第67回日本透析医学会学術集会・総会 「看護師が看る栄養管理・内服管理」

2022.12.22フレイル・サルコペニア , リハビリテーション栄養 , 栄養剤・流動食 , 栄養素

第67回日本透析医学会学術集会・総会が2022年7月1日(金)から3日(日)の3日間、神奈川県横浜市西区の「パシフィコ横浜」で開催された。会長は東京女子医科大学 血液浄化療法科の土谷 健 先生が務めた。本大会のメインテーマは『透析医療のSDGsを求めて』とされた。ここでは、7月3日(日)に開催されたワークショップ25の概要について報告する。

ワークショップ25
<透析医療におけるプロフェッショナリズムのSDGsを求めて>
看護師が看る栄養管理・内服管理

司会:水内恵子(医療法人心信会池田バスキュラーアクセス・透析・内科
   松岡由美子(医療法人財団百葉の会上野透析クリニック

【講演要旨(編集部)】

薬剤師・看護師による薬剤管理

鎌田直博(医療法人あかね会土谷総合病院薬剤部

◆診療報酬改定で多職種連携による医薬品の適正使用を推進

2022年の診療報酬改定では各職種が高い専門性を十分に発揮するため、勤務環境を改善し、タスク・シェアリングやタスク・シフティングによるチーム医療を推進することとされた。また、近年は医薬品の供給が不安定になっていることから、患者にとって安心、安全な医療の体制構築についても取り上げられている。薬剤師の職務として、医薬品の安定供給確保は重要である。診療報酬改定でも地域の薬局のかかりつけ機能が評価され、地域の薬局と病院薬剤師の連携を推進することとされた。
医薬品の適正使用の推進では医師、病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働による取り組みに加えて、チーム医療として看護師や臨床工学技士の関与も必要となる。さらに、診療報酬改定では後発品の使用を促進するため、バイオ後発医薬品使用推進が加えられた。

◆医薬品の適正使用には薬剤師による患者への説明が必要

薬剤師の第一の職務は医薬品の適正使用である。1900年代に21世紀の医薬品のあり方に関する懇談会が行われ、医薬品の適正使用についても議論された。この懇談会では、医薬品の適正使用を実現するためには医師の的確な診断と、それに合わせた最適な薬剤および剤形の選択、適切な用法および用量の選択、患者への薬剤の説明による正確な使用の担保、薬効や副作用の評価が必要とされている。
適格な診断のもとに薬剤が適切に選ばれていても、患者の用法、用量が間違っていれば、副作用や有害事象が発現する可能性がある。以前の患者への薬剤の説明は「この薬を飲んでください」などわずかであった。医薬品の適正使用の観点から、薬剤師が患者に薬剤について丁寧に説明し、十分な理解を得る必要がある。さらに、患者が薬剤を正確に使用しているか確認するともに、薬効や副作用を評価したうえで、この薬剤が妥当であるのか、違う薬剤が適切であるのかなどフィードバックしながら、患者の症状を改善することが求められる。
薬剤師は医師との協働により最適な薬剤の選択を補助し、患者に薬剤を適切な用法、用量で提供するとともに、薬効や副作用の説明と評価にも関与する。薬剤師は患者の薬剤に対する理解を促進し正確な使用を支援すべきだが、現状は対応が十分ではない。薬剤師は、最も密接に患者に関わっている看護師の協力を得ながら、この分野もカバーしなければならない。

◆ポリファーマシーと服薬アドヒアランス向上も重要

近年、医薬品の適正使用においてポリファーマシーと服薬アドヒアランス向上が注目されている。ポリファーマシーは単なる薬剤の多剤併用と考えられがちだが、誤りである。薬剤が増えると服薬過誤、服薬アドヒアランスの低下、薬物有害事象のリスクが高まる。ポリファーマシーとは単に薬剤数が多いことではなく、多剤併用で起きる事象を指す。
例えば、薬剤を処方した結果、有害事象や副作用が起き、それをカバーするため新しい薬剤を処方するなど、不要な処方や過剰重複投与が起きている。また、患者が薬剤を飲み忘れたため、検査結果が悪くなり、新たに薬剤を加えるなどで薬剤数が増えることもある。単なる薬剤の飲み忘れでも、医師や薬剤師が把握できていないと、薬剤数が多くなってしまう。これらの残薬が増える一連の流れをポリファーマシーと呼ぶ。

◆透析患者は多くの薬剤を服用しており、服用方法も複雑

残薬が発生する理由で最も多いのは外出時の持参忘れといわれている。土谷総合病院で調べた残薬の原因でも外出時の不携帯が最も多かった。そのほかの残薬の原因としては、食事が不規則、仕事の都合、服薬時間が特殊、などとなっている。服薬時間の特殊と外出時の不携帯は関連している可能性がある。とくに透析患者では、薬剤の種類や量が多く、飲む時間が複雑であり、用量や回数を間違えているケースがある。
通常の患者では薬剤が多くても、食後の服薬3回と就寝前の服薬で1日4回となる。しかし、糖尿病患者では、食前の服薬や食直前の服薬が加わる。慢性腎臓病(CKD)患者では食直後や食間もある。透析患者では食間の服薬はなくなるが、透析中や透析前後の服薬が増えてくる。透析患者の薬剤数は一般の患者に比べると多く、1日16回もの服用が必要になることもある。

◆とくにリン吸着薬の服用方法は複雑で、患者に十分に説明する必要がある

一般に調剤数が多いと、服薬も複雑になる。当院は透析患者で調剤数が圧倒的に多く、とくにリン吸着薬が多い。リン吸着薬には食直後服用と食直前服用のものがあり、食事中のリンを薬剤に吸着させて、化学的に取り込み、糞便中に排泄する作用を持つ。そのため、正しい時間に服用すること、食事摂取量により用量を変えること、食事を摂取しない場合や飲み忘れた場合に時間が経過してから服用しても効果がないことなどを患者に説明する必要がある。
このような説明によって、患者も食事に合わせて服用する理由、食事を摂取しない場合には服用しなくてもよい理由が理解できる。朝食を摂らない患者では、医師に処方を変えてもらうことも可能になる。

◆おわりに

患者に薬剤を正しく服用してもらうためには、薬剤を理解してもらう必要がある。薬剤について患者に説明する際には、なぜ飲まないといけないか、いつどのように飲むのか、指示とは異なる時間に飲んだらどうなるかまで詳しく説明をする。
薬効や副作用の評価も重要である。副作用が起きた場合は、患者からのフィードバックが欲しい旨も説明する。また、副作用やポリファーマシーの回避は、薬剤師や医師だけでできるものではなく、看護師や臨床工学技士との連携も求められる。

 

保存期CKD患者への服薬・栄養管理支援

高井奈美(名古屋大学医学部附属病院看護部

◆CKD管理では患者によるセルフケアマネジメントが重要

慢性腎臓病(CKD)を管理するためには、食事や運動、薬物療法などによる生活習慣の適正化が重要である。CKDは高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に関連しており、生活習慣の見直しや改善が必要になる。患者や家族がCKD管理を成功させるポイントは、セルフケアマネジメント(自己管理能力)の向上である。
セルフケアマネジメントとは、患者が医療者と協同して、疾患や症状から生じる課題に対して主体的に取り組むことをいう。疾患の予防的および治療的なセルフケア活動であり、患者は新しい知識のもとに、その疾患と上手く折り合いをつけながら自分の生活に療養行動を取り入れていくことになる。その過程で、患者は、医療者とともに問題解決アプローチや行動変容、自己効力感などを活用しながら療養生活を送っていく。

◆セルフモニタリングはケアマネジメントの根幹をなす

セルフモニタリングは、患者が自身の状況を測定・記録することで、自己の状態や症状に意識を向ける行動である。CKDは自覚症状が乏しいため意識的な管理が難しく、セルフモニタリングが自己管理を成功させるポイントになる。CKD患者のセルフモニタリングでは、患者にノートを用意してもらい、血圧測定、体重、食事内容、服薬状況などを書き留めてもらう。
セルフモニタリングの効果については、患者自身による家庭血圧記録の取り組みが、収縮期血圧低下、腎機能進行抑制、塩分やたんぱく質の摂取量低下をもたらした、という報告がある。

◆看護師による栄養管理は食事療法の実現を助ける

保存期CKDにおいては、看護師による栄養管理の関与によって患者が食事療法の重要性を認識し、塩分制限とたんぱく質制限を実現できる可能性がある。とくに末期腎不全の時期は、たんぱく質制限によって、尿毒症症状の原因となる尿素窒素の抑制につながる。たんぱく質制限がCKD進行を予防するとのエビデンスはないが、糖尿病初期におけるたんぱく質制限は微量アルブミン尿の減少に関与しており、CKD保存期を維持するためには食事療法が不可欠と考えられる。
また、CKD患者への食事指導は腎機能の維持、改善に効果的であり、塩分制限は腎機能の維持に有用とされている。高齢者ではたんぱく質制限によるサルコペニア、フレイルが危惧されているが、適切なエネルギー摂取と栄養指導を繰り返し行うことで、栄養状態に影響を及ぼさずQOLが維持できるとされている。

◆適切な塩分摂取量・たんぱく質摂取量を、
 24時間畜尿とセルフモニタリングの食事記録と照合し把握

食事療法の実施では、患者の塩分・たんぱく質摂取量の具体的な把握が難しい点がネックになる。CKD患者の食事療法では24時間蓄尿とセルフモニタリングが有用である。
セルフモニタリングで記録した食事内容と、24時間蓄尿から算定された推定塩分摂取量、推定たんぱく質摂取量を照合し、何をどれくらい食べるとその数値になるか具体的に振り返ることによって、適正な摂取量が理解できる。とくに外食での塩分やたんぱく質の摂取量は把握が難しい。患者とともに外食の有無や外食時のメニューを確認することが重要である。

◆生活を楽しむ食事への配慮、ポジティブフィードバックの実施

看護師の栄養指導では、CKD管理を目的とした食事管理が基本だが、生活を楽しむ食事として支援する必要がある。患者の視点で食事内容を理解しなければ、患者は一方的に制限されていると思い込んでしまう。食事内容の把握も、患者が進んで記録するように促すことが重要である。
食事療法を実施する際の知識や技術の提供では、検査データの見方の指導がポイントとなる。とくに腎不全、CKDの保存期では、たんぱく質摂取によって尿素窒素が上昇し、尿毒症症状が出現することがある。これを防ぐには、検査データと食事内容の照合が必要になる。
さらに、食事療法の行動評価では、患者の言葉に関心を持ち、できている点を見つけてほめるポジティブフィードバックも重要である。患者に「上手くできていますが、これは何をされたのですか?」など患者の工夫に対して質問すると、患者は「たぶんあれをやったからできたと思う」など自分の言葉で可視化できる。これにより、次の行動につながりやすくなるといわれている。

◆高齢者ではサルコペニア・フレイル予防を念頭に置く

高齢者ではサルコペニア・フレイル予防の観点から、必要なエネルギー量を確保しながら食事療法を進める必要がある。CKD患者では腎機能の低下と共に四肢の骨格筋量が低下していく。さらに食事療法でも筋肉量が減少する。CKD患者のサルコペニア有病率は男性16%、女性8%といわれている。
筋肉量が低下すると、歩行困難となり、さらに仕事や家事、地域行事への参加も困難となって社会的な役割が低下し、気力の低下を起こしやすい。このような状態はフレイル(虚弱)状態であり、しっかり食べて筋肉の維持には適切なたんぱく質量を摂っていただき過剰な場合に注意を促す程度がよい。保存期を有意義に過ごすためにも、サルコペニア・フレイル予防に目を向ける必要がある。

◆高齢者には服薬アドヒアランスを高める支援も行う

CKD患者においてはCKDの原因疾患の管理や低下する腎機能の保護を目的として薬物療法が行われる。こうした薬剤によるポリファーマシーのリスクから、複雑な服薬管理が求められる。腎機能の低下に対する薬物療法では、怠薬が症状の出現やCKDの重症化につながることもあり、患者の服薬アドヒアランスを高める支援が重要になる。
60歳以上の女性では薬剤の飲み忘れが多いという調査報告もある。CKDや腎不全患者では、2020年末の透析患者総数347,671人のうち3分の1が75歳以上、60%以上が60歳以上の高齢者である。透析導入の平均年齢も70.88歳と高齢化している。
透析患者の高齢化に伴い薬剤の服用が難しくなる問題が生じやすいことがわかる。これはポリファーマシーによって、薬剤の服用法が複雑化していることも原因といわれている。

◆医療者との関係性を維持し、サプリメント使用や副作用の有無を確認する

CKDではステージが進むにつれて薬剤の種類が増えていく。また、腎機能悪化に対する不安や、腎代替療法への恐怖も増大する。患者は藁にも縋る思いで、サプリメントや民間療法に頼る場合もある。サプリメントや民間療法が低下した腎機能では十分に尿排泄が行えないことで、害になることを患者に説明する必要性がある。
さらに、患者がどの程度薬物療法について理解しているか把握し、服薬の必要性に対する認識の確認も重要になる。新しく処方された薬剤で気持ち悪くなった、吐いてしまったなど副作用で嫌な体験をしている可能性もある。副作用は患者に教えてもらわないと、対応できない。副作用の把握には患者が話しやすい環境づくりや医療者との良好な関係性が求められる。これはサプリメントの使用の把握、服薬アドヒアランスを高める支援にもつながる。

◆患者の薬物への理解度を確認し、必要な支援を多職種で実施

患者の薬物に対する認識を評価する基準としてコンプライアンスやアドヒアランスがある。コンプライアンスは、指示された養生法に対して従うこと、つまり医学的な助言や健康上の助言と一致する行動がとれるかどうかであり、それがとれなければノンコンプライアンスとされる。コンプライアンスの基軸は医療者側にあるといわれており、患者が医療者の指示を正しく実施しているかがポイントになる。
アドヒアランスは、医療者が推奨する薬物療法や食事療法、生活調整などについて、患者自身が納得して行動に移せるかが基準とされている。つまりアドヒアランスは患者のモチベーションや思い、療養法に対する考え方を指し、アドヒアランスの基軸は患者側にあるといわれている。
服薬アドヒアランスを高める支援としては、医療者との関係が重要になる。まずは患者の疾患や薬物療法に対する理解や状況への思いを確認し、自覚症状や薬物による体調の変化などの体験を確認する。医療従事者は患者の訴えを聞き、処方薬の調剤数の検討や薬物の飲みにくさ、や形状に対する調整を行う。服薬方法、時間などが複雑化している場合は、患者が飲みやすい時間帯に一包化にするなどの調整も行う。
薬剤の飲み忘れがある場合は、患者が気づくようにアラームを設定するなど具体的な指導をする。確実な服薬のための工夫では、一包化、お薬カレンダー、メモの活用に加え、医療従事者からの電話も考えられる。現在は訪問薬剤指導で薬剤師の指導が自宅で受けられるようになり、残薬の管理もできるようになった。
服薬管理は多職種で関わることも重要である。CKD患者に対する服薬管理において多職種の関わりを検討した報告では、複雑で怠薬につながりやすいCKD患者に多職種で関わることで怠薬予防につながったことが明らかになっている。

◆おわりに

CKD患者が服薬・栄養管理を継続するための効果的な支援としては、患者自身が実践している取り組みの効果や身体的変化を感じることがモチベーションアップになり、有効である。看護師は「療養行動が上手くできている」という評価を患者にフィードバックして、患者がモチベーションをアップできる支援の方法を工夫して提供する必要がある。
CKDに関わる職種は多く、多職種連携の機会に恵まれている。積極的に管理栄養士や薬剤師と連携を図りながら患者の生活を支援することも求められる。

 

施設で透析療法を受けている患者や家族への服薬支援

伊藤美和子(社会医療法人母恋天使病院

◆透析患者は多くの薬剤を服用し、服薬時間も複雑

2020年末現在、日本では国民363人に1人が透析を受けている。透析導入の平均年齢は70.88歳(男性70.19歳、女性72.48歳)で、年々高齢化している。
施設で透析を受けている患者を対象にした調査では、慢性腎臓病(CKD)の原疾患は糖尿病が40%以上と多かった。また、死因は免疫力の低下を背景にした感染症が多く、次いで心不全となっている。
透析患者は多くの薬剤を使用しており、食前、食後、食間など服薬時間も複雑で、服薬回数は1日9回以上に及ぶこともある。一方、日本は世界でも類を見ない超高齢化社会であるとともに核家族化が進み、老々介護世帯が増えている。高齢者を高齢者が介護するには限界がある。透析患者も例外ではなく、アドヒアランスが得られにくく、患者の自己管理をどのように支援していくかが課題となっている。

◆CKD患者では原疾患に加え併存疾患の治療目的で薬剤が増える

CKDの主な原因として、加齢、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満、慢性糸球体腎炎がある。これらが悪影響を及ぼすことで、末期腎不全や心血管障害が引き起こされる。
心臓と腎臓は関係しているという心腎連関という概念がある。慢性腎臓病は、体液調節障害や高血圧、貧血などを引き起こし、心血管疾患を増悪させる。内皮障害は動脈硬化を悪化させる。また、心血管疾患が悪化すると、慢性腎臓病も悪化する。これらの進行を抑制するために多くの薬が処方される。

◆透析不足による症状の改善にも薬物療法が行われる

血液透析や腹膜透析は老廃物の除去、水分の調節、電解質の調節、血液pHの調節の4つの機能を補う。これ以外の機能の異常に対しては、薬物療法が必要になる。透析不足によって、高血圧、貧血、掻痒感などの様々な症状出現にも薬物療法が必要となる。
透析不足を補うために透析条件や方法を調整するという考え方もある。しかし、血液透析で透析効率を上げるためには、回数を増やす、透析時間延長などの必要があり、限界がある。近年は水質管理が向上し、多くの施設でオンライン血液濾過透析が可能となり、全国的に普及した。そのため透析効率は上がりつつある。それでも透析は健康な腎臓の代替とはなり得ず、薬物療法が必要となる。
透析患者は4〜10剤の薬剤を服用していることが多い。とくに糖尿病を合併する患者は多くの薬剤を服用している。多くの透析患者は降圧剤やビタミンD製剤、カルシウム製剤、リン吸着剤、下剤に加えて糖尿病の薬を飲んでいる。

◆高齢者では認知機能の低下により服薬アドヒアランスが低下する

高齢者では認知機能が低下し、複雑な服薬が困難になる。記憶はエピソード記憶、意味記憶、展望的記憶、感覚記憶、短期記憶、非陳述記憶など多くの機能から成り立っている。60〜80歳の高齢者において、日常生活で記憶に関して困った経験の頻度を評価した報告では、エピソード記憶、意味記憶の一部、展望的記憶の衰えが明らかになった。
エピソード記憶でも過去の出来事や内容を思い出す能力は、時間と場所の詳細を含む複雑な記憶で、加齢に伴い低下することが多いと報告されている。しかし、昨日の夕食の内容、先週訪問した場所などシンプルな内容について記憶する能力はあまり低下しない。つまり、高齢者では記憶が複雑になると思い出しづらくなる。
知っているはずの有名人の名前が出てこないなど意味記憶の衰えは、年齢を重ねるにつれて増加するといわれている。しかし、他人からその有名人の名前を聞くと「そうだった。」と、すぐに解消する。これは記憶が残っているが、思い出せないために生じる現象である。
展望記憶が衰えるとこれから行うことを忘れてしまう。例えば、物を取りに行ったが、何が必要だったか思い出せないなどの現象が起きる。服薬しようと思ったがうっかり忘れてしまう現象も、展望記憶の衰えに含まれる。
高齢者でも感覚記憶や短期記憶、非陳述記憶は衰えないといわれている。高齢者は長年の知識や経験の蓄積があり、専門性の高い技術持っているなど、若年者より優れている能力も多い。

◆患者が服薬できない原因を探り、必要な支援を実施

服薬支援の実施には、患者の全体像を捉える必要がある。そのために透析効率、ドライウェイト、視力、聴力、認知力、運動機能、嚥下機能、服薬の必要性の理解度、患者や家族の想い、生活リズム、飲み忘れの頻度、生活環境や家族構成、支援者の有無などを聴取する。次に服薬できない理由を考える。単にうっかりしていただけか、度々飲み忘れるのか、服薬する量が多すぎるのか、回数や方法が分かりづらいのか、多忙すぎて飲み忘れるのかなどをチェックする。
実際の服薬支援では、透析効率向上やドライウェイト調整などの透析条件調整による減薬を検討する。また、患者の定期の血液検査結果をもとにカンファレンスなどで薬物療法の効果を確認し、服用量や回数を調整する必要もある。合剤や口腔内崩壊錠、貼り薬などへの剤形変更、一包化して薬袋に服薬のタイミングや目印をつける、服薬ボックスやカレンダーを準備するなどの工夫も有効である。最近は、服薬時刻にメロディーや点滅で知らせる機能、飲み忘れをメールで知らせる機能がある服薬支援ロボットも市販されている。また、基本的なことだが、病態整理や服薬の必要性を再教育し、意識付けしていくことも大切である。

◆おわりに

質の良い透析を行い、ドライウェイトを調整することで、薬剤を減量できる可能性がある。服薬ロボットなどの活用で服薬を思い出しやすくする工夫も有用である。ライフスタイルに合わせて、服薬を忘れにくい環境を作る工夫も求められる。患者は薬剤を飲み忘れる自分に対して、自己肯定感を低下させることもある。患者の思いに寄り添い、支援を考えることが大切になる。看護師は、加齢の影響を受けている機能と、比較的保たれている機能、身体機能、生活状況などの患者の全体像を的確に捉え、アセスメントをして支援に繋げていく役割がある。

 

在宅透析療法を受ける患者への支援

桜井麻紀(どい腎臓内科透析クリニック

◆在宅透析治療開始前には多くの指導が必要

在宅透析療法の適用には、積極的な理由として自己管理能力があるが、通院困難も選択理由となる。在宅透析治療には腹膜透析と血液透析がある。いずれも医療従事者ではない患者が治療の主たる管理者となって自宅で透析を行うため、様々な準備が必要となる。診療報酬改定の効果もあり、在宅透析の患者数はやや増加しているが、全体としては3.2%と少ない。
在宅透析治療を始める時に、患者は自宅で治療するための必要な知識や技術を学び、治療時間を生活に組み込むべく、1日のスケジュールを考える。在宅透析医療のための指導内容は多いが、近年は在院日数の短縮化が推奨され、指導の内容を十分に確保することが難しい。導入を担う多くの施設では指導をもれなく行うため、クリニカルパスやチェックリストなどを利用している。

◆生活のなかで透析を行うために必要な支援を考える

在宅透析患者に対する支援では、患者を生活者として看ることがポイントである。腹膜透析患者は、血液透析患者よりも食事制限が緩和されるものの、透析液貯留注による腹部圧迫感や持続的なブドウ糖負荷により食欲低下が生じやすい。腹膜透析患者では、透析液の成分や尿量を加味した食事管理がよりよい療養生活につながる。
在宅の血液透析患者は強い自己穿刺へのストレスがある一方で、治療時間や間隔を調整することで食事制限を緩和できる。こうした治療の特性を含め、患者は多くの情報を取捨選択しながら、自分なりに工夫して実践している。

◆生活の一環としての食べることにアプローチする食事指導

看護師は栄養の専門家ではないため、患者の生活の中の「食べる」部分にアプローチすることになる。そこで、体重変化を把握するとともに、好き嫌い、よく作るメニュー、最近よく使う食材などを質問し、食生活を把握する。食べることは動くことに影響するため、活動状況や気力の変化も確認する。昼食の摂取状況聞き取りからも活動状況を推測できる。
こうした患者との関わりは、助言の場であり、患者が弱音を吐く場であり、承認される場でもある。看護師は在宅の患者の生活のリアルを聞きながら、患者の課題が明確になるように関わっていく。

◆患者の心理状態を想定しながら、話を聞き、支援を進める

在宅治療の場合、患者と直接関わることができるのは、月1〜2回の外来受診か、訪問看護の場合は週数回の訪問時のみである。外来受診では待ち時間を活用することが多いが、診察待ちの患者は緊張や不安がかなり強い。複雑な感情の中で待合室にいる患者に声を掛けることになる。とくに採血結果を知らせる際は、患者の日常の成果が反映されるため、配慮が必要となる。
人は患者のことを話す時、少し良く見せたり、逆に自分を卑下する傾向がある。食べた量を少なめに話す、できている事をできていないと言うこともある。これは患者の自信や不安の表れといわれている。
患者の話をしっかり聞くことを入口に、患者の本音の部分を探りつつ、状況によって管理栄養士と連携しながら、栄養指導を提案する。デジタルに抵抗はない患者については、YouTubeの栄養指導の動画や食事の写真から栄養成分が表示されるアプリなどを紹介して選択肢を増やし、少しずつ考える力を刺激することも一策である。

◆業者からの情報から患者の状況を予測できる

患者や家族の自己管理能力は個人差があり、生活様式も様々である。薬剤の宅配や機械のメンテナンスなどを行う業者は、患者宅を訪問した際の機器の取り扱いや薬剤在庫の管理状況を見ることができる。業者から宅配時の様子を確認するなど連携し、患者や家族の状況を予測することも重要である。

◆服薬コンプライアンスやアドヒアランスは丁寧に確認する

維持透析の患者は安定した治療の継続、腎臓機能の補完、合併症対策などの目的で多くの薬剤を服用しており、服薬管理の支援が必要になる。在宅透析患者でも、患者や家族の薬剤管理能力、患者の服薬に関するコンプライアンスやアドヒアランスなどをアセスメントする必要がある。
医療従事者は日常の業務の中で、患者に「薬を飲めていますか?」と質問することが多い。多くの場合、「大丈夫です」、「飲めています」と返事される。しかし、ジェネリック薬への変更や用量の変更時、かかりつけ薬局を変えた時などは、処方薬の効能が同じでも名前が異なるため別の薬と勘違いすることもある。残薬と共に服用して過剰服用になった、という話は多い。実際に患者が薬剤を飲む場面を見ることはできず、残薬の確認もできない。そこで、繰り返しになったとしても、お薬手帳の内容を確認したり、検査結果と薬剤をひも付けしながら服用の目的や効果を伝えることが、正しい服用と服薬の継続につながる。また、病院の薬剤師やかかりつけ薬局とは普段から連携を図ることも重要である。

◆減塩やリン吸着剤服用に関する指導は徹底する

患者との会話では「薬を飲んでも血圧が高い」、「リンの薬は効いているかよく分からないから飲んでいない」という話もよく聞く。減塩とリンの管理は、合併症予防や健康寿命延伸につながる。確実な服薬に向けて長期的な利点を繰り返し伝える必要がある。
最近は栄養意識の高まりもあり、スーパーマーケットでも減塩食材をよく見かける。無添加食品、保存料未使用と表記されているものも増えている。しかし、加工品や調味料を使用しない料理は技術が求められ、コストや時間を要する傾向は否めない。
添加物のリン酸塩は多くの食材に含まれており、リン酸塩はたんぱく質と結合することなく速やかに身体に吸収される。そのため、リン吸着薬を服用する際は、そのタイミングの確認をしたり、茹でこぼしや水にさらすことで効果があることを説明する必要がある。また、吸着したリンは便から排出されるので排便習慣も確認したい。そして食べることがつらいことにならないよう、その人らしく生活できる身体づくりを支援する必要がある。

◆高齢患者の一人暮らしや介護者の高齢化が増加

令和2年版高齢社会白書』では総人口の28.4%が高齢者と報告されている。2022年現在高齢者1人を現役世代2人で支えているといわれている。高齢者夫婦のみの世帯や高齢者の独居も増加傾向にある。
『国民生活基礎調査』によると、介護者の割合は、同居者が54.4%で最も多く、次いで別居の家族などが13.6%となっている。このうち同居者の続柄は配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%であった。介護者の年齢は60〜69歳が最も多いが、40歳未満の介護者も少数ながらいる。こうした高齢化に伴う介護の現状は、透析医療を支える周辺環境としても考慮すべき課題である。

◆透析患者も高齢化し、サルコペニアやフレイル、
 口腔機能低下、認知機能低下が顕在化

日本では透析患者の高齢化が進んでいる。高齢化により、透析患者でもサルコペニア、フレイルが顕在化してきた。嗅覚や味覚の変化から食への関心が低下し、歯の欠損や合わない入れ歯の装着で十分に噛めない透析患者も増えている。舌の機能低下は味覚に加え、嚥下にも影響する。臨床現場では口腔内に食物残渣や溶けかかった薬剤が残っている状況もみられる。近年は口腔ケアの重要性が注目されているが、歯磨きは指の巧緻性が求められ、実は緻密な行為で、難易度が高い。
高齢者では認知機能も低下する。在宅透析患者では自宅の治療や服薬の失念が体調悪化に直結する。また、脳機能の低下に伴い感情コントロールが困難になると、介護者や支援者との関係性に影響することもある。これらの複合的な要因が在宅透析患者の自尊心を傷つけ、意欲や活動の低下を招き、在宅での治療継続を困難にしていく。また、患者と家族のみで透析を管理することは、大変な思いを共有する他人がいないことから孤立につながる。在宅透析患者の支援においては、療養行動の基盤に影響する要因に対するアプローチが求められる。患者や家族の気持ちのタイミングを見計らいながら、いつでも医療者が協力できる準備があることを伝える必要がある。
今後はあらゆる人々が活躍する社会が求められている。透析患者は臓器障害を有しているが、これまで培った経験に障害はない。労働人口が減少していく中で、透析患者も人材として活用できる社会の構築が期待される。そのためには、患者の活躍の源となる食べることや体調に影響する服薬への支援が必要となる。
健康寿命延伸の観点からは、臨床現場で医療従事者がリスク回避や消耗の最小化を目的に先回り的な看護をすることがある。しかしこれにより患者の可能性を狭めているとも考えられる。患者ができることと医療従事者の支援が必要なことについてアセスメントを行ったうえで関与することが重要である。
透析患者は今まで当たり前にできていたことも、誰かに頼る必要が出てくる。これにより、患者はもちろん、家族も複雑な思いを抱える。そうした患者や家族が信頼できる支援体制の構築が必要になる。そのためには、かかりつけの病院だけではなく、かかりつけの薬局や栄養相談窓口との連携が重要である。さらに、患者が社会生活において訪問するスーパーマーケットや美容室、集会の場などもピア(仲間)・コンサルテーションの場として活用していくことが望まれる。

◆おわりに

どい腎臓内科透析クリニックは2022年の5月に開院し、広島市の南側、広島の海の玄関口となる広島港に近い場所に位置している。治療方針として「常に謙虚な姿勢で最新の医療を学び、全ての人が納得できる偏りのない治療の実践で、患者とスタッフの間の良好な関係、強い絆の構築、医療従事者に守られているという安心感の提供。」を掲げている。今後も患者の生活に密着したかかりつけになるよう精進していきたい。

 

腎移植患者への服薬・栄養自己管理に向けた
移植コーディネーターの介入

山本恵美(日本赤十字社福岡赤十字病院看護部

◆腎移植は高いQOLを維持できるが、服薬管理や栄養管理が不可欠

腎移植は腎代替療法の中でもQOLを維持できる治療法である。移植腎の長期生着には適正な服薬管理、栄養管理が不可欠である。腎移植後の自己管理指導は、個々の医学的背景や自己管理能力に応じた介入が必要となる。
福岡赤十字病院は、病床数511床の総合病院で、年間約15例前後の腎移植を行っている。移植後外来は月曜と木曜の週2回診療で、外科医2名と腎臓内科医3名で担当している。レシピエント移植コーディネーターは専従で1名配属されている。
当院ではレシピエント移植コーディネーターが、腎移植患者の初診から退院後の外来まで一貫して担当し、移植医療スタッフへの情報提供や、移植チーム内の調整役を担っている。

◆レシピエント移植コーディネーターは移植患者に対する指導と支援を行う

レシピエント移植コーディネーターの理念は、移植待機中や移植実施後の患者に対して、継続した生活全般の指導と精神的支援を通して、患者の全身状態を常に把握し、医師と患者や家族の橋渡し的存在として機能することで、移植医療の成績の向上に資する存在となることである。2011年にはレシピエント移植コーディネーターの拡充を目指し、認定レシピエント移植コーディネーター制度が開始された。現在、全国で約150名の認定レシピエント移植コーディネーターが活動している。
レシピエント移植コーディネーターの業務は多岐にわたる。病棟では患者の状態アセスメントと治療計画の把握、カンファレンスへの参加と多職種への情報提供、担当看護師の教育指導、学習会の開催、薬剤師や栄養士へ服薬指導や栄養指導の依頼、担当看護師と協働で退院指導に携わる。外来では初診日より移植患者への説明、献腎移植登録業務、術前スケジュールの立案、術前オリエンテーションなどを、移植後外来では、診察前の事前問診、患者からの緊急時の電話対応、移植後患者への生活指導などを行う。

◆移植手術への準備に3か月かけ、移植後も継続的に受診してもらう

当院では生体腎移植を希望する患者にはまず移植外科を受診してもらう。その後、ドナーとレシピエントの組織適合性検査、クロスマッチを行い、問題がなければドナーの術前検査、レシピエントの術前検査を行い、おおよそ3か月程度かけて手術の準備をする。移植手術での入院は約3週間となる。
退院後、6か月間は週に1度受診してもらい、6か月〜1年間は2〜3週間に1度受診、移植後1年を経過すれば1〜2か月ごとに1度の受診となる。

◆免疫抑制剤の服用方法、免疫抑制剤の作用に影響を及ぼす食品や薬物を指導

腎移植後患者は、移植腎が生着している限り、免疫抑制薬を飲み続けなければならない。カルシニューリン阻害薬、代謝拮抗薬、ステロイドの3剤を併用して内服する。免疫抑制薬は、血中濃度の維持のため決められた時間に服用することが重要になる。飲み忘れないことが原則だが、飲み忘れた際は24時間ごとの免疫抑制薬の場合、飲み忘れに気づいた時が12時間以内であれば直ちに内服し、12時間以降であればスキップするよう指導している。
グレープフルーツなどの一部の柑橘類は、フラノクマリンという苦みの成分がカルシニューリン阻害薬の血中濃度を上昇させるために避けてもらう。摂取できない柑橘類については「スウィーティーは摂取できませんが、温州みかんやオレンジの摂取は可能です。」と具体的に紹介する。品種改良などで不明確な柑橘類は、基本的には摂取しないように指導している。また、セントジョーンズ・ワート(西洋オトギリソウ)が含まれるサプリメントやハーブティーは、カルシニューリン阻害薬の血中濃度を低下させるために避けてもらう。
市販薬は移植腎への負担となる可能性があるため禁止してもらい、他院で薬を処方される場合は、当院に処方可能か確認してもらう。抗生物質のクラリスロマイシンなどは、免疫抑制薬により血中濃度が上がる。そのため歯科治療などの際は禁止薬が記載されたプリントを持参してもらっている。

◆免疫抑制剤の薬品名、投与量は入院中から患者に把握してもらう

免疫抑制薬は退院後も外来で徐々に減量するため、当院では薬品名、投与量を患者自身にも把握してもらっている。例えば、外来受診の際に医師から「ミコフェノール酸モフェチルを今日の夜から500mgから250mgに減らしてください」などと指示している。
また、当院では、入院中に毎日変動する免疫抑制薬の量を患者自身で自己管理表に記載してもらっている。また、患者は、移植後より免疫抑制薬を看護師と確認し、自身で配薬することで、内服している薬品名や投与量を把握できるようになる。

◆腎移植後も適正なエネルギー摂取量の食事を推奨

腎移植後は、厳しい食事制限から解放され、味覚改善やステロイド内服による食欲亢進などから肥満やメタボリックシンドロームをきたしやすくなる。また、免疫抑制薬服用により、高血糖や脂質異常のリスクが高まる。
このため、食欲に任せた食事は肥満に繋がり、肥満は移植腎機能の低下につながる。腎移植後は基本的に、目標体重に応じたエネルギー摂取を指導しているが、移植腎機能が低下している場合には、CKDステージに応じた食事内容を推奨している。

◆腎移植直後患者には主菜を2倍にした食事を提供

腎移植直後は、術後の状態やステロイド内服で、異化亢進状態となる。腎不全が改善した患者の創傷治癒を促進するためには、十分なエネルギー摂取、たんぱく質摂取が必要となる。30歳の男性の場合、エネルギー必要量は約2300kcal/日となり、たんぱく質必要量は99gである。しかし、当院の常食の場合、エネルギー摂取量1800kcal/日、たんぱく摂取質70g/日となる。病院食でエネルギー摂取量を2200kcal/日にすることを考えると、主食量を100g増やすことになる。この食事内容では十分なたんぱく質摂取量が確保できない。そこで、当院では移植後患者に対する食事として、主菜を2倍に増量するメニューを提供した。
20歳代の腎移植後患者の場合、主菜2倍増量メニューの提供前は退院後に急速にアルブミンが上昇していたが、主菜2倍増量メニューの提供開始後は入院中からアルブミンが上昇していた。主菜2倍増量メニューの提供前は入院中の食事量が不足していたと考えられる。

◆十分な水分摂取と生もの摂取に対する指導も行う

移植後は代謝が改善し、汗をかくようになるため脱水に注意する必要がある。1日尿量1.5〜2lを確保できるよう、十分な水分摂取が必要となる。
また、移植後3か月間は、強力な免疫抑制状態にあるため、刺身などの生ものの摂取は禁止する。移植から3か月経過後も生ものを摂取する場合は新鮮なものを選択するよう指導する。
2020年の腎移植臨床登録報告では、糖尿病性腎症が原疾患の腎移植レシピエントは約20%いた。糖尿病のあるレシピエントの場合、腎移植後は免疫抑制薬やステロイド服用により血糖コントールが移植前より困難となる。腎移植後は基本的にはカリウム制限はなくなるが、糖尿病のあるレシピエントは、果物は高血糖となるため移植後も制限が必要となる。

◆多職種で構成される腎移植チームが術前から退院、外来まで切れ目なく支援

当院では、腎移植チームカンファレンスとラウンドを毎週木曜日に行っている。外科医、内科医をはじめ、管理栄養士、薬剤師、検査技師など様々な職種のスタッフが参加して、移植後患者の全身状態について、内科的視点や薬剤管理、食事摂取量などについて、様々な視点から評価する。
当院では、術前から退院まで移植チームの薬剤師、管理栄養士が、薬剤指導、栄養指導を担当している。移植チームスタッフは日々変化する診療現場で高い専門性が必要な患者の個別性に応じた指導計画を立案している。外来では移植後患者へ自己管理について掲載したニュースレターを定期的に配布し、自己管理に対する意識の向上に努めている。

◆おわりに

2012年の診療報酬の改定で、移植後患者指導管理料が新設された。これは移植に関わる医師と移植コーディネーターが薬剤師などと連携して必要な指導管理を行った場合に、月に1回、300点を加算するものである。当院では174名が移植後患者管理料の対象となっている。移植後患者指導管理料は、移植チームによる臓器移植後の医学的管理に対する評価であり、外来での患者指導の重要性を示している。
移植コーディネーターは、移植スタッフの専門性が発揮できるよう移植患者とスタッフの間に立ち、患者の服薬、栄養管理へのセルフケア向上に努めている。今後も移植スタッフと連携を図り、患者の自己管理支援を行い、移植腎の長期生着を目指していきたい。

 

【ディスカッション】

水内透析患者でも低栄養が問題となっている。管理栄養士がいない施設も多いが、その場合、どのように栄養指導を行っているか。

鎌田食事の摂れない患者では、カリウム剤がよく処方されている。カリウムは塩分から摂取する。つまり、カリウム剤の処方は、食事が摂れていないためと考えられる。薬剤師としてはこうした点に注目してアプローチすることも考えられる。

高井食べられない原因を全身状態から確認するとともに、食事を作る人が病気になってないかなど自宅での状況もチェックする必要がある。また、メンタル的に落ち込んでいる場合は、面談の時間を長くして、気持ちの整理をつけながら食べてもらうようにすることもある。

伊藤維持透析患者でも高齢者にはサルコペニアやフレイル、低栄養が多い。そのような患者に「もっと食べてもよいですよ」と話すと、「体重を増やすと、透析時の除水量が増えるのが怖くて、食べられない」といわれる。まずは「しっかり食べて栄養をつけてもらうと、血圧も安定してくる」、「体重増加によってドライウェイトも増える、除水量だけ増やすわけではない」などといった説明が必要である。

フロア薬局はかかりつけの薬局があるが、栄養はかかりつけの施設がない。何かよい方法はないか。

鎌田管理栄養士や栄養士がいる薬局もあるので、こうした薬局に相談するのもよいのではないか。

水内今日のお話から、「食べられない」「薬が飲めない」といった患者には十分にその理由を聞く、栄養摂取量を増やし正しい服薬の重要性を理解してもらうための介入を行うこと、多職種がコミュニケーションをとりながら、フラットに相談できる関係の構築が重要と感じた。このことを明日からの透析看護につなげていきたい。

 

 

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