
Special topics 特集:透析と栄養
【総説】 透析患者と栄養 ~薬物療法とサプリメント・健康食品~
2)大阪暁明館病院薬剤科
高齢化の著しい日本の透析患者は透析により大量の栄養素が失われることなどにより、PEW(protein-energy wasting)によってフレイル・サルコペニアになりやすい。2020年以降、わが国では透析時静脈栄養が活用できるようになったが、有用性に関しての報告は一致しない。ω3脂肪酸の摂取はメタ解析により高齢のサルコペニア透析患者の筋肉量の有意な増加と歩行速度の著明な改善に寄与することが示され、経口栄養補助食品や筋肉増強サプリメントのクレアチンの摂取で筋肉量が増加、あるいは改善したという報告も散見される。
透析患者への水溶性マルチビタミン投与によって生命予後の改善を示唆する報告は複数あり、米国では透析患者用マルチビタミンが利用可能である。これらの有効性の理由として透析による水溶性ビタミンの喪失、腸内細菌叢の多様性の喪失だけでなく、透析患者の心血管病変のリスクであるホモシステインが葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の欠乏によって蓄積するからと考えられてきた。しかし2006年に報告されたエビデンスレベルの高い複数の報告でビタミンB群の投与によってホモシステイン濃度は低下するものの、心血管発症リスクを低減できないことが明らかになった。そのうち1報では心血管疾患の発症リスクを低減させないどころか、3剤併用は悪化傾向を示した。現在も高ホモシステイン血症が透析患者の信頼性の高い心血管系リスクマーカーであるかについては不明である。脂溶性のビタミンAは透析患者の血清濃度はもともと高く、しばしば過剰症をきたすことがあるため投与すべきではない。
血清Mg濃度が基準値の2.6mg/dLを超えると高マグネシウム血症と考える医療者は多いが、透析患者では3.1mg/dL以上の高めにコントロールすると高リン血症による心血管死亡リスクが低下することが明らかになっている。透析患者では亜鉛欠乏による味覚異常、創傷治癒遅延、貧血はよく見られ、亜鉛含有製剤が投与されるが、酢酸亜鉛投与による銅欠乏症が散見されるので要注意である。抗酸化作用を示すグルタチオンペルオキシダーゼの必須構成成分であるセレンの欠乏も透析患者で見られることがある。
L-カルニチンは血液透析によって極めて除去されやすいため欠乏しやすいが、カルニチンは腸内細菌によってトリメチルアミンになり、さらに肝臓で動脈硬化を進行させる強力な尿毒素のトリメチルアミン-N-オキシドになることが明らかになった。L-カルニチン錠の吸収率は不良で、吸収されなかったカルニチンは尿毒素の原料になるため、欠乏症に対しては静注製剤を投与すべきである。
KEY WORDS ▶︎ 透析患者、PEW(protein-energy wasting)、透析時静脈栄養 IDPN(intradialytic parenteral nutrition)、クレアチン、ビタミン、L-カルニチン