第26回日本褥瘡学会学術集会 Report :シンポジウム7◉日本栄養・嚥下理学療法学会合同企画_栄養のinとout(use)のバランスから褥瘡ケアを考える
2025.07.28栄養剤・流動食 , 栄養素東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻、日本栄養・嚥下理学療法学会理事長の内田 学先生は日本栄養・嚥下理学療法学会の概要を紹介した。学会の目的については「骨格筋や運動機能、口腔機能の障害に対して理学療法を行い、死亡や要介護状態を防ぐこと」とした。その上で、嚥下障害は褥瘡とも関連しているため、日本褥瘡学会とのコラボレーションを進め、活動を広げていきたいと将来の展望を語った。
田村外科病院リハビリテーション科の高橋浩平先生は褥瘡改善には攻めの栄養療法、攻めのリハビリテーションが有効だが、炎症が強い場合などは注意が必要であると指摘した。攻めの栄養療法・リハビリテーションと守りの栄養療法・リハビリテーションの見極めが必要で、そのためには管理栄養士や医師、看護師などの多職種と理学療法士の情報共有が重要とした。
名古屋文理大学健康生活学部健康栄養学科の岡田有司先生は、褥瘡患者でもinとoutのバランスからエネルギー必要量を推定し、腸管機能を考慮した栄養投与ルートの決定が必要とした。また、お粥のゼリー化や体位保持能力の向上、食事姿勢の調整、患者の体に触れて筋肉を評価することなど栄養管理のポイントを紹介した。
【株式会社ジェフコーポレーション「栄養 NEWS ONLINE 」編集部】
日本栄養・嚥下理学療法学会の紹介
演者:内田 学(東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻、日本栄養・嚥下理学療法学会理事長)
◆嚥下障害は全身のフレイルや褥瘡とも関連
日本栄養・嚥下理学療法学会は「低栄養を背景にしたサルコペニア・フレイルに対する骨格筋機能障害、運動機能障害、オーラルフレイルなどの口腔機能障害を背景にした嚥下障害、顎関節機能障害に対する理学療法を展開し、社会的な課題である死亡、要介護状態から脱却を目指すこと」を目標としている。
高齢者をプレフレイル群とフレイル群に分け、死亡を比較した報告では、男女ともにフレイル群で死亡が多いとされている。また、サルコペニアの有無で要介護状態の発生を比較した報告では、サルコペニア群は非サルコペニア群に比べ、要介護状態発生が多いことが分かった。これらの結果は、フレイルやサルコペニアになる手前の段階で介入する必要があることを示唆する。
オーラルフレイルも全身のフレイルと関連している。口腔機能障害はオーラルフレイルのほか、各種神経障害や運動器障害によっても発生する。これにより引き起こされる嚥下障害や顎関節機能障害に理学療法で対応すれば、低栄養状態からの脱却が期待できる。食事摂食量が増えなければ、エネルギーや栄養が不足する。嚥下状態の改善には、運動が重要であることも明らかになってきた。そこで、本学会は、理学療法の観点から嚥下障害に関わりたいと考えている。
本学会のルーツは2015年に設置された日本理学療法士協会栄養・嚥下理学療法部門にある。2017年に日本栄養・嚥下理学療法研究会となり、2023年には一般社団法人となって、名称を日本栄養・嚥下理学療法学会に改めた。会員数はまだ少ないが、理学療法士や作業療法士の所属が多い日本褥瘡学会とも連携して、活動を広げていきたい。
褥瘡と嚥下機能の関連については、特別養護老人ホーム入所者を対象にした研究報告があり、嚥下機能、運動機能、褥瘡をそれぞれ評価し、褥瘡発生に関連する因子を検討した。その結果、Hoffer座位能力分類、ブレーデンスケール、体重変動率、移乗動作の介助量に加え、嚥下に関連する改訂水飲みテスト(MWST)やFOIS (Functional Oral Intake Scale)などの因子も抽出された。つまり、嚥下障害は褥瘡と関連している。臨床では褥瘡と嚥下障害を同時に評価する必要がある。
◆多職種によるリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の三位一体の取り組みが必要
令和6年度の診療報酬改定ではリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の三位一体の取り組みが推進された。リハビリテーションには理学療法士や作業療法士、栄養管理には管理栄養士、口腔管理には歯科医師や歯科衛生士、言語聴覚士とそれぞれの専門職がいる。本学会では、これらの職種が連携して介入することで、より大きな効果が得られることを発信していきたい。
日本理学療法学会連合は日本運動器理学療法学会や日本がん・リンパ浮腫理学療法学会など分野ごとの理学療法に関連した学会で構成されている。このうち日本栄養・嚥下理学療法学会はとくに嚥下機能に着目した介入について研究している。
嚥下理学療法領域では日本栄養・嚥下理学療法学会の他にも、日本嚥下医学会や日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本顎関節学会などが活動している。嚥下機能改善には栄養管理も重要である。栄養管理領域を対象にした学会として、日本栄養治療学会(JSPEN)、日本病態栄養学会、日本リハビリテーション栄養学会が存在している。本学会は、これらの学会が重複する領域に位置する。
今後は栄養管理や嚥下理学療法の観点から日本褥瘡学会とのコラボレーションも進める必要があると考えている。本シンポジウムのテーマである栄養のinとoutという観点では、理学療法はoutを担う。本学会ではoutの部分を科学的に考え、専門性の追求に取り組んでいきたい。
◆2025年9月に第11回日本栄養・嚥下理学療法学会学術大会開催
本学会では2025年9月6日と7日、東京都八王子市の「東京たま未来メッセ」を会場に第11回日本栄養・嚥下理学療法学会学術大会を開催する。テーマは「Fresh ~栄養嚥下理学療法の個性~」である。ここで褥瘡に関する演題も発表していただきたいと考えている。
同時にオンデマンドで日本栄養・嚥下理学療法学会サテライトカンファレンスも開催する予定である。多くの皆様にふるってご参加いただきたい。
栄養理学療法の視点から考える褥瘡ケア
演者:高橋浩平(田村外科病院リハビリテーション科)
◆管理栄養士と理学療法士の情報共有に基づく介入が重要
リハビリテーション栄養は障害者やフレイル高齢者に対して、多職種連携でリハビリテーションおよび栄養管理の適切な介入を考えていく。この中で理学療法士が行う介入が栄養理学療法である。栄養理学療法ではinとoutを考慮することが重要である。一般にinの部分は管理栄養士や看護師が評価している。栄養摂取状況や体重、栄養状態を評価したうえで、栄養ケアのゴールを設定し、ケアプランが立案される。栄養理学療法は管理栄養士などの多職種が評価、立案した情報を基に理学療法を行う。
近年は栄養管理のアウトカムとして筋肉量、身体機能が重要視されており、理学療法士はこれらの情報を管理栄養士に伝えることを求められるようになった。また、エネルギー必要量を考えるうえで、活動量や筋緊張などは重要な指標となる。これらの情報も理学療法士から管理栄養士に伝える必要がある。さらに、理学療法のゴールやプランを管理栄養士に伝え、これに基づいた栄養管理を立案してもらうことも重要である。
つまり、栄養理学療法では情報共有が鍵になる。栄養理学療法の定義は「対象者の機能・活動・参加、QOLを最大限高めるために栄養障害、サルコペニア、栄養摂取の過不足を把握した上で、状況に適したゴールを設定し理学療法を実践するものである。それにあたって、理学療法士は管理栄養士など多職種と栄養評価や理学療法評価を共有して、活動量、筋緊張、不随意運動などを考慮した栄養管理や栄養理学療法を検討する」とされている。したがって、栄養管理を把握しない理学療法や理学療法を把握しない栄養管理、病態を把握しない栄養理学療法は望ましくない。
◆褥瘡改善には攻めの栄養管理が有用だが、注意も必要
褥瘡改善のための栄養療法ではエネルギーやたんぱく質の十分な投与が重要とされている。JSPENの『静脈経腸栄養ガイドライン 第3版』には、エネルギー必要量の推奨が記されている。褥瘡がある場合は体重1kgあたり30~35kcal/日とされ、褥瘡がある場合は、通常より多いエネルギー量投与が推奨されている。また、基礎代謝量にストレス係数として1.3~1.5倍を加えたエネルギー必要量を設定することも推奨されている。たんぱく質については、体重1kgあたり1.2~1.5g/日の高たんぱく質食の摂取で褥瘡の治癒が促進すると記載されている。
このような積極的な栄養療法は攻めの栄養療法とも呼ばれている。攻めの栄養療法は低栄養やサルコペニアを改善するために提唱され、体重や筋肉量を意図的に増加する栄養管理を行う。エネルギー必要量をエネルギー消費量より多くする考え方は褥瘡ケアでも重要である。このために、食品強化やたんぱく質、エネルギーの補給が行われる。
ただし、攻めの栄養療法の注意点として、運動療法を併用しない場合、筋肉ではなく脂肪が増えて体重が増加する可能性がある。そこで、攻めの栄養療法には運動療法、とくにレジスタンストレーニングの併用が欠かせない。攻めの栄養療法実施時には、高血糖や脂肪肝、腎障害などのモニタリングも求められる。
また、高たんぱく質食はとくに加齢性サルコペニアを合併している場合は過剰投与にならないよう注意が必要である。
◆高齢者ではオートファジー機能不全でサルコペニアが起きる
加齢性サルコペニアの原因の1つにオートファジーの機能不全が挙げられる。オートファジーは自食作用とも呼ばれ、細胞の構成成分を分解するシステムである。高齢者の筋肉には古いたんぱく質や変性ミトコンドリアが蓄積されている。オートファジーにはこれらを分解し、アミノ酸を再利用する機能がある。
オートファジーの機能不全が起きると、筋肉中に変性たんぱく質などが蓄積し、筋肉の質(つまり筋力)が低下する。加齢性サルコペニアでは筋肉量も減るが、筋肉の質も悪くなる。この状態でたんぱく質を過剰に投与すると、筋肉では変性たんぱく質がさらに増加し、筋力がより低下することも懸念される。また、加齢ラットでは変性タンパク質が蓄積しており、2週間後肢を無荷重状態にすると、筋が萎縮するとともに、変性タンパク質の蓄積が増加するといった報告がある。つまり、加齢と廃用の状態ではオートファジー機能不全により筋力がさらに低下しやすくなる。オートファジーの機能不全改善には運動が有効とされている。運動はオートファジーを活性化し、筋肉中の変性たんぱく質分解が進む。この点からも、たんぱく質の適切な投与と運動の併用が重要となる。
◆十分なたんぱく質投与に運動を併用
褥瘡患者は高齢、寝たきり、低活動が多い。廃用性筋萎縮やサルコペニアの状態で、オートファジーは機能不全になっている可能性がある。その状況で高エネルギー、高たんぱく質を投与すると、体脂肪の増加や筋力の低下により、ADL低下、介助量増加、褥瘡悪化をもたらす可能性がある。
褥瘡改善には十分なエネルギーとたんぱく質の投与が必要となるが、過剰栄養を防ぐためには活動量を考慮することと運動、とくに筋トレの併用が重要である。つまりinとout(use)をみながら投与量を調整することが求められる。
◆運動は直接的な褥瘡改善効果を持つ
運動は身体の循環血流量を増加させ、たんぱく質の同化を促進する。オートファジーが活性化されて、たんぱく質の合成と分解が進み、炎症が抑制される。血管新生促進、ミトコンドリア増加、インスリン抵抗性改善などの作用もある。これらは褥瘡の改善にも有効と考えられる。
マウスにステージ2の褥瘡を誘発させ、運動の効果を検討した報告がある。運動は30分間の全身振動運動を週5回行った。運動実施群は運動非実施群に比べ、炎症軽減、コラーゲン沈着、創傷治癒が促進されていた。運動が可能である褥瘡患者の場合、褥瘡部への負担に注意しながら筋トレや有酸素運動を行うことによって、褥瘡改善効果が期待できると考えられる。
『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版』によると、褥瘡改善に電気刺激療法は有効とされ、推奨されている。とくに筋肉量を増やす神経筋電気刺激が有用と考えられる。ICUの重症患者を対象に1日1回25分間の神経筋電気刺激を週6回行い、その効果を検討した報告がある。その結果、神経筋電気刺激実施群の褥瘡発生率は5.3%だが、神経筋電気刺激非実施群では35.6%となり、神経筋電気刺激実施群で有意に褥瘡発生が減少した。また、ICU滞在日数も神経筋電気刺激実施群で有意に短かった。この報告では、褥瘡予防のメカニズムについて、筋収縮により循血流量増加、筋肥大、抗炎症、血管新生が得られたためとしている。運動ができない褥瘡患者に対しては、このような介入の実施が褥瘡改善に有効である。
褥瘡患者に対する理学療法では早期離床、ポジショニング・体位変化・動作練習、電気刺激療法などの物理療法、筋力トレーニング、機能トレーニングが有用と考えられる。栄養管理と運動の併用で、血流や筋肉量が増え、ADLの改善によりQOLが向上することが期待される。褥瘡とADLの改善は一体のものである。理学療法士は運動が褥瘡改善にも有効であるとの視点を持つべきである。
◆異化亢進時には守りの栄養管理、リハビリテーションを実施
攻めの栄養療法をする上では高度侵襲下、がんの終末期、長期飢餓でリフィーディング症候群の高リスク患者にも注意が必要である。これらのケースには攻めの栄養療法ではなく、維持的な栄養管理が望ましい。
侵襲とは生体の恒常性を乱す刺激であり、その原因として感染症、肺炎、骨折、手術などがある。高度侵襲下では糖新生が亢進し、筋肉が分解される。このような筋肉の分解を異化と呼ぶ。異化が進む状態では多くのエネルギー投与をしても、筋肉のたんぱく質分解を抑制できないとされている。過剰なエネルギー投与により高血糖を招いたり、エネルギー消費量がより代謝量が上昇したりする。このような栄養ストレスにより、筋たんぱく質分解が促進させる場合もある。また、腸管浮腫が起きている場合は、下痢や嘔吐などの消化吸収障害が生じやすい。
たとえばCRP10mg/dl以上と高度の炎症の場合は、異化が亢進している時期と考え、守りの栄養療法を実施することが望ましい。栄養状態の維持を目標とし、エネルギー消費量よりも少なめに投与する。筋肉量が減少する時期であり、リハビリテーションも高負荷な運動ではなく、2~3METs以下の低負荷の運動に留める。
CRPが3mg/dl程度まで低下すると、炎症や代謝も落ち着いていると判断できる。この時期には同化促進、筋合成促進も期待できる。そこで、攻めの栄養療法、攻めのリハビリテーションに切り替える。栄養管理は体重増加を目標として、体重1kgあたり25~35kcal/日のエネルギーを投与する。リハビリテーションでは積極的にレジスタンストレーニングや持久力増強運動などを実施する。
急性疾患などの侵襲と褥瘡が合併している場合、守りの時期か攻めの時期かを考慮しながら栄養療法やリハビリテーションを行う。ここでも多職種でinとoutの情報を共有することが重要となる。たとえば、守りの栄養管理時期に攻めのリハビリテーションを行ったり、逆に攻めの栄養療法を行っているにもかかわらず守りのリハビリテーションを実施したりすると、低栄養や過栄養につながる可能性がある。運動療法の併用や身体活動量、病態を把握しながら栄養療法を進めることが求められる。
しかし、臨床現場では褥瘡患者に対する栄養管理は不十分であることが少なくない。褥瘡患者に対するエネルギー・たんぱく質強化食実施率は18.3%、経口補助食品実施率は8.5%、栄養スクリーニング実施率は39.4%にすぎないという報告がある。医療従事者は、褥瘡患者に対する栄養管理の重要性についてさらに認識を高めなくてはならない。
◆守りの栄養管理と攻めの栄養管理を使い分け、褥瘡が改善
当院で、80歳代男性、第12胸椎の圧迫骨折あり、褥瘡と化膿性椎間板炎が併存していた患者を経験した。BMIは23.5で、痩せでも肥満でもなかった。自宅で転倒、歩行困難となり、2週間後の病院受診で骨折を認めた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性で、自宅療養となった。COVID-19から回復後、当院を受診した。その際、仙骨部に褥瘡を認めたため入院となった。骨折前は右不全片麻痺があったが、伝い歩きが可能であった。転倒による骨折から約1ヶ月間、自宅で寝たきり状態であったという。
筋肉量は下腿周囲長の評価で、25.2cm。食事摂取量の低下が2週間以上継続。CRPは19.8mg/dLと急性炎症状態であった。この結果から、筋肉量低下、食事摂取量低下、急性炎症ありと判断し、Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)基準による低栄養と認めた。握力による筋力の評価は11kgであった。機能は立位、歩行とも不可で、筋肉量低下、筋力低下、機能低下がありサルコペニアと認めた。
エネルギー消費量は1,565~1,806 kcal/日と推算した。侵襲による異化期で守りの栄養療法の時期と考え、エネルギー必要量は1,200 kcal/日と設定した。しかし、エネルギー摂取量は約700 kcal/日であったため、エネルギー充足を目的として末梢静脈栄養を開始した。理学療法の当面のゴールは機能維持とし、車椅子乗車や寝返り自立など低負荷の運動療法を行った。
末梢静脈栄養開始4週後で1,400 kcal/日と目標のエネルギー摂取が可能になった。しかし、体重は減少し、筋肉量も減った。炎症は継続したが、褥瘡はやや改善した。他方、この時点で痛みは軽減しており、短時間であれば立位が可能になった。5週目から炎症が回復傾向に転じ、CRPも2.5mg/ dLまで下がってきた。同化期に入ったと判断し、リハビリテーションでも筋トレをはじめ、歩行練習が可能になったため、栄養補助食品も追加し、エネルギー、たんぱく質の投与量を増やした。8週後には約2,000kcal/日を摂取できるようになり、運動時間・量を増やしていった。最終的には体重や筋肉量も増え、杖歩行が可能となった。エネルギー投与量は6週目で体重1kgあたり30kcal/日、運動量が増えた時には体重1kgあたり35kcal/日を目標値とした。脂質異常や腎障害はなく筋力、ADLが向上し、褥瘡も改善した。
この症例では異化期に守りの栄養療法と守リハビリテーションを行った。CRPが下がった時点で攻めの栄養療法、攻めのリハビリテーションに切り替え、積極的に高エネルギー、高たんぱく質を投与した。実際に高エネルギー、高たんぱく質が摂取できることを確認し、リハビリテーションでは過剰栄養にならないようなトレーニングを実施した。トレーニングが増えてきた時は栄養療法も変更し、エネルギー投与量を体重1kgあたり35kcal/日に設定した。これらの介入により、褥瘡と栄養状態、ADLを同時に改善できた。この症例から、理学療法は栄養療法の効果を高め、栄養療法も理学療法の効果を高めると考えられる。
◆まとめ:褥瘡改善には運動と併用した攻めの栄養管理が必要
褥瘡患者に対する栄養介入はいまだに不十分である。褥瘡改善のためには攻めの栄養療法が有用である。その栄養管理では活動量や筋緊張を考慮する必要がある。とくに加齢性サルコペニアの場合は過剰たんぱく質投与に注意し、必ず運動を併用する。また、高度侵襲下では攻めの栄養管理が禁忌になる。したがって、病態を把握してinとoutを共有することが求められる。このような栄養理学療法で、褥瘡だけでなく栄養状態や生活機能を同時に改善することが重要である。
栄養の in と out(use)のバランスから褥瘡ケアを考える。特に栄養管理の基礎から
演者:岡田有司(名古屋文理大学健康生活学部健康栄養学科)
◆inとoutのバランスからエネルギー必要量を推算
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』にはエネルギー出納の基本概念という図が示されている。inとoutのバランスでエネルギー出納を考えると、エネルギー摂取がin、身体活動レベルがoutとなる。そのバランスにより体重や体組成が変化する。一般的にエネルギー出納は体重変化で評価される。『日本人の食事摂取基準(2020年版)』の対象は健常者とされているが、疾患を持っていてもエネルギー出納の基本は変わらない。
エネルギー必要量については基礎代謝量の1.5倍以上という目安のほか、ハリス・ベネディクトの式やGanpuleの式など推算式も提唱されている。実臨床では、エネルギー必要量を体重1kgあたり30~35kcal/日として考える場合も多い。ただし、これらは実測値ではなく、推測にすぎない。たんぱく質必要量は各種ガイドラインで体重1kgあたり1.25~1.5g/日を目安に疾患を考慮して設定すると記されている。ただし、最大投与量は体重1kgあたり2.0g/日とされている。
◆腸管機能を評価し、栄養投与ルートを決定
エネルギーやたんぱく質の必要量が決まれば、栄養投与ルートを考える。栄養アセスメントを行い、経口摂取量低下や体重減少など低栄養を評価する。経口摂取量低下や体重減少がない場合は経口栄養を行う。ある場合は、消化管機能を評価し、経腸栄養または静脈栄養を考える。ただし、本来は腸管機能を最初に考慮すべきである。つまり、腸管が使用でき、安全に経口摂取ができる場合は経口栄養、腸管は使えるが安全に経口摂取ができない場合は経腸栄養がスタンダートと考えられる。
栄養投与ルートは経腸栄養と経静脈栄養に大別できる。経腸栄養には経口栄養、いわゆる食事と経管栄養がある。経口栄養は経口的経腸栄養と捉えられる。つまり口から食物を摂り、腸管で消化する。経管栄養は非経口的経腸栄養と考えられる。チューブを使って栄養を胃に送り、胃の蠕動運動で消化管に流して、吸収する。腸管使用の可否を最優先とし、安全に口から食べられる場合は食事にすることが重要である。
◆嚥下調整食には多くの課題がある
ただし食事には改善点が多いことも事実である。食事の種類は一般的に常食、軟食、嚥下調整食、流動食に分けられる。流動食には経腸栄養剤のほか濃厚流動食の経口摂取、ゼリータイプなど栄養補助食品の経口摂取も含まれる。実際にはこれらを組み合わせて投与する場合もある。
常食は基本的に主食が米飯で、それに見合ったおかずで構成される。軟食の明確な定義はないが、一般的にはお粥か軟飯が主食で、それに見合った柔らかいおかずとなる。嚥下調整食は『日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021』で物性が規定されている。流動食には経腸栄養剤、濃厚流動食のほか、重湯、スープ、牛乳、ジュースなどが含まれる。ゼリータイプの栄養補助食品が流動食として使われる場合も多い。
とくに嚥下調整食には問題が多い。まず、嚥下調整食はエネルギー密度が低い。エネルギー密度は1gあたりのエネルギー量を指す。嚥下調整食は物性調整のため、水分を添加してミキサーにかけ、とろみ調整食品やゲル化剤などで固めたり、とろみをつけたりする。結果として常食より薄くなる。とろみをつけると、とろみの分だけ薄くなる。とろみをつけると食べやすくはなるが、ボリュームが増える。
そもそも嚥下障害患者は少食である。患者は食べられないのに「食べてください」と言われる。医療従事者も食べさせようとするが、食べられない。かつては食事をすべて摂取することを前提にエネルギー投与量を計算していた。しかし、嚥下障害患者はすべての食事を食べられないことが分かってきた。そこで、中鎖脂肪酸(MCT)オイル、MCTパウダー、粉飴を使い少量でエネルギーを強化する工夫をした。しかし、このような対応にも限界がある。
◆嚥下障害患者のお粥摂取時のむせはゼリー化で対応
お粥は柔らかいため、嚥下障害患者でも食べやすいと思われているが、実際は嚥下障害患者にお粥は不向きである。お粥は米を湯で炊いてドロドロにしたものである。お粥を食べる際には、米粒と重湯という異なる物性のものが混合して、口に入る。咀嚼し、どちらかの物性に合わせて嚥下しようとする。嚥下能力が高ければ、どちらも飲み込める。しかし、嚥下障害患者ではどちらか一方の物性が残ってしまう。さらに、とろみ調整食品などで調整をしていない全粥は凝集性が低く、付着性が高い。ミキサーにかければ、より食べやすくなると考えられることもある。しかし、これは付着性をより上げるだけで、むせを誘発する。
お粥は品質の一定化が難しいという問題もある。これは給食のオペレーションに起因している。ある施設のオペレーションでは700食を90分で配膳していた。このうち400食はお粥であった。この場合、大きい窯で8~9窯のお粥を炊く。配膳前にまとめてお粥を炊くと、最初に配膳されるお粥と最後に配膳されるお粥で品質が変わってしまう。
お粥の濃さの差も大きい。お粥の濃さは地域性がある。例えば、奈良県のお粥は薄い。同じ施設でも日によってお粥の濃さが変わってくる。毎食ごとにお粥の濃さが違うこともある。看護師からは「嚥下障害患者は一定の物性でないと食べられない」と言われる。「今日のお粥は薄い」「朝のお粥はよかったのに、昼はよくない」と言われることもある。そこで、配膳時間とお粥の患者を考え、炊き上がる時間を調整した。ただし、このオペレーションは手間がかかる。
嚥下障害患者がお粥を食べるときのむせを防ぐため、お粥をまるごとゼリー化した。ゼリー化する場合、お粥をミキサーにかけて、酵素系のゲル化剤を使って固める方法がよく使われる。オペレーションの簡素化を目的に通常の全粥をゼリー化した。これを軽度の嚥下障害患者に食べてもらったところむせづらくなった、ペーストになっているお粥が貼り付くと、吸引しても取れているか分からない。ゼリー化によってこの問題も解決した。
◆食事摂取には体位保持能力や食事姿勢も影響する
ヘッドアップの体位保持能力は食事摂取量に影響する。また、食事介助時間が長くなると、食事後半の食事摂取量が減る。座っているだけで体力を使ってしまう患者もいる。そこで、短時間で効率的な食事介助方法を考えた。食事介助の方法として、喫食を促す食品の順番を統一した。野菜は後回しにして、先に肉、魚、卵、豆腐、牛乳、米の順に高エネルギー、高たんぱく質のメニューから食べてもらうようにした。体位保持能力は食事療法でも重要な観点であるが、管理栄養士には把握しづらい。理学療法士の運動機能や筋力を評価できる職種からの情報提供をお願いしたい。
高齢者では頚部が後屈している患者が多い。車椅子を使用している患者でも頚部後屈が多かった。これも食事摂取に影響する。そこで、作業療法士と協力し、車椅子のアームサポートやサイドバーの調整、ヘッドレスト使用など対策を考えた。最終的にホットタオルとマッサージの併用に落ち着いた。
身長が低い女性では椅子に座って食事をすると、足底が地面についていないこともあった。このような患者は食事をしながらむせていた。足底が地面についていることは重要である。踏み台を用意し、そこに足を乗せて食べてもらった。体幹が保持できるようになり、むせなくなった。この方法を知らなければ、嚥下調整食を考える状況である。嚥下調整食は手間がかかるうえ、一定の品質を保ちづらく、できれば避けたい。
◆筋肉量の評価では患者に身体に触れて確認することも重要
患者の活動量に着目する管理栄養士が増えてきた。ただし、管理栄養士は、筋緊張や不随意運動の評価が苦手である。これは管理栄養士の養成課程で学んでいないためである。精神科では法律に基づき身体拘束を受けている患者もいた。身体拘束は多くのエネルギーを消費する。身体を固定されている患者は、固定から身体を抜こうとする。これは常に筋トレをしているような状態で、筋緊張が高い。実際に患者の身体に触れると筋肉が緊張していることが分かる。このような場合はエネルギー量を増やす必要がある。近年はGlobal Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)基準の使用が推奨され、下腿周囲長を測るようになった。しかし、身体に触れて筋肉を評価することまでは行われていない。筋肉の評価では患者の体に触れて確認することも重要である。
◆感染・炎症制御で栄養管理もスムーズに
ハンチントン病という遺伝性疾患患者で、褥瘡ができた症例の経験がある。ハンチントン病は舞踏運動などの不随意運動を特徴とする。身体活動はあったものの、褥瘡ができた。この患者は排便時に便座に臀部を打ちあてるという行動があった。これによって仙骨部に褥瘡ができた。褥瘡に対する栄養ケアとして、褥瘡の状態・経過、抗精神病薬の調整、運動量、体重などを考慮しながら、多い時には基礎代謝量の約2倍というエネルギー投与量を設定した。エネルギー投与量は運動量を見ながら調整している。
一般的に褥瘡では感染・炎症を伴い、熱が発生する。発熱にはエネルギーが使われる。さらに新生皮には相当量のたんぱく質が含まれる。つまり、褥瘡があると、エネルギーのuseもしくはlossが多くなる。このlossを考慮した栄養管理が必要にある。
感染・炎症が続くと、エネルギーは使い続けられる。感染・炎症や浸出液の制御によってuseもしくやlossというoutを減らせる可能性がある。そこで、医師に早期の感染・炎症制御を提案し、デブリメントや抗菌薬投与を行ってもらった。炎症が抑制されれば、栄養管理がスムーズになる。炎症の低下を見ながらエネルギー投与量を増やしていった。
◆栄養管理プロセスを用い、モニタリングしながら栄養ケアを実施
管理栄養士は褥瘡の状態と治癒経過、基礎疾患、治療期間、排便状況などから栄養ケアを立案する。栄養管理は長く続くため、モニタリングが必要になる。モニタリング項目では体重とアルブミンがよく使われる。
積極的な栄養ケアとは患者の状態をモニタリングしながら、計画項目に従って管理し、栄養評価とフィードバックを繰り返すことである。設定したゴールに向けて順調に進めば問題はないが、上手くいかないこともある。その場合はいち早く修正をかける。修正には情報が必要になる。管理栄養士自ら評価できる指標は必ず評価する。体位保持能力など管理栄養士が評価できない情報は看護師や理学療法士から情報提供してもらう。逆に管理栄養士は食事内容の変更やエネルギー投与量やエネルギー摂取量の増加などの情報を他職種に提供する必要がある。このように、多職種が連携した栄養管理や褥瘡ケアが重要である。
従来は栄養管理方法として栄養ケア・マネジメントが使われてきた。現在は栄養管理プロセスが主流になりつつある。栄養管理プロセスは栄養スクリーニング、栄養アセスメント、栄養診断、栄養介入、栄養モニタリング、アウトカム管理の順で行い、必要に応じて再び栄養スクリーニングや栄養アセスメントを行う。栄養管理プロセスの特徴は栄養モニタリングにある。栄養管理プロセスが普及し、栄養モニタリングと評価を繰り返し、結果をフィードバックし、再プランニングする形の栄養管理が多くなってきた。
◆多職種連携で口から食べることを目指す
褥瘡に対する栄養管理や嚥下理学療法では「食べることができる口」という視点が重要とされている。ただし、その前に「食べられるもの」は何か考える必要がある。褥瘡治癒や生命維持に必要な栄養摂取について、非経口栄養を含めて考えなくてはならない。例えば、褥瘡治癒に有効な栄養成分として、コラーゲン加水分解物やたんぱく質などの投与をプランニングする。その投与方法として、経口摂取できるのか、非経口摂取にするべきか考える。基本的には口から食べてほしい。そのために「食べることができる口」が重要になる。「食べることができる口」には、体位保持能力など「食べることができる身体」も必要になる。この分野は理学療法士に介入していただきたい。
褥瘡に対する栄養管理でも他職種の専門性を知ることが重要になる。お互いに認め合って栄養管理を進める必要がある。一般的に管理栄養士はinを考えることは得意だが、outもしくはuseを評価することは不得意である。管理栄養士による食事の工夫には限界がある。そこで、inとoutのバランスをモニタリングしつつ食事の調整を行うが、そのためには多職種からの情報が必須である。
総合討論
フロア●炎症が強く、異化が進んでいる時期には守りの栄養管理、守りのリハビリテーションが望ましいというお話があったが、エネルギー投与を少なめにすることで創傷治癒が遅れることはないのか。
高橋●確かに、エネルギー投与量を少なくすると創傷治癒が遅れると考えられる。しかし、病態によっては攻めの栄養管理が逆効果になり、創傷治癒が遅れる可能性もある。エネルギー投与量は病態を把握したうえで、褥瘡や栄養状態、身体機能などのモニタリングをもとに総合的に決め、定期的に再検討していく必要がある。守りの栄養療法であっても、たんぱく質投与量は推奨量の体重1kgあたり1.2~1.5g/日が良いと思われる。
フロア●口から食べることは重要であり、そのために腸管の評価が必要と考えている。しかし、主治医から経口摂取が許可されない場合も多い。その場合、どのように腸管の評価を行えばよいのか。
岡田●腸管の評価として、ガイドラインでは腸蠕動運動の評価が推奨されている。医療機関勤務時代は音を聞いて、腸蠕動運動を評価していた。臨床の経験では、ごく少量の消化態栄養剤であれば、よほどのことがない限り吸収される印象がある。そこで、管理栄養士から医師に対して、チューブを留置してでも少量の経腸栄養を開始し、静脈栄養と併用するなどの提案を行っていた。腸管の評価とともに言語聴覚士に嚥下評価を実施してもらうと医師も判断しやすい。嚥下評価が可能な理学療法士がいれば、理学療法士が嚥下評価を行ってもよいと考えている。
高橋●現実には嚥下評価ができない理学療法士が多い。これは日本栄養・嚥下理学療法学会で嚥下理学療法を広めるうえでの課題である。そこで、理学療法士が嚥下評価をできるようにする取り組みを進めている。
岡田●言語聴覚士の養成課程はバラエティーに富んでいる。奈良県には通常の理学療法士養成課程に1年のカリキュラムを加えて、言語聴覚士資格も取得できるようにした理学療法士養成施設がある。
日髙●先生方のお話で栄養のinとout、use、lossのバランスを考えて理学療法を実践する必要があると感じた。そのためには理学療法士と管理栄養士の情報共有が必要となる。この点で先生方の考えを伺いたい。
岡田●理学療法士からは「座位が可能になった」「歩けるようになって運動負荷が増えた」など簡単な情報提供でも行ってほしい。逆に管理栄養士からは「嚥下調整食の調整や栄養補助食品の付加で食事摂取量が増えてきたので、運動負荷も増やせるのでは」といった提案をしていきたい。ただし、管理栄養士の視点と理学療法士や看護師の視点は異なる。管理栄養士は管理栄養士の言葉で説明してしまい、相手に合わせた説明が苦手な傾向もある。理学療法士と管理栄養士が情報提供する際はお互いの認識や用語を合わせていく必要もある。
高橋●管理栄養士がリハビリテーション室に来て、患者を交えて体重や筋肉量などについて理学療法士と話し合うことが理想である。すると、患者さん自身も栄養とリハビリテーションをリンクさせて考えるようになることが多い。リハビリテーションのために食べる必要があるという認識も出てくる。この点でも、管理栄養士と理学療法士の情報共有は有用と考えている。
岡田●管理栄養士はどちらかというと消極的になっている傾向がある。管理栄養士が事務所にいる場合は、理学療法士から「話を聞きたいので来てほしい」なとど病棟やリハビリテーション室に呼び出してほしい。呼ばれないと管理栄養士が事務所から出られない施設もあると聞く。呼び出しがあると、管理栄養士は出て行きやすくなる。
日髙●inとoutを考慮した栄養管理について、具体的に行っている取り組みがあれば、フロアから伺いたい。
フロア●近年の日本褥瘡学会学術集会では避けられない褥瘡が話題になっている。褥瘡では栄養を十分に投与しても治癒が難しい段階がある。臨床の経験では、84歳までは回復可能という印象を持っている。今回のお話にあった栄養管理やリハビリテーションはどの年齢まで可能と考えるか。
岡田●確かに避けられない褥瘡やこれ以上治せない褥瘡がある。ただし、高齢でも褥瘡が改善傾向になった経験もしている。年齢だけでは判断できない。褥瘡ケアに慣れたスタッフでディスカッションし、現状維持が望ましいというコンセンサスが得られた場合は、積極的な治療ではなく、悪化させないケアにシフトすればよいと考える。
フロア●シフトするタイミングを判断するレベルが悩ましい。
岡田●確かに悩ましいところである。科学的なデータは取っていないので、エビデンスとしては示せない。現時点ではスタッフでコンセンサスを得るしかないと考えている。
日髙●健常者の場合、95歳まで筋力の増加が可能というエビデンスがある。
フロア●inとoutのバランスをモニタリングする際、管理栄養士は体重の増減でエネルギーを評価し、理学療法士は筋肉にフォーカスする。これ以外に、アウトカムを評価できる指標はあるか。当院ではたんぱく質を体重1kgあたり2g/日以上付加した症例を経験した。その際は腎機能をモニタリングするため、クレアチニンや尿素窒素(BUN)を評価していた。このようにプラスアルファで評価するべき指標があれば教えてほしい。
岡田●腎機能は、BUNではなくクレアチニンで評価すべきと考える。医療機関勤務時代は高齢者が多かったこともあり、クレアチニンを主にモニタリングしていた。
高橋●理学療法士の視点では下腿周囲長、筋力などの機能評価が重要と考えている。浮腫が生じる場合もある。握力も筋力を評価する指標として簡便で使いやすい栄養評価としても重視されている。当院でも握力のモニタリングを行っている。
日髙●今回は日本栄養・嚥下理学療法学会との合同シンポジウムとして開催した。管理栄養士と理学療法士をはじめとした多職種で共通の言語を持つ必要がある。その上で、エネルギー消費に関する部分を理学療法士が行う栄養研究として進め、結果を伝えていきたいと考えている。また、理学療法士は褥瘡のことを考えながら多職種から情報を得て、取り組んでいくことが重要と感じた。
内田●本シンポジウムでは管理栄養士と理学療法士の情報共有や情報提供というキーワードが頻繁に出てきた。多職種連携は医療の根幹である。しかし、理学療法士の参画は少ない印象がある。本日ご参加の先生方の施設でも、管理栄養士が理学療法士から運動に関する情報を引き出して、リハビリテーションの発展につなげていただきたい。
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