第30回日本心臓リハビリテーション学会学術集会|管理栄養士交流会:あなたならどう使う? 心リハ指導士認定と栄養管理

2025.07.02リハビリテーション栄養

国内交流委員会企画2
管理栄養士交流会:あなたならどう使う? 心リハ指導士認定と栄養管理

座長
島田晶子(名古屋ハートセンター 栄養科
松元紀子(聖路加国際病院 栄養科


  • 名古屋ハートセンター栄養科の島田晶子先生によれば、心臓リハビリテーション(心リハ)は多職種による包括的な介入がスタンダードとなり、運動と栄養の相乗効果への期待も大きい。運動処方への適切な栄養介入には、対象者の運動耐容能や活動量を理解したうえで必要エネルギーの充足やその他の栄養素の付加を検討すべきである。心リハにかかわる管理栄養士はまだ少ないが、心リハ指導士取得の知識があれば運動時におけるより適切な栄養サポートの立案が可能となる。日本心臓リハビリテーション学会では2000年に心臓リハビリテーション指導士の資格を創設し、心リハにおけるチーム医療の円滑化を目指している。本資格取得の際には病態生理の理解や疾病管理について、運動処方や栄養管理に至るまで様々な知識の習得が求められるため、指導士資格の取得はどの職種でも包括的な介入が可能となり、心リハチームとしての強みにつながるという。

  • 島田先生は本企画の冒頭で、管理栄養士など心リハに携わる専門職の「心臓リハビリテーション指導士」取得の有効性を示し、同センターで実施しているCPX測定、管理栄養士がその測定結果を栄養面から評価する必要性、心リハにおける具体的な減塩指導として、電子式食塩センサーによる食塩摂取量評価を紹介した。管理栄養士の心臓リハビリテーション指導士取得は自らの知識向上だけでなく、患者のメリットも大きいとし、より多くの管理栄養士が取得することが望ましいとした。

  • 後半のミーティングでは、参加者がチームに分かれて、「栄養評価、食欲評価、食事摂取量把握、食塩摂取量評価の方法」「栄養状態が安定した患者の教育で困ること、心臓リハビリテーションの栄養介入を行うにあたり障害となっていること、それを打開するために必要なこと」について話し合い、結果を発表した。

講演

演者:島田晶子(名古屋ハートセンター 栄養科)

◆心臓リハビリテーションの専門職として心臓リハビリテーション指導士を認定

国内交流委員会企画2開催にあたり、参加者にアンケートを実施。
各施設の心臓リハビリテーションにおける状況や心臓リハビリテーション指導士に対する関心について聞いた(以下、心リハと略)。

Q1.
「心リハで栄養介入に携わっていますか」

A.
「兼任で毎日介入」60%、
「専任で曜日を決めて介入」20%、
「必要に応じて適宜介入」10%、
「介入はしていない、予定はない」10%

Q2.「心リハ指導士に興味があるか」
A.
「興味がある」100%

Q3.「心リハ指導士を取得しているか」
A.
「既に取得をしている」2名、
「将来的に取得予定または現在検討中」9名、
「取得する予定がない」0名。

以上が結果であった。

日本心臓リハビリテーション学会では「心リハでは単に運動療法のみを行っていれば事足りるものではなく、食事療法や禁煙指導を含めた包括的なリハビリテーションを目指すべきであり、そのためには医療専門職間の連携や共同作業が必要となる」としている。2021年に発表された『2021年版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』では心リハを急性期、前期回復期、後期回復期、維持期に分け、それぞれ必要な介入を示している。そのうち前期回復期と後期回復期に食事指導が記され、栄養管理が必要と位置付けられている。
心リハ指導士の資格取得要件は医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士、薬剤師などの11職種で、日本心リハ学会に直近2年以上継続して所属していること、心リハの実地経験が1年以上もしくは心リハ研修を受けており、心リハ指導士認定制度委員会主催の講習会を受験の年に受講していることである。試験内容は心リハに関する専門知識で循環器疾患、運動生理、心リハに関する知識が含まれる。

◆心リハではCPX測定結果をもとに運動処方を決定

安全を確保しながら効果的なリハビリテーションを行うためには心肺運動負荷試験(CPX)が不可欠となる。そのためにはCPX測定で決定された嫌気性代謝閾値(AT)ポイントをベースに効果的な運動処方を行う。CPX測定で得られた重症度やリスクに基づいて安全な運動を実施することが重要である。
体内から体外への酸素供給、体内から体外への二酸化炭素の排出の概念は、ワッサーマンの歯車として説明されている。吸気として肺に取り込まれた酸素は、心臓によって全身の骨格筋に送られ、骨格筋でエネルギーとして使われる。骨格筋で産生された二酸化炭素は、心臓により肺に戻され、呼気として体外へと排出される。
CPX測定では心肺機能、心筋虚血、末梢循環、骨格筋機能、血管内皮細胞機能、貧血、自律神経などの状態を把握できる。測定される項目は酸素摂取量、二酸化炭素排出量、呼吸数、1回換気量であり、これらの数値から運動耐容能、心肺機能などの指標も推定できる。運動負荷試験では労作時の状態が、呼気ガス分析では病態の評価が、ランプ負荷では重症度の評価が可能である。呼気ガス分析から得られた運動負荷試験中の推移はトレンドグラフとして示される。このグラフから様々な指標を読み取れる。また、CPX測定結果から最高酸素摂取量(Peak VO2)やATポイントなどを根拠にした適正な運動処方が可能となる。

◆CPX測定結果や活動強度に応じたエネルギー補充が必要

管理栄養士の立場ではこれらの指標を栄養という視点で考えることも重要である。例えばPeak VO2は心臓、呼吸、筋肉を含めた総合的な体力の指標だが、低値の場合は栄養面での問題を意識すべきである。VE/VCO2 slopeやminimumVE/VCO2は換気血流不均衡状態を示す息切れの指標であり、高値であれば食事時の疲労も考慮し、食事内容を確認することが必要になる。
CPX測定では適正な活動強度がMETsとして示される。その活動強度に対するエネルギー必要量やエネルギー消費量を知っておくことも重要である。一般的に安静時のエネルギー消費は、1時間あたり体重×約1kcalといわれている。また、1METsあたりのエネルギー消費量は体重×METs×時間(h)で算出できる。例えば、体重50kgの人が2.5METsのウォーキングを40分間行った場合、50kg×2.5METs×0.6(時間)で、1時間あたり75kcalのエネルギー消費と算出できる。フレイルの人がウォーキングなどを行う場合、消費したエネルギーを補充する介入が必要になる。
心リハの栄養介入ではCPX測定結果も参考にすることが望ましい。心リハの適応疾患は心筋梗塞、狭心症など多岐に渡る。病態で介入内容が変わるが、注目すべきポイントは変わらない。いずれの疾患でもフレイルの有無、食事摂取量のアセスメント、心不全の合併を確認し、その上で冠危険因子や生活習慣の是正を図ることが基本である。
具体的な栄養介入はフローチャートとして示されている。その内容は①対象者のフレイルの有無をアセスメントし、低栄養の改善を目指す。②安全に運動するために必要なエネルギー量を充足する。③患者の状態に応じて、心不全予防や冠危険因子是正のための介入する。であり、例えば、ⓐ心筋梗塞後も早期再灌流があり予後が問題なければ、冠危険因子是正を中心に介入、ⓑ心不全の合併があれば心不全予防を中心に介入を行う。

◆減塩介入では定量化が重要

近年は高齢者が増加し、減塩の必要性が議論されている。減塩は血圧低下、心不全改善、心血管病リスク減少などの効果が数多くの報告で明らかになっており、循環器疾患のあらゆる病態に減塩が必要と考えられる。回復期や維持期で心リハができていれば、状態が安定していると示唆される。この場合は減塩介入が不可欠だが。食塩摂取量の定量化が重要である。日本高血圧学会でも食塩摂取量を評価した上で目標達成を目指して具体的に指導を実施し、その効果判定を行うことで初めて実効的な減塩指導になるとしている。
名古屋ハートセンターの減塩介入に対するプロトコルでは、電子式食塩センサーで食塩摂取量を測定しながら、食事摂取量の充足率を食事記録から算出し、数値化している。心リハの運動処方はCPX測定結果をもとにアセスメントとモニタリングを行う。同様に栄養介入でも、それぞれのフェーズで可能な限り感覚や主観を排し、定量化・数値化した評価によって介入内容を決定する必要がある。

◆包括的な心リハには管理栄養士の心リハ指導士取得が有効

心リハに携わる管理栄養士に求められるのは①患者の背景や病態を理解して運動耐容能を知ること、②客観的な評価で問題点の抽出と目標設定を明確に定めること、③栄養介入のためのリハビリテーション部門への管理栄養士の配置などのシステムを構築し介入を継続していくこと、である。この実践が安全を確保しながらの効果的なリハビリテーション実施に必要不可欠な専門知識習得に繋がる。
管理栄養士の心リハ指導士取得は有益である。管理栄養士の業務は多忙であり、まとまった学びの時間が取れない現状があるが、資格取得を目指すことで学びの時間を捻出できる。それを実践すれば確実に知識や技術の習得に繋がる。得た知識は自分の糧となり、結果的に目の前の患者に対する介入に役立つ。包括的な心リハや栄養介入を実現するためにも多くの専門職に心リハ指導士に興味を持っていただけると幸いである。

質疑応答

松元●食塩摂取量の客観的な評価として電子式食塩センサーを用いるとのお話があったが、これは尿で測定するのか。

島田●起床時の尿で測定する。24時間の蓄尿が最も正確に食塩摂取量を評価できるが、日本高血圧学会のガイドラインには電子式食塩センサーは24時間蓄尿に比べ、信頼性でやや劣るが簡便であり、患者が自分で測定できるためメリットが多いと記載されている。そこで、当院では積極的に使っている。

松元●電子式食塩センサーは患者が購入して測定するのか。

島田●対象は主に外来の心リハの患者であり、週1回は通院する。そこで、電子式食塩センサーを貸し出し、自宅に持って帰って測定してもらう。

松元●検体を持参するのではないのか。

島田●患者に自宅で測定してもらっている。認知機能が低下している場合など面談の結果、自宅での測定が難しそうな患者には貸し出しできていない。

松元●塩分摂取量は島田先生が外来で評価しているのか。

島田●その通りだ。

フロア●電子式食塩センサーで測定した食塩摂取量と24時間畜尿による食塩摂取量ではどの程度の誤差があるのか。

島田●概ね合致している印象がある。当院では電子式食塩センサーによる尿の測定に加え、患者に食事記録をお願いしている。それと照らし合わせながら、食塩摂取量を総合的に評価している。

フロア●定期的に随時尿から推算式で食塩摂取量を推定しているが、検査技師によると夏の場合、約3gの誤差が出るとのお話だった。電子式食塩センサーの導入も検討してみたい。

フロア●随時尿から田中の式を用い食塩摂取量を推算した結果と、電子式食塩センサーで測定した結果はどの程度の乖離があるのか。

島田●田中の式による結果との比較は行っておらず分からない。今後、検討したい。

松元●聖路加国際病院では24時間蓄尿で食塩摂取量を評価している患者に対して、オーダーミスにより田中の式で推算したことがある。24時間畜尿の結果がより正確な食塩摂取量と考えられるが、田中の式で推算した結果とは3gの差があった。

ミーティング

松元●後半はグループごとに2つのテーマについて話し合い、結果を発表していただきたい。

島田●先生からはアセスメントや客観的評価の重要性のお話があった。電子式食塩センサーの使用例も紹介された。そこで、最初のテーマは「栄養評価、食欲評価、食事摂取量把握、食塩摂取量評価の方法」とした。

カメチーム●栄養評価ではMNA-SF(Mini Nutritional Assessment Short-Form)やGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)を用いている施設が多かった。GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準やCONUT(Controlling Nutritional Status)スコアを使っている施設もあった。また、下腿周囲長や握力を評価しているとの回答もみられた。栄養評価は看護師が行っている施設が多い印象がある。
食欲評価では食事摂取量を指標にする場合が多かった。外来患者のみSNAQ(Simplified Nutritional Appetite Questionnaire)を使っている施設もあった。食事摂取量の把握では、入院中は実際の食事摂取量を評価し、退院後や外来では思い出し法や、食事摂取量を病院食と比較して確認する例もあった。思い出し法で不安がある患者は、食事の写真を撮ってもらうとの回答もあった。食塩摂取量は随時尿で田中の式を使う、問診するなどの回答があった。異なる観点での食欲指標として気分の評価を考えており、POMS(Profile of Mood States)使用を検討したいとの意見もあった。

ウサギチーム●栄養評価の指標としては、病院の場合MNA-SF、MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)、GLIM基準を使う施設が多く、クリニックではMNA-SFの使用が多かった。今後、GNRIを使う可能性があるとの意見もあった。食欲評価ではSNAQとの回答のほか、病棟では患者に直接聞いて食欲を評価しているという回答も多かった。
食事摂取量の把握では、病棟の場合、看護師が入力した主食や副食の摂取率をカルテ上で評価し、気になる患者は直接観察しに行くとの回答が多かった。外来では3日間の食事記録による把握が多かった。塩分摂取量評価方法としては、外来の場合は減塩モニターや塩分チェックシート、随時尿による推定塩分摂取量確認が多く、病棟では塩分チェックシートを用いた評価が多かった。

松元●2つ目のテーマは「栄養状態が安定した患者の教育で困ること、心リハの栄養介入を行うにあたり障害となっていること、それを打開するために必要なこと」とした。

カメチーム●栄養状態の安定した患者の教育で困ることについては、モチベーションの維持が難しいとの回答があった。その場合、体組成など数値化して患者に示すことがモチベーションの維持に繋がるとの意見があった。生活に支障がない場合、患者に食生活の改善が必要な理由を理解してもらうことに難渋するとの回答もあった。管理栄養士の立場から合併症の話をしても、実感が得られず、「やっても仕方がない」と言われる。どこまでBMIを維持するかも課題となる。入院時のあった危機感が、退院後はなくなり、リハビリテーションに来なくなる患者もいる。リハビリテーションや栄養管理の重要性を多職種で連携して指導する必要がある。働き盛りの患者の場合、退院後に復職すると来院しなくなる場合がある。このような患者に対して、どのように継続的に介入するかが課題となる。
心リハにおける栄養介入の障害では、マンパワー不足、管理栄養士のエビデンス不足、他の職種が管理栄養士の栄養指導内容を把握していないとの回答があった。打開策として、管理栄養士がリハビリテーション室で栄養指導を行った結果、栄養指導数が増えた施設もあった。

ウサギチーム●栄養状態の安定した患者の教育で困ることとして、退院直前に元気になると、「好きなものを食べて死にたい、減塩したくない」と訴える患者がいるとの意見があった。また、生活背景から宅配食を導入して減塩したほうがよいが、経済的な余裕や社会的な問題で宅配食を導入できない場合があるとの回答もあった。
心リハにおける栄養介入の障害では、減塩によって食事摂取量が低下するため、減塩を優先するか、ADLを優先して食事摂取量増加を目指すのか判断が難しいことがあげられた。打開策としては患者に体格なども把握した現実的な減塩を行う「適塩」が必要との意見があった。それに応じて、医師と相談しながら利尿剤など薬剤調整も重要との意見も出た。
臨床では管理栄養士が少ない。医師からの栄養指導のオーダーは少ないが、すべての患者でオーダーされると管理栄養士が対応できない問題もある。管理栄養士を目指す仕組みの充実が必要という意見もあった。とくに循環器領域では管理栄養士が関与する加算が少ないため管理栄養士も少ない背景がある。加算が増えれば、管理栄養士不足が解消するのではとの意見が出た。

松元●各チームの発表から、モチベーションの維持が難しいこと、加算が少ないため管理栄養士のマンパワーが確保できない点が共通した課題と考えられる。田中の式による食塩摂取量の評価は腎不全では算定できるが、高血圧では算定できないなど診療報酬の課題もある。今回の意見をもとに、診療報酬の改善を進める必要もある。今後もこのような企画を行いたいと考えている。

島田●今回、初めて管理栄養士の交流会を企画したが、多くの方にご参加いただけた。10年前は800人の心リハ指導士受験者で管理栄養士は2人だけだった。今も管理栄養士の心リハ指導士受験は少ないと思われる。心リハ指導士受験が全てではないが、多職種で介入する心リハにおいて、それぞれの専門職が心リハ指導士を取得することが有益と考えている。今後もこのような企画を通じて、包括的な心リハ実施と管理栄養士の心リハ指導士取得を広める活動を進めていきたい。

 

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