JSPENワークショップ6 多職種で考える心不全患者のmalnutritionと栄養治療 Part1

2026.01.23栄養素

ワークショップ06 多職種で考える心不全患者のmalnutritionと栄養治療~急性期から在宅までの実践と課題~

座長:

鈴木規雄(聖マリアンナ医科大学 循環器内科
小笹寧子(高の原中央病院 循環器内科

  • 横浜市立大学医学部 循環器内科学の小西正紹先生は日本人の心不全は予後が悪い低BMI患者が多いことに触れ、心不全治療が栄養状態を改善し、体重増加につながった症例を紹介した。さらに心臓悪液質は予後を悪化させるため、AWGC基準を用いた早期の評価が必要であり、介入ではONS付加、鉄の補充が有用とした。また、厳格な塩分制限の根拠は乏しく、状況によっては塩分制限を緩和してもよいと解説した。
  • 広島大学大学院 医系科学研究科の堤 理恵先生は、心臓悪液質患者の代謝経路は解糖系が亢進しており、TCAサイクルに直接アプローチできる糖とアミノ酸の併用が有用とした。さらにシンバイオティクスによる腸内環境是正やジンゲロール含有栄養剤の付加も有用である可能性に触れた。

心不全の低栄養と悪液質:総論

演者:小西正紹(横浜市立大学医学部 循環器内科学

◆心不全患者に多い低栄養で予後が悪化

心不全患者における体重や栄養の管理についての近年のトピックとして、収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者を対象としたGLP-1受容体作動薬を用いた減量効果の報告がある。HFpEFは左室駆出率(EF)が保たれている心不全で、肥満との関連も報告されている。そこで、糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬による減量がHFpEF患者の病態を改善すると考え、実際にGLP-1受容体作動薬を用いたところ、体重の減少とともにQOLも改善した。さらに、肥満のHFpEF患者を対象にGLP-1受容体作動薬のチルゼパチドを投与したSUMMIT試験では、心血管死または心不全増悪の複合リスクも低減することが分かった。

しかし、これらの研究の対象はBMI30以上の肥満HFpEF患者で、このような患者は欧米で多いが、日本ではBMIの低い患者が中心である。BMI別に予後を検討した報告では、BMI35以上の群で最も予後が良好であった。一方、低BMIの心不全患者は予後が悪く、日本の心不全治療では、低BMI患者の治療方法が課題になっている。

心不全患者には減量が必要との考えは以前からあった。しかし、欧州心不全学会(ESC)、米国心臓協会(AHA)、日本循環器学会が作成した現在の心不全治療のガイドラインは、いずれも心不全患者に対する減量を推奨していない。肥満の結果として心不全を発症している患者が多いのは確かであり、心不全予防のために減量するという考えは正しいと思われる。ただし、心不全を発症すると、動悸や息切れで消耗し、入院を繰り返すなど痩せる要素が多くなる。心不全発症は痩せにつながるイベントと考えられる。つまり、肥満の心不全患者は、まだ太っている余裕がある状態ともいえる。このような背景もあり、心不全患者における減量の是非は、まだ十分に解明されていない。

痩せている心不全は、心臓悪液質の状態でもある。日本の悪液質患者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全、がんの順に多いと推定されている。つまり、心臓悪液質患者は、全てのがん悪液質患者より多いと推定されている。痩せている心不全患者は多い。心不全患者は高齢者が多く、高齢心不全患者の痩せの多くはフレイル、サルコペニアが原因と考えられる。しかし、心不全患者では悪液質による痩せも考えられる。悪液質は病気により痩せている状態、つまり疾患関連の低栄養を指す。疾患関連の低栄養を改善するには、まず疾患への治療が必要となる。したがって、心臓悪液質患者には心臓に対する治療が重要である。

心不全の基本的な治療として古くからアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のエナラプリルやβ遮断薬のカルベジロールが用いられてきた。これらの薬剤は心不全患者の生命予後を改善し、体重減少を抑制することが明らかになった。例えば、エナラプリルは6%以上体重が減少した患者を約20%抑制する。カルベジロールでも体重が減少した患者の割合が減少している。

◆心不全に対する治療で悪液質が改善し、体重も増加

横浜市立大学附属病院でも弁膜症による心不全を発症した患者に対し、心不全の治療を行った結果、体重が増えた症例を経験している。患者は40歳代男性で、入院1年前の体重は65kgであった。苦しさを訴え入院となった時の体重は67kgで、浮腫もあった。心不全マーカーの脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は入院1年前時点で96pg/mlと若干高いレベルであったが、入院時には1,724 pg/mLまで上昇しており、心不全への対処ができなくなっていた。EFも23%と非常に低かった。

入院後、まず利尿薬による除水を行った結果、体重は57kgまで減った。この状態のBMIは18.8であり、悪液質と評価された。BNPは除水によって改善したが、このままでは心機能は改善しない。そこで、手術により弁膜症の治療を行った。退院時も体重はそれほど変わらなかった。その後、約6か月間の栄養療法とリハビリテーションの結果、体重は64kgまで増え、BMIは21になった。これは入院前の体重65kgの状態とは異なり、浮腫ではなく筋肉や脂肪の蓄積による体重増加と思われる。BNPは22pg/mLで、ほとんど正常値まで低下したことも、これを裏付けている。EFは29%と大きな改善はなく、心機能はよくなっていないものの、バランスはある程度取れている。その結果、悪液質も改善した。臨床ではこのような症例が見られる。

◆心不全患者では筋肉減少や腸管浮腫が心臓悪液質をもたらす

ただし、この症例はあくまでも心不全の治療を行った結果、悪液質が改善したものである。現状、心臓悪液質に対する治療についてはエビデンスが少なく、よく分かっていない。心臓悪液質には、がん悪液質とは異なる心不全特有のメカニズムがある。例えば、身体活動量が減り、筋肉が減少すると、筋肉が産生するホルモンが変化し、交感神経が活性化する。その結果起こる血管の収縮で心臓への負荷が増え、心機能に悪影響を及ぼすと考えられている。これは骨格筋仮説と呼ばれている。

また、心不全による浮腫により、腸管でも浮腫が起き、さらに腸管への血流が低下する。これらにより、腸管のバリア機能が低下し、腸内細菌から毒素が全身に回り、炎症を起こすとも考えられている。

◆Evansの基準による心臓悪液質は予後不良

心臓悪液質のエビデンスが少ない理由の一つに、診断基準の問題がある。心不全患者に適用できる悪液質の診断基準は2008年のEvansらの基準のみであった。Evansらの基準では、12か月以内に少なくとも5%の体重減少があるかBMI20未満で、筋力低下、疲労感、食欲、除脂肪体重減少、生化学検査異常のうち3項目を満たす場合に悪液質と診断する。しかし、悪液質を診断するためには筋力測定、疲労感の聴取、除脂肪体重測定と多くの項目を確認する必要がある。とくに除脂肪体重測定は日常臨床では行われていない。悪液質の診断はほとんど実施されておらず、心臓悪液質が予後に及ぼす影響も検討されていなかった。

そこで、心臓悪液質と予後の関連を検討するため、Evansの基準で悪液質と診断された群と悪液質でない群で2年間の予後を比較した。その結果、悪液質群は非悪液質群に比べて予後が悪いことが分かった。さらに、悪液質とサルコペニアを合併する患者の予後についても検討した。悪液質・サルコペニア合併群ではサルコペニア・非悪液質群および悪液質・非サルコペニア群に比べ、予後が悪いことも明らかになった。

◆より簡便に悪液質を評価するためAWGC基準を提唱

悪液質を診断するため、より簡便かつ早期に診断できる基準が求められるようになった。アジア・カヘキシア・ワーキンググループ(AWGC)で新しい診断基準の検討を進め、2023年8月にAWGC基準として提唱した。AWGC基準はEvansらの基準に比べ、体重減少およびBMIの基準値が変更されている。体重減少はEvansの基準では12か月以内に少なくとも5%とされているが、AWGC基準では6か月で2%とした。体重減少の幅自体に大きな違いはないもの、より早期に診断できるようにした。BMIもEvansらの基準では20kg/m2未満としているが、AWGC基準では21kg/m2未満とした。これも、より早期に診断することを目指したものである。体重減少以外の基準は食欲低下、握力低下、CRP の3項目に集約した。これらはEvansらの基準で用いられ項目のうち、より重要と思われる3項目を選定している。

AWGC基準については、多くのバリデーション研究結果が報告されている。ただし、ほとんどががん患者を対象にしたもので、一部が嚥下障害患者を対象にしている。これは、心不全患者では体重減少の評価が難しいことも一因である。AWGC基準の2%の体重減少は、体重50kgの場合、1kg減少に相当する。心不全患者で浮腫に対し利尿剤を使うと、この程度の体重減少はしばしば起きる。AWGC基準でも浮腫や体液貯留を勘案して体重減少を評価することとされているが、具体的にどの時点の体重を基準に体重減少を評価するかは患者によって異なり、実臨床では困難を伴う。

当院では心不全患者におけるAWGC基準の妥当性を明らかにするため、心不全入院患者を対象にAWGC基準を用いて悪液質を評価し、予後を検討した。同じ対象をAWGC基準で評価したところ、74%が悪液質となった。Evansらの基準で評価した悪液質は約30%で、大きな差がある。AWGC基準にはより早期の悪液質患者を含んでいると考えられる。AWGC基準による悪液質群と非悪液質群で2年間の死亡リスクを比較したところ、悪液質患者で高かった。しかし、年齢、性別、BNPなどの要素で調整したところ有意差はなくなった。

さらに、心不全入院患者を対象に入院1年前の体重と退院時の体重変化に注目して、予後を検討した。1年間の体重減少幅により4分位で分け、予後を比較したところ、最も体重減少が大きかった群では2年間の死亡リスクが1.5倍になった。

◆食欲不振の心不全患者に対するONS付加は死亡率を改善

心臓悪液質に対する心臓以外の治療に関しては、運動療法と栄養療法が有効とされている。心不全患者における運動療法は心臓リハビリテーションと呼ばれており、原則としてすべての心不全患者に推奨されている。したがって、ほとんどの心不全患者で運動療法が実施されている。

栄養療法に関してはあまりエビデンスがなかったが、近年は低栄養対策として経口栄養補助(ONS)を用いた検討が行われるようになった。例えば、2021年に報告されたEFFORT研究のサブ解析では、平均約79歳の高齢心不全患者を対象にONS付加の効果が検討されている。対象の平均BMIは25で、欧米人としては痩せている集団である。食欲不振の患者を対象にしたONSの付加で、30日間の死亡率は付加しない群に比べ大きく改善された。この結果は強いインパクトがあると捉えられている。

EFFORT研究は入院患者を対象に30日間の死亡率を検討している。そこで、当院を含む多施設で、通院患者を対象にしたONS付加の効果を検討する研究を進めている。付加するONSは『イノラス』という経腸栄養剤であり、80例を目標にして体重変化を検討する予定である。現在、約40例がエントリーしている。

◆心不全患者への鉄補充は再入院を抑制

心不全患者に対する栄養療法では、鉄欠乏に対する介入についてエビデンスが報告されている。現在はカルボキシマルトース第二鉄やデルイソマルトース第二鉄などの効果持続時間の長い鉄剤が使用されるようになった。心不全患者にこれらの鉄剤を用いたところ、6分歩行距離が延長または維持できたとの報告がある。さらに、これらの鉄剤使用を中止すると、6分間歩行距離は短くなった。

このため、ESCのガイドラインでは、全ての心不全患者に対して貧血と鉄欠乏を検査するべきであり、再入院を減らすために静注鉄補充を考慮すべきと明記されている。

◆厳格な塩分制限に対する根拠は不明

心不全患者における栄養療法では塩分制限が重視されている。ただし、心不全患者における減塩のエビデンスは多くない。塩分制限の有効性を検討するRCTは行われているものの、結果はまちまちである。『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年版)』でも「1日6gの減塩食を考慮する」とされているが、エビデンスレベルはCと低い。

約400例を対象に7g/日と5.3g/日の塩分制限を比較したRCTでは7g/日群でイベントが少なかった。つまり、塩分摂取量が多い群で予後がよかった。90例を対象に5g/日の塩分制限を行った群と塩分制限を行わなかった群を比較したRCTでは、5g/日群で心機能が悪化した患者が少なく、心機能が改善した患者が多かった。この報告では、塩分制限の有効性が示されている。260例を対象に塩分摂取量が6g/日未満群と6g/日以上群でマッチングさせて予後を比較した報告では、6g/日以上群でイベントが少なかった。これは、塩分制限がむしろ予後を悪化させることを示唆する。そこで、『2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』では、エビデンスレベルCではあるものの「高齢心不全患者における画一的な塩分制限(1日6g以下)の見直しを考慮してもよい」と明記されている。

その後、2022年に心不全患者を対象に3.8g/日の厳格な塩分制限を目標とした群と一般的なアドバイスをした群で予後を比較したSODIUM-HF試験の結果が報告された。この試験における実際の塩分摂取量は、厳格な塩分制限群で4.2g/日、一般的なアドバイス群で5.3g/日であった。予後は両群間に有意差は認めなかった。この結果は厳格な塩分制限に強い根拠はないことを示唆する。

◆心臓悪液質を予防するため低栄養への介入が必要

心臓悪液質患者は、がん悪液質患者よりも多い可能性がある。HFpEF患者における減量のエビデンスも報告されているが、減量の必要性については今後、検討していくべきと考えられる。現時点では、むしろ低栄養に対する介入が重要と思われる。新しいAWGC基準を用い、悪液質をより早期に診断、治療が行うことが期待される。

心不全患者における栄養治療のサイエンス

演者:堤 理恵(広島大学大学院 医系科学研究科

◆心不全患者の低栄養はADL低下を惹起

心不全患者の低栄養が問題とされている。しかし、心筋梗塞予防を目的として「太らないように」という栄養指導がされてきた。心不全患者の低栄養予防をどの時点から考慮すればよいのか考えなくてはならない。

心臓血管外科手術を開心術で施行する患者においてはGLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準により明らかな低栄養と評価された患者は高齢患者においてもほぼ存在しなかったという報告がある。一方、低栄養患者もしくは低栄養高リスクの患者は術後合併症発現率が高いことも明らかになっている。例えば、MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)による低栄養が高リスクあるいは中等度リスクと評価された患者は術後合併症発現率が高く、ADLも低下すると報告されている。ただし、心不全患者ではMUSTの評価項目のうちBMIと体重減少が浮腫の影響を強く受けることに留意しなくてはならない。

また、急性期心不全で低BMIの患者はADL低下リスクが高いと考えられている。つまり、心臓悪液質がなくても低栄養のリスクがある場合はすぐにADLが低下する。ADLが低下し、食事摂取量が減少すると、心臓悪液質が出現しやすくなる。実際、心不全が起こると、食欲不振が起こり、低栄養を惹起する。これにより筋肉の異化と合成のバランスが崩れ、低アルブミンに陥る。これが心臓悪液質やサルコペニアの要因になる。

海外のガイドラインでは、心臓悪液質では炎症による代謝効率の低下や筋肉・脂肪の減少で倦怠感や身体活動の低下が起こり、さらなる体重減少につながって予後を悪化させるとし、栄養介入を行う必要があるとされている。しかし、実臨床では低栄養が起きてからどこまで栄養介入ができるのか、体重減少を続けている患者にとって栄養補助食品(ONS)は十分に摂取可能かという課題がある。

代謝効率の低下という観点で悪液質を考えると、体重や筋肉・脂肪の減少の点では飢餓と類似しているが、悪液質ではエネルギー消費が増加していく点が異なる。悪液質にはONSが有効という報告が存在する。ただし、対症療法的な栄養サポートは患者や家族の努力、医療従事者の手厚いサポートが必要である。患者に寄り添い続けなければ、ONS摂取は難しいことも現実である。

◆心臓悪液質患者の代謝経路は解糖系が亢進

そこで、代謝動態の変化に対応した適切な栄養アプローチを検討するため、心不全における代謝動態の変化について基礎的、臨床的な解明を試みた。まず、心不全におけるエネルギー消費量の上昇について検討したところ、ベッドレストの時間が長い患者でもエネルギー消費量はそれほど高くなっておらず、心臓悪液質がない患者では安定して1,200~1,300 kcal/日となっていた。一例として高齢で小柄な女性患者の場合、エネルギー消費量は800kcal/日程度にすぎない。他方、心臓悪液質の患者では同様の体格でもエネルギー消費量が大きい。つまり、代謝が亢進している患者も存在する。逆にサイトカインが高い状態であっても、エネルギー消費が上がっていない患者も存在した。代謝経路を検討すると、解糖系は亢進しているが、TCAサイクルは低下している患者が多かった。多くは乳酸値も高く、アデノシン三リン酸(ATP)が産生できていないと示唆される。

マウスおよびヒトにおいて、骨格筋の萎縮が進むと遊離アミノ酸が増えてくることが確認されている。ただし、心筋での遊離アミノ酸増加は骨格筋ほど多くない。つまり、アミノ酸はそれほど分解されていないと考えられる。他方、心筋におけるATPは骨格筋に比べ、大量に産生されていた。これらの結果から、慢性心不全に比べ心臓悪液質ではエネルギー消費が増加し、解糖系が中心となっていると示唆される。ただし、ATPの産生は亢進している。

この状態に対する栄養アプローチを考えた。少量のONSであっても患者の嗜好に合わなければ、摂取してもらえない。ONSの量を増やすと水分が多くなり、飲みづらくなる。これらを考慮しつつ、心臓悪液質には代謝調節に直接関わるアプローチあるいは食欲増進に関わるアプローチが有用と考えられる。

◆心臓悪液質患者には糖とアミノ酸の併用が有用

心臓悪液質の代謝動態の観点からみると、糖のみ補給する介入では栄養状態の改善が難しいと考えられる。とくに重症患者は代謝動態変化による代謝不全をもたらしている。炎症がある状態で糖を補給しても、解糖系の代謝経路だけが亢進されてしまう。これは糖原性のアミノ酸補充でも同様で、乳酸や遊離アミノ酸の増加が生じる。

ただし、糖とアミノ酸をともに補給すれば、TCAサイクルに直接アプローチできる。実際、このような補給を行うと、乳酸が低下する。つまり、TCAサイクルを回す方向にサポートされる。遊離アミノ酸も減少し、骨格筋分解も減少していた。糖とアミノ酸の補給は有効と考えられる。

◆シンバイオティクスによる腸内環境是正も有用

腸内環境を整えることも1つの方法である。エネルギーを増やすために消化吸収できる状態を作っていく。心臓悪液質患者の腸内細菌ではバクテロイデス属が減少していることが分かっている。健常者の腸内細菌は基本的に70~80%がバクテロイデス属で占められているが、心臓悪液質患者ではバクテロイデス属の割合が健常者の約3分の1となっていた。

心臓悪液質患者に1週間のシンバイオティクス投与で腸内環境を整えたところ、バクテロイデス属が健常者と同等に増加した。これによるアウトカムの検討は行っていないものの、心臓悪液質患者に対するシンバイオティクス投与で腸内環境の改善が認められている。

◆食欲増進作用を持つジンゲロール含有栄養剤も有用

心臓悪液質に対する介入として、食品素材による食欲増進も考えられる。がん悪液質患者では、食欲増進目的でグレリンを増やす介入が行われている。そこで、マウスにカプサイシンやジンゲロールを投与し、食欲増進効果を検討した。その結果、これらの投与でグレリンが増加することが確認された。また、脳の報酬系でβエンドフィリンが増加していることも分かった。これらを含むONSを摂取することで、心臓悪液質患者の食欲の改善につながる可能性が示唆された。

カプサイシンはヒトでの投与が難しかったため、ジンゲロールを用いたヒト試験のみ行った。ジンゲロールはジンジャーエキスに含まれている。そこで、4名の心不全患者を対象に、ジンジャーエキス含有のONSを28日間摂取してもらった。予備的な試験でコントロール群を置いていないため、ONSの効果とは断言できないが、体重は維持できた。ただし、乳酸および遊離アミノ酸も低下していた。

また、このONSはコンプライアンスが良好であった。心臓悪液質における食欲増進では、高エネルギー量のONSにとらわれず、代謝機序を考慮し、患者が飲みやすいONSを用いることが有用となる可能性が示唆される。

◆エネルギー代謝が変化している心臓悪液質では早期の介入が必要

心臓悪液質に対する栄養アプローチとして、アミノ酸含有組成のONS使用、シンバイオティクスによる腸内細菌叢改善、食欲増進作用のあるONS使用が効果的である可能性がある。心臓悪液質ではエネルギー代謝が大きく変化している。これに伴う食欲不振、体重減少には、より早期からの効果的かつ効率的な介入が重要である。

 

Part2へ続く...

 

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