリオール)の頭文字をとったFODMAPを意識した低FODMAP食やprecision nutritionの概念も注目されている. 本稿では, IBD診療における栄養療法のエビデンスを整理し, 病態制御および長期予後改善に向けた栄養戦略の役割と今後の展望について概説する.
KEY WORDS ▶︎ 炎症性腸疾患, クローン病, 潰瘍性大腸炎, 栄養療法, 経腸栄養