【企業紹介】 ニュートリー株式会社 | 武政栄治 社長 インタビュー

2023.02.01栄養剤・流動食 , 栄養素

ニュートリー株式会社は、1963年の設立以来、自社ブランドの栄養食品を主力製品として手掛ける総合栄養療法食品メーカーである。
同社は「エビデンスに基づく製品で、食の未来を変えていく」というビジョンのもと、病院や介護福祉施設、在宅看護・介護現場に向けて、病者や高齢者のための様々な製品群を提案・供給している。その製品ラインナップは年々拡充を続けており、また2022年7月DM三井製糖の100%子会社化による経営基盤強化を経て同年12月にはテルモ株式会社から栄養食品および関連製品資産を譲受し、さらなる充実を果たした。ここでは、ニュートリー株式会社の各製品領域における近年のトピックを紹介するとともに、2022年7月に代表取締役社長に就任した武政栄治社長に今後の事業展開などについてお話を伺ったので、併せてご紹介する。
(本記事は2023年1月時点の情報を基に作成しております)

株式会社ジェフコーポレーション「栄養NEWS ONLINE」編集部】

 

会社概要

社名       ニュートリー株式会社
所在地
本社       〒510-0013  三重県四日市市富士町1-122
東京支店        〒105-6923  東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー 23F
名古屋支店       〒460-0003  愛知県名古屋市中区錦1-8-8 いちご錦ファーストビル3F
韓国支店        ソウル特別市中区ウルジ路5ギル26  未来アッセットセンター院ビル東棟22階
代表取締役社長  武政栄治
設立       昭和38年2月
資本金      215,000千円
売上高      10,590,587千円(2022年3月期)
事業内容     栄養療法食品ならびに嚥下障害対応食品などの開発、製造および販売
従業員数     191名(2022年3月末日時点)

各製品領域における近年のトピック

ニュートリー株式会社は総合栄養療法食品メーカーとして「嚥下サポート」「栄養素補給」「流動食」の3領域を網羅した製品ラインナップを展開しており、開発から製造、販売を行っている。各製品領域における近年のトピックを以下に紹介する。

⬆︎ニュートリー株式会社が展開する3つの製品領域

嚥下サポート製品

嚥下サポート製品のパイオニアとして、2000年代初頭よりテクスチャー改良材「ソフティア」シリーズを開発、製造、販売し、現在では、「ソフティアS」、「アイソトニックゼリー」、「プロッカZn」など消費者庁許可 特別用途食品 えん下困難者用食品の国内最多取得企業である。
2017年にはテクスチャー改良材などの生産能力を3倍に伸ばすべく、本社隣接地に新工場を建設・稼働。併せて新型容器「innobox(イノボックス)」の開発・出荷を通じて国内市場における競争力を強化するほか、ハラール認証・コーシャ認証の取得により海外市場への製品供給の体制整備を推進している。
一方、嚥下障害や嚥下食の認知度向上にも意欲的に取り組んでおり、2018年に日本初の新機能”とろみボタン”付き「とろみ自動調理機」の開発に協力するなど、広く一般へ向けての普及活動を展開している。

栄養素補給製品

代表製品の一つであるビタミン・ミネラル補助飲料「ブイ・クレス」シリーズにおいては、2013年にコラーゲンペプチド10,000mg配合の「ブイ・クレスCP10」、2018年には乳酸菌E.フェカリス6,000億個配合の「ブイ・クレスBIO」を発売し、病院や介護福祉施設などで幅広く利用されている。
「ブイ・クレスCP10 ミックスフルーツ」においては、2021年8月26日、消費者庁から「褥瘡を有する方の食事療法として使用できる食品」として、日本で初めて、特別用途食品 個別評価型病者用食品の表示許可を取得。表示許可取得によって、エビデンスに基づいた製品として評価を受け、病院、介護施設、訪問看護現場などでの導入が進み、取得前に比べ、年間販売本数が20%増加。発売から約9年、表示許可取得後1年を経過し、累計販売本数は2,000万本を突破している。

流動食

ニュートリー株式会社は、2017年に株式会社三和化学研究所からニュートリション事業の一部を譲受、2019年にキユーピー株式会社から濃厚流動食および関連製品の一部販売権を譲受し、その後の製品リニューアルを経て流動食関連の製品ラインナップを着実に増やしてきた。そして、このほどテルモ株式会社から栄養食品及び関連製品に関する資産を新たに譲り受け、さらなるラインナップの充実を果たした。

⬆︎今回の資産譲受で新たにラインナップに追加となった主な製品

 

INTERVIEW

 

武政 栄治
ニュートリー株式会社 代表取締役社長

今後の事業展開

国内市場における事業展開

当社は臨床栄養分野に特化した食品メーカーですが、将来的にはその枠組みを超えた「研究開発型のヘルスケア企業」に成長すべく、商品開発力の強化を積極的に推進しています。それと同時に、他社からの製品・事業の譲受にも意欲的に取り組むことで、スピード感をもって市場ニーズに対応しています。その一番の目的は、患者さん個々人に応じた栄養療法の選択の幅を広げることです。このため、他社から承継した製品についても、臨床現場の声や時代のニーズに合わせて栄養成分の強化や包材の変更といったアップデートを図りながら、製品ラインナップの充実を果たしてきました。その際、当社が常に重視してきたのは、製品を譲っていただいた企業の理念や精神、ブランドや技術を大切に受け継いでいくという点です。今般、テルモ株式会社の栄養製品をラインナップに加えるに当たっても、医薬品の製造等で培われた同社の優れた品質管理体制を同時に引き継ぐことで、当社のものづくりと品質のレベルをより一層高める機会に繋げたいと考えています。

海外市場への展開

日本は世界に先駆けて高齢化が進んでおり、その対策においても先進的な立ち位置にあるといえます。当社も高齢者向けの栄養製品を通じて蓄積してきた様々な知見を、今後は世界へ向けて積極的に還元していきたいと考えています。とくに中国や韓国では日本並みまたはそれ以上の速度で高齢化が進行中であることから、現在、海外事業の中心に位置づけて企業提携や事業開発などの取り組みを進めています。
例えば、中国において鈴謙(深圳)医薬有限公司と提携し、主力のテクスチャー改良材「ソフティア」及び粘度調製食品「REF-P1」(レフ・ピー・ワン)を販売、さらに「REF-P1」は、中国を中心としたアジア諸国における高齢者向け食品の需要増大を念頭に同社に製造ノウハウなどを譲渡し、2022年10月より中国での製造も開始しました。
韓国については、2022年9月に大手食品企業の大象(テサン)株式会社傘下の大象ライフサイエンス株式会社と「REF-P1」を韓国全土の病院向けに販売する代理店契約を締結し、2023年1月から販売開始予定です。
さらに、中国・韓国に次ぐ市場として東南アジア諸国連合(ASEAN)での事業も構想中です。とくにタイはASEAN諸国におけるハブ的な機能を有しており、今後ASEAN全域へ事業を展開していく上で重要な拠点になると思います。
一方、欧米の市場は非常に巨大ですが、既に数多くのグローバル企業が競合しており、新規参入はなかなか容易ではありません。そうした中で当社がいま果たすべき役割は、欧米における臨床栄養領域の最新動向を日本国内に向けて、いち早く発信していくことではないかと考えています。例えば、欧米では脱プラスチック化への動きが加速しており、栄養製品においても紙パックに無菌充填されたものが広く普及しています。こうした潮流は早晩日本にも広まることが予想され、当社の提供する製品やサービスを通じて、医療や介護の分野におけるSDGsの取り組みの重要性を訴えていきたいと思います。

将来へ向けての抱負

医学は日々進歩を続けていますが、どんなに優れた治療技術が登場しても、それを受ける患者さん側の栄養状態が良好でなければ十分な効果を期待できません。しかしながら、臨床現場における栄養療法への関心の度合いは必ずしも高いとはいえず、積極的な情報発信により、一人でも多くの医療従事者の皆様に興味を持っていただく必要があります。そのための取り組みの一例が、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)と当社の共催による『How to 研究セミナー』です。これは、45歳以下のJSPEN若手会員の皆様による将来構想検討委員会「JSPEN-U45」の「JSPEN未来創造プロジェクト」の一環として実施するもので、臨床研究の実現を目指して研究デザインの設計や臨床統計の知識獲得、学会発表から論文作成までを解説するセミナーシリーズです。こうした試みを通じて、臨床栄養領域の未来を担う若手医療従事者や研究者の皆様のお役にたてればと考えています。
一方、医療従事者の皆様に様々な情報を提供する我々企業の側にも、よりハイレベルな専門性が求められています。製薬業界では、高度な専門知識に基づいて臨床現場に中立的な立場で情報提供を行うMedical Science Liaison(MSL)が普及しております。当社は、これを臨床栄養に置き換えて、個々の患者さんに応じた最適な栄養療法を提案できることを目指しています。
この他にも、栄養食品関連企業による業界団体である「日本メディカルニュートリション協議会」での活動を通して、栄養療法が医療費の抑制に貢献できることなどを継続的に発信しています。
今後も栄養療法を通じて、いま目の前におられる患者さんとそのご家族のQOL向上に貢献できるよう、研鑽を重ねていきたいと考えています。

 

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