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栄養 Vol.39 No.4
2025 FEB

Essay 編集委員エッセイ

私の栄養研究を振り返って -医食同源

乾 明夫
鹿児島大学大学院 漢方薬理学共同研究講座
食欲調節には脳・消化管ペプチドが重要であり、食欲を促進する空腹系と食欲を抑制する満腹系がある。健康長寿に関わるカロリー制限で増加するのは空腹系であり、グレリン-神経ペプチドY(NPY)-オレキシンがその根幹をなしている。 進化の長い歴史の中では、この空腹系は種の維持に深く関わってきたと考えられ、また健康長寿をもたらすカロリー制限の根幹をなしている。グレリン-神経ペプチドY(NPY)空腹系経路には、サーチュイン1(Sirt1)が存在し、健康寿命延長作用に深く関わっている。
この空腹系に作用するのが漢方薬補剤の六君子湯、人参養栄湯である。その構成生薬の人参とNPYの関係を検討し始めてから、あっという間に40年が経過した。大学院生の時代や助手になりたての頃の研究ノートには、豚の海馬を使ったNPYレセプターアッセイのデータが眠っていた。
補剤は食欲不振など「脾虚」の治療薬として用いられ、医食同源として歴史上の役割を担ってきた。現代医学の視点からは、カロリー制限模倣薬としての位置づけが伺える。フレイルや加齢性疾患に対し、「脾虚」を越え、抗老化薬(Geroprotector)として治療の一翼を担うことが期待される。今後の研究の夢でもある。