第6回日本在宅医療連合学会大会開催| ワークショップ18 病院から在宅・施設への栄養情報提供 Part1
2025.04.28在宅医療ワークショップ18 病院から在宅・施設への栄養情報提供 Part1
座長:
丸山道生(田無病院)
塩野崎淳子(訪問栄養サポートセンター仙台)
- 関東学院大学の田中弥生先生は、横浜市青葉区における在宅医療連携システム「あおばモデル」の概要を紹介し、情報共有と多職種連携で患者に適した栄養管理を行った事例を提示した。さらに、近年の診療報酬改定では栄養関連の評価が増やされていること、とくに令和6年度診療報酬改定で医療と介護の栄養情報連携が推進されたことに触れ、病院と在宅医療の栄養情報連携による切れ目のない栄養管理が必要とした。
- 北美原クリニックの岡田晋吾先生は北海道函館市周辺の医療介護連携システムとして医療介護連携支援センターが設立されており、入退院時のルールや共通様式である医療介護共通連携サマリーが作られていることを説明した。医療介護連携支援センターでは円滑な情報連携を進めるためのICTツール「道南MEDIKA」も運用し、スムーズに情報共有が可能になったとした。その上で在宅医療では病院、地域、施設の管理栄養士とかかりつけ医と管理栄養士の連携による栄養管理が必要と訴えた。
病院から在宅・施設への栄養情報連携の取組みと推進
演者:田中弥生(関東学院大学)
◆横浜市青葉区では在宅医療連携システム「あおばモデル」により栄養情報連携を実施
急速な高齢化など医療を取り巻く環境の変化を背景に在宅医療の重要性が指摘され、地域包括ケアシステムが策定された。地域包括ケアシステムでは主治医とケアマネジャー、医療機関と高齢者施設、多職種による連携が重視される。在宅医療での栄養管理でも多職種による連携が進められてきた。在宅医療では居宅介護支援、デイサービス、ショートステイなど多くの介護サービスが行われているが、ここに栄養管理を取り入れることが望まれている。
横浜市青葉区では在宅医療を軸とした地域包括ケアとして「あおばモデル」を2017年に構築した。「あおばモデル」では在宅医療連携拠点を設け、かかりつけ医、在宅医療に特化したクリニック、居宅介護支援事業所、デイサービス、訪問介護事業所、訪問看護ステーション、機能強化型栄養ケア・ステーション、ショートステイなどそれぞれの施設、職種が青葉区在住の高齢者について全体的に連携できる体制を整えている。例えば、かかりつけのクリニックを受診した際に、問題があった高齢者について各施設がその問題を把握でき、適切に対処できる。
この連携にはクラウド化されたネットワークが用いられている。連携システム上に患者ごとに連絡ノートが設けられており、それぞれの職種による情報提供が行われている。また、在宅医療の中心である青葉区医師会では地域資源マップを構築した。マップには在宅医療に関する施設の種類や場所が一目で分かるように掲載されている。この多職種連携クラウドシステムによって青葉区では情報の連携体制ができており、栄養情報提供書がなくても関係する職種が必要な栄養情報を共有できる。
◆栄養ケア・ステーション以外で活動する管理栄養士の役割も重要
診療報酬、介護報酬で在宅栄養食事指導を行う場合、病院又は診療所、福祉施設の管理栄養士以外は、都道府県栄養士会から栄養ケア・ステーションに業務委託する形で実施される。都道府県栄養士会栄養ケアステーションに在宅栄養食事指導の依頼があると、登録している管理栄養士に連絡が行く。認定栄養ケア・ステーションに所属する管理栄養士でも個人契約を結び在宅栄養食事指導を行う。
近年は機能強化型認定栄養ケア・ステーションや薬局にある認定栄養ケア・ステーションの必要性も認識されている。しかし、これらの認定栄養ケア・ステーションは管理栄養士のいない診療所と業務委託を結べない。今、認定栄養ケア・ステーションが業務契約での訪問栄養食事指導を行えない状態である。栄養ケア・ステーションがスムーズに活動できるよう、日本栄養士会などによる要望が求められている。
都道府県栄養ケア・ステーションで在宅の栄養管理を受けている利用者がデイサービスも利用する例も増えてきた。診療所などかかりつけ医、歯科診療所、配食サービス事業者と管理栄養士の連携も進んでいる。さらに新しい総合事業によるサービスとして、管理栄養士が訪問型サービス、通所型サービス、生活支援サービスでも活動するようになってきた。このように、在宅での栄養管理では栄養ケア・ステーション以外に、病院、介護福祉施設、デイサービスの役割も大きくなっている。
◆「あおばモデル」を活用し、多職種で患者に適した栄養管理を実施
70代女性、独居の脳出血後遺症患者にも「あおばモデル」を活用して多職種で栄養管理を行った。この患者では内科医から訪問栄養食事指導の依頼があり、管理栄養士が訪問栄養食事指導を進めるための栄養ケア計画書を作成した。栄養ケア計画書を「あおばモデル」を通じて共有し、訪問看護師など多くの職種と連携できた。この連携によって、医師は食事摂取量を把握していないまま低ナトリウム血症改善目的で食塩摂取量を指導していることが明らかになった。そこで、管理栄養士が訪問したところ、食事摂取量が少ないことが分かり、介入を行った。
看取り目的でユニットケアに入っている100歳超の嚥下障害患者にも多職種で介入した。この女性の息子から「柿の産地で暮らしており、小さいころに柿を剥いてくれた」とのエピソードが伝わり、本人も「柿を食べたい」と希望していた。嚥下障害があるため、通常は柿をつぶして提供しようと考える。しかし、この時介入した管理栄養士は同時にエネルギー摂取量を強化したほうがよいと考え、中鎖脂肪酸油(MCT)を加えてエネルギー増柿ゼリーを提案した。
◆近年の診療報酬改定では栄養関連の評価が充実
「あおばモデル」によりこのような多職種での栄養管理が青葉区内で行われるようになっている。しかし、他地域には広がっていない。特に病院から在宅への連携が難しい状況である。そこに、診療報酬改定で栄養管理の充実が評価されるようになってきた。
平成22年度診療報酬改定以前の診療報酬における栄養管理に対する算定としては、入院で入院栄養食事指導料、栄養管理実施加算、外来では外来栄養食事指導料と在宅患者訪問栄養指導料があった。その後、低栄養が多いことや栄養管理の重要性が認識されたことで、令和4年度診療報酬改正で多くの栄養管理関連の報酬が追加された。特定機能病院における、入院栄養管理体制加算では病棟に対し1名の管理栄養士配置が要件とされ、十分な栄養管理体制構築を目指している。他にも周術期栄養管理実施加算も設定されている。
◆令和6年度診療報酬改定ではリハビリテーション・栄養・口腔の連携を推進
令和6年度診療報酬改定では急性期、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟などすべての入院基本料の見直しが行われ、栄養管理体制の基準が明確化された。急性期一般入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料についてはリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算が新設された。
さらに、高齢者の入院時に低栄養リスクもしくは低栄養状態が多く、高齢入院患者の栄養状態不良と生命予後不良に関連性があることから地域包括医療病棟入院料が新設された。地域包括医療病棟では早期の退院に向けてのリハビリテーション、栄養管理を提供することとされており、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算も新設されている。
在宅でも在宅療養支援診療所・病院における訪問栄養食事指導を推進することとなり、施設基準に訪問栄養食事指導体制が加えられた。このように、管理栄養士の重要性はさらに高まって
いる。
◆栄養情報連携の推進や在宅医療での栄養管理強化も実施
令和6年度診療報酬改定では、一般病棟入院基本料を算定する患者を対象とした入退院支援加算1が230点から240点に増やされ、退院支援計画の内容にリハビリテーション、栄養管理、口腔管理を含む退院に向けての療養支援の内容ならびに栄養サポートチームなど多職種チームとの役割分担を盛り込むこととされた。つまり、入院中から退院後の生活を見据えて、リハビリテーションと栄養管理を行うことが求められる。したがって、栄養食事指導の方法も変える必要がある。従来は病院での栄養管理の内容を退院後もそのまま実施するように指導したことが多かった。今後はそれぞれの患者について、在宅でどのような生活をしているのか把握し、その生活に合わせた指導を行わなければならない。
令和6年度診療報酬改定では、医療と介護における栄養情報連携の推進も重要なテーマとされた。この一環で、従来は入院栄養食事指導料の栄養情報提供加算で50点とされていたものが、栄養情報連携料に改められ70点とされた。対象は、入院栄養食事指導料を算定した患者、退院先は他の保険医療機関、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、福祉型障害児入所施設とされている。
入院栄養食事指導料を算定した患者に対しては栄養食事管理について指導を行った内容および入院中の栄養管理に関する情報を記載した文書を在宅担当医療機関などに提供する。また、介護保険施設に退院する患者については、病院と介護保健施設の管理栄養士が連携し、入院中の栄養管理に関する情報を提供する。つまり、入院中に行った栄養管理や栄養食事指導の内容情報を、在宅の医療機関や介護保健施設の管理栄養士に提供するよう求めている。
さらに在宅療養支援診療所・病院における訪問栄養食事指導の推進として、要件の見直しが行われた。在宅療養支援診療所の施設基準としてはその診療所に所属する管理栄養士のほか、日本栄養士会もしくは都道府県栄養士会が設置、運営する栄養ケア・ステーションの管理栄養士との連携による訪問栄養食事指導体制の整備が示された。このように栄養ケア・ステーションの重要性が高まっている。
◆大和市でも栄養情報連携を実施
神奈川県大和市では神奈川厚木保健福祉事務所大和センターに大和市内の管理栄養士が集まり、栄養サマリーやお食事連絡表を作成して、栄養情報連携を行っている。これらの栄養情報は一般病院や介護老人保健施設で作成されている。
大和市内にある南大和病院では2022年に62件の栄養情報提供書を作成・提供していた。令和6年度診療報酬改定で栄養情報連携料が新設されたため、2024年6月の栄養情報提供書作成は増え、17件で栄養情報連携料を算定している。南大和病院から栄養情報を提供した施設は特別養護老人ホームや介護老人保健施設が多く、今後は在宅療養支援診療所への栄養情報提供も増やしていく必要がある。
今後の南大和病院では退院が決定すると医療ソーシャルワーカーからの連絡を受け、病棟担当管理栄養士が栄養情報提供書を作成の上、退院先の施設に送付し、栄養情報連携料を算定している。併せて、栄養サマリーとして指示栄養量や食形態、アレルギーなどの食事内容、食欲の有無、身体測定結果や血液検査結果などの栄養および身体状態、患者の入院中の経過、その他必要な情報を記載している。自宅退院後に訪問診療や訪問看護、訪問リハビリテーションが導入されると、訪問診療を行う在宅支援診療所に所属する管理栄養士がこれまでに行っていた栄養摂取状況の経過を整理し、必要な栄養指導や問題点などを情報提供する。
今後の南大和病院における栄養情報提供料算定の課題として、作成に手間がかかること、情報共有の際に行う電話が提供先に許容されるか不明であること、回復期リハビリテーション病棟の入院は外部からの転院が多いが栄養連携情報提供の電話は1件にとどまっていることなどがあげられる。
◆患者の栄養管理継続には多施設、多職種の連携が必要
在宅医療を行っている患者に対する入退院支援では入院時にケアマネジャー、訪問看護、かかりつけ医、施設の担当者が情報共有し、必要に応じて患者・家族の具体的な生活情報を把握し、患者それぞれに医療をアレンジする必要がある。入院中は退院後にどのような生活を送るかイメージし、在宅医療の担当者と情報共有しながら役割分担をする。退院前には退院時カンファレンスを行い、速やかに在宅訪問栄養食事指導につなげていく。認定栄養ケア・ステーションを利用しながら、一方通行の情報提供ではなく、在宅医療や施設の管理栄養士、多職種に繋ぎ、患者の栄養管理が継続できる体制づくりが重要である。
在宅栄養管理における情報連携の現状と課題
演者:岡田晋吾(北美原クリニック)
◆栄養ケア・ステーションの認定を受け、在宅看護ともに栄養管理を提供
北美原クリニックは1996年に北海道函館市で開院し、20周年を迎えた。当初は医師1人であったが、2006年に透析センター、2014年には乳腺センターをオープンし、現在の医師は4名に増えた。開院時は在宅医療には対応していなかったが、患者が自宅での看取りを希望したため、開院1年目から開始した。在宅医療の業務は訪問看護師を中心に行っており、医師が行う業務は少ない。そこで、現在は小児から難病まで、訪問看護師が対応可能である限り、在宅医療を行っている。外来が多忙であるため、医師の往診時間は昼休みと月・金曜日の午後1時間半に限られるが、十分に対応できている。
在宅医療を利用している患者に対する栄養管理では診療所の役割が大きい。診療所での栄養管理には、かかりつけ医が体重変化や消化器症状に気づきやすいというメリットがある。例えば、受診ごとに体重が減っている場合は、がんを疑う。生活習慣病の管理も診療所の重要な治療である。
そこで、当院では管理栄養士を配置し、栄養ケア・ステーションの認定も受けて、栄養食事指導を行っている。透析患者や慢性腎臓病(CKD)患者に対する栄養管理も行っており、令和6年度診療報酬改定で新設された慢性腎臓病透析予防指導管理料も算定している。当院でも高齢患者が増えており、低栄養に対する栄養剤の処方や外来点滴などの栄養管理を積極的に行っている。訪問看護や訪問栄養食事指導も早めに導入するよう心がけている。
◆函館市周辺の医療介護連携システムとして医療介護連携支援センターを設立
かつては在宅医療に関わる医師以外の職種は看護師程度であったが、現在は歯科衛生士や歯科医師、リハビリテーションスタッフなど病院と同じような職種が参加している。在宅医療は究極のチーム医療とも捉えられ、患者に合わせたチームを編成できることが特徴である。ただし、在宅医療ではそれぞれの職種が所属する法人が異なっている場合が多く、切れ目のない情報連携やリアルタイムの情報共有ができていないと、トラブルが発生することもある。在宅医療でのトラブルは解決に難渋することも多く、予防が重要になる。
函館市は北海道新幹線が開通し、空港が近いなど交通アクセスの利便性が高く、食にも恵まれているが、人口減少と高齢化が続いている。地域包括ケアシステムの早急な構築が求められ、質が高く壁のない医療介護連携システムを目指して、函館市は医療介護連携支援センターを設立した。医療介護連携支援センターでは入退院時の連携のルール、急変時のルールを定めた。このルールでは在宅医療患者が急変した際は急性期病院への入院を支援するほか、退院時には多職種のカンファレンスを行い、その後の引き受け体制を確立することとした。また、地域の多職種に対する研修会を実施したり、地域の専門職を紹介して連携に繋げる活動も行っている。
施設が異なると、同様の内容でも異なる様式のサマリーが作成されることもある。そこで、医療介護連携支援センターでは医療介護共通連携サマリーも作成した。このサマリーは医療、介護のどの職種でも見やすく、連携しやすい様式を目指しており、基本ツールと褥瘡や認知症など特別な医療が必要な場合に利用する応用ツールがある。応用ツールは歯科医師や認定ナースなどそれぞれの専門職によって作成されており、地域全体での情報共有のほか知識の向上も目指している。
◆ICTを活用したリアルタイム連携システムとして道南MEDIKAを構築
医療介護連携支援センターという体制が整ったとしても、異なる法人との連携は手間がかかる。例えば、開業医は施設の嘱託医や協力医を引き受けていることが多いが、時間を問わず連絡が来る問題もあった。そこで、ICTを活用したリアルタイム連携システムとして道南MEDIKAも構築した。
道南MEDIKAには病院、診療所、施設、薬局、介護事業所など多職種が参加している。当院では在宅医療の依頼があると、退院前カンファレンスに参加する。事前に道南MEDIKAで入院中の状態や血液検査データなどを把握できるため、退院前カンファレンスでは知りたい情報を短時間で得られる。退院前カンファレンスが終了すると、道南MEDIKAを通じて、その情報を共有する。当院では現在も在宅医療で注意が必要な患者を診療しているが、訪問看護師の報告をスマートフォンでリアルタイムに確認できる。退院後も緩和ケアの専門医が道南MEDIKAを通じて状況を確認しているため、当院で処置に困った際はアドバイスを得られる。
◆多様な患者が存在する在宅医療ではそれぞれの栄養管理計画が必要
在宅医療では多様な患者に対応している。在宅医療でも病院と同様の栄養管理も可能ではあるが、多様な患者に対応できる医師の有無が問題となるケースもある。例えば、心不全患者に対する在宅医療では、一般の開業医の医師が患者の病態に適した栄養管理を全て理解しているわけではない。
近年は終末期も多様化してきた。急性期医療では突然死亡する患者もいるが、がん患者のように最後の1週間で急激に悪化して死亡する場合もある。心不全患者では入退院を繰り返して、徐々に悪化し、死に至る。がん終末期では、抗がん剤の効果が認められなくなっても最後まで内服を続けたいという患者もいれば、疼痛管理のみ行ってほしいという患者もいる。患者の状態は様々であり、希望も様々である。そこで、在宅医療では患者ごとに栄養管理計画が必要になる。
◆在宅医療でのスムーズな栄養管理には栄養情報提供書が重要
在宅栄養管理の課題としては栄養の専門家の不足もある。医師は栄養管理が専門でないため、栄養情報を十分に把握していない。そのため、基本的に病院から栄養管理に関する情報は得られない。
当院で在宅医療の依頼を受けた認知症患者の場合、病院から胃瘻を造設しており、栄養と水分管理は安定しているという情報が送られてきた。しかし、退院前カンファレンスでは、家族から「とろみを付けた栄養剤は力がなくて入れられない」「その栄養剤に変えてから下痢が続き、臀部のびらんがひどい」「年金暮らしでコストがかかる薬剤の栄養剤は使えない」という訴えがあった。そこで、管理栄養士が介入し、「ラコールNF配合経腸用半固形剤」に変えたところ、下痢が改善した。このように、在宅医療でも管理栄養士の役割は大きい。
まれに道南MEDIKAで管理栄養士からの栄養情報提供書を受け取ることがある。入院中の栄養管理が把握できれば、在宅医療での栄養管理もスムーズになる。当院は栄養ケア・ステーションに認定されているため、主治医からの栄養指示書が送られてくることは多い。しかし、管理栄養士から送付される栄養情報提供書のように詳細な情報は記されていない。できる限り全例で栄養情報提供書を作成してほしいと考えている。
医療介護共通連携サマリーの応用ツールでは、食事摂取困難管理や糖尿病管理として栄養管理に触れているものがある。しかし、包括的な栄養管理を扱うサマリーは作成されていなかった。そこで、医療介護共通連携サマリーの応用ツールとして摂食嚥下サポートと栄養管理情報を新規に作成中である。
このような栄養情報連携を実現している地域は増えてきた。例えば、世田谷区では『栄養情報項目 世田谷版』という統一様式が作られている。地域で栄養情報連携項目を統一した様式を作成することが重要である。ただし、在宅医療の医師に栄養情報を送っても、具体的な介入に至らない場合も多い。統一様式があっても、在宅医療で栄養情報を確認する職種の決定、栄養情報を確認した後の介入と担当する職種の決定が課題になる。
◆かかりつけ医が管理栄養士と連携し、栄養情報提供を推進することが必要
選定療養制度が設けられ、紹介状なしで大規模病院に受診する場合、選定療養費が必要になったり、医療機関からの予約が必須とされたりしている。そこで、開業医を受診して、紹介されてから大規模病院を受診することが一般的たになった。また、介護を受ける場合は主治医意見書がないと審査を受けられない。つまり、かかりつけ医の重要性が増している。
かかりつけ医として在宅医療は必須になっている。在宅医療を行っていない診療所でも主治医意見書や訪問看護指示書を作成する。したがって、直接在宅医療を行っていない診療所の医師も在宅での栄養管理を考えなくてはならない。当院でも毎日のように低栄養や摂食嚥下機能低下の恐れを確認し、訪問栄養食事指導の必要性を判断している。しかし、これが行われていない診療所は多い。訪問栄養食事指導を行う管理栄養士の存在を認識していない医師もいる。医師が訪問栄養食事指導の必要性ありと判断しない限りは、ケアマネジャーも動けない。医師に訪問栄養食事指導の必要性を認識してもらうためにも、栄養情報提供書を作成し、栄養情報を連携することが必要になる。
そのためには管理栄養士の連携が重要となる。病院の管理栄養士、地域の管理栄養士、施設の管理栄養士が連携し、医師に栄養情報を伝えれば、ケアマネジャーの意識も変わる。介護の現場ではケアマネジャーの意識が変わらないと栄養食事指導に繋がらない。今のところ、診療所では栄養情報連携が努力義務とされている。しかし、診療所からの栄養情報提供も推進する必要がある。
診療報酬改定によって現在、管理栄養士には強い追い風が吹いている。この追い風を生かして、地域で管理栄養士が連携し、地域に必要な栄養情報連携を構築してほしい。その成果から医師やケアマネジャーの意識が変わり、患者はよりよい在宅医療を受けられるようになる。
◆多様性がある在宅医療では多職種連携と栄養情報提供書の活用が必須
在宅医療では患者や療養環境に多様性がある。そこで、患者や家族のニーズに合ったチームを作りが重要になる。在宅医療を担う医師はどんなニーズがあっても応えられる体制を構築しなければならない。そのためには多職種での情報共有が必要となる。また、患者や家族のニーズは変化するため、常に確認しながら進める必要もある。在宅医療やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)では栄養管理が担う役割が大きい。栄養管理情報提供書の作成と活用がこれから在宅栄養の質を上げるために必要である。
Part2へ続く…
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